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その日東野万理はLAのウィリアムズ邸で今年3才になったばかりのアレックス・ウィリアムズのベビーシッターをしていた。LAに留学して1年、友人のエリーゼに紹介されたそのバイトを始めて8カ月になる。
今夜はウィリアムズ家が経営するA&Wカンパニーの創立記念パーティーだ。
アレックスはベッドで大好きな絵本を読んであげると、ものの10分で寝付いてしまった。
万理は部屋の明かりを落として、大学の課題のレポートを仕上げようとパソコンを開いた。その時鞄の中のスマホが鳴る。慌ててアレックスの部屋の外に出て画面を見るとそれは東野家の執事山本からの電話だった。
「山本さん?何かあった?」
今まで山本から電話を受けたことは1度も無い。万理は嫌な予感がして心臓がバクバクしている。
「万理お嬢様…落ち着いて聞いて下さい。旦那様と奥様が事故に遭われて…先程搬送先の病院でお亡くなりに…」
万理の世界が一変した瞬間だった。