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「まあ!副社長さん?木下さんは副社長さんの恋人かしら?とても良い雰囲気だわ」
「いえ。私は副社長の義妹です」
「義妹?そんな風には見えないわ。ね?要様」
その場の空気が凍り付くが、聡子は構わず続ける。
「素敵なカップルって思いながらずっとお二人を見ていましたのよ」
最初にこの状況に耐えられなくなったのは万理だった。
「東野様、石本様、お客様へのご挨拶が終わっていませんので、失礼させていただきますが、どうぞごゆっくりなさって下さい。失礼いたします」
そう言うとアンソニーの手を引っ張ってその場を離れた。アンソニーが心配そうに
『大丈夫か?』
と聞くと万理は引きつった笑顔で消え入りそうな声で『大丈夫』と答えた。
一方要は石本聡子にイライラしながら
「石本さん、私もまだ挨拶しないといけない方がいるので失礼します」
「あら、要様がご挨拶されるなら私もご一緒したいわ」
その言葉に要はとうとう我慢できずに
「なぜ一緒に挨拶する必要がある?遠慮してくれ」
威圧するように、低い声で言い放ち聡子の元を離れた。さすがに聡子は何も言い返せずに要の背中を睨み付けるしかなかった。




