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始まりの風景
雨が降っていた。それにも関わらず空は青く晴れていて、日の光が優しく温かかった。
広い世界。狭く小さな公園で、男は黙って絵を描く。
ナイフのように鋭い目を持ち、すっきりとした顎は鮫を連想させた。
彼の視線は、今モチーフであるべきモノに注がれていた。
あまり熱心とは言えないその視線の先に広がるのは、真っ赤な真っ赤な赤の世界。
一人の男が死んでいたのだ。
死んだ猫を抱え、赤い世界に抱かれながら。
青い空の下。細かな雨に叩かれながら、彼はただ黙って筆を進める。
灰色の髪は、含んだ水分により艶やかになっていた。それは銀とも呼べる光沢を持って、鋭く、だが優しく、切なく、輝く。
彼は黙って男を描く。赤の世界に溶け込むような、その男の有様を、キャンバスに鮮やかに描き続ける。
目を通して頂きありがとうございます。この話は絶対に完結させたいと思う作者なので、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
不定期更新なので気が向いた時にでも覗いてみてください。もしかしたら更新されてる…………………………………かもしれません(笑)