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リコリス・ディープ・ニルヴァーナ  作者: ネオもろこし
紅蓮の黙示録(クリムゾン・アポカリプス)編

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第二話「鉛色の海と龍の胃袋」2

第二章:海魔(クラーケン)の咆哮


 突如、船体に激しい衝撃が走った。


 ドオォォォォォォォン!!


 船全体が大きく跳ね上がり、船室に積まれていた木箱が崩れ落ちる。 悲鳴と、金属のきしむ音が交錯する。


「座礁か!?」


 船長が血相を変えて操舵室から飛び出してきた。彼は血走った目でレーダーを確認するが、画面には何も映っていない。海図上、ここは水深数百メートルの外洋。暗礁などあるはずがない。


「馬鹿な……! 何かにぶつかっただと!?」


 その時だった。


 バキベキィッ!!


 甲板を突き破り、船底から巨大な「何か」が突き出した。


 それは、太さ数メートルもある異形の触手だった。 タコやイカのような軟体動物ではない。腐乱した生物の肉と、鋼鉄の装甲板を無造作に継ぎ接ぎしたような、グロテスクな質感。 表面には無数のフジツボと、血管のように脈打つパイプが張り巡らされている。


「なっ……!?」


 久遠灯(くおん あかり)が息を呑む。 触手は意思を持ったように動き、機関室のパイプをねじ切った。 蒸気が噴き出し、サイレンが鳴り響く。


 ザパァァァァッ!!


 海面が割れ、その全貌が姿を現した。 船体よりも巨大な、悪夢のような怪物。 頭部は潜水艦の艦橋を模した形状をしており、そこから無数の触手と、サメのような鋭利なヒレが生えている。 眼球はない。代わりに、赤いセンサーライトが不気味に点滅し、獲物を探している。


「なんだ、コイツは……!」


 鉄鏡花(くろがね きょうか)が、端末で解析を試みる。


「生体反応あり。だが、構造は機械に近い。……キメラだ。科学と呪術で無理やり合成された、正体不明の海洋生物兵器!」


海魔(クラーケン)』。 古の船乗りたちが恐れた伝説の怪物。 だが、目の前にいるのは伝説などという生易しいものではない。 何者かが悪意を持って作り出した、殺戮のための兵器だ。


「迎撃ッ!!」


 灯の怒号が響く。 彼女はM500を抜き、触手の根元に向けて発砲した。轟音。だが、弾丸は鋼鉄の装甲に弾かれ、火花を散らすだけに終わる。


「硬い……! マジかよ!」


「シスターズ、散開!」


 白雪美流愛(しらゆき みるあ)が叫び、双子と共に甲板を駆ける。足場が悪い。船は大きく傾き、海水が滝のように降り注いでいる。 滑る床、揺れる視界。


「切断します!」


 白雪亞莉愛(アリア)と白雪華琉愛(カルア)が、ククリナイフで触手に斬りかかる。肉の部分を狙った鋭い一撃。だが、刃が肉に食い込んだ瞬間、傷口からドロリとした粘液が噴き出し、瞬く間に再生してしまった。


「再生速度が異常です! ……これでは、キリがありません!」


「お姉様、下手に近づくと危険です! あの粘液、酸性です!」


 美流愛のドレスの裾が、飛び散った体液で溶け落ちる。 彼女は舌打ちし、ワイヤーを展開した。


「邪魔よ、鉄屑!」


 ワイヤーが触手を締め上げる。だが、怪物のパワーは桁外れだった。 ミシミシとワイヤーが悲鳴を上げ、逆に美流愛が海へ引きずり込まれそうになる。


「くっ……!」


「そこをどけ!」


 鏡花が、船に備え付けられていたクレーンの操縦席に飛び込んだ。 彼女は自身の義手を制御盤に直結し、クレーンを我が手足のように操る。巨大な鉄のアームが旋回し、怪物の頭部を殴りつけた。


 ガゴォォォォン!!


 鈍い音が響く。 怪物がよろめき、船体が激しく揺れる。


「効いたか……!?」


 だが、怪物はすぐに体勢を立て直し、怒りの咆哮を上げた。センサーライトが赤く輝き、口に当たる部分から高圧の水流ブレスを吐き出す。


「危ない!」


 天羽祈(あもう いのり)が前に出る。彼女は杖を掲げ、防御結界を展開した。


「光よ、盾となれ!」


 極彩色の障壁が、水流を受け止める。だが、その水はただの海水ではなかった。 呪いを含んだ腐食液。


 ジジジ……ッ!


 結界が、音を立てて溶かされていく。


「う、ぅ……! 重い……!」


 祈が歯を食いしばる。 物理的な圧力だけではない。結界を通して、彼女自身の魔力が吸い取られていく感覚がある。


「魔力を……吸い取られる!? ……この怪物、周囲の魔素(マナ)を捕食しています!」


「なんだと!?」


 灯が驚愕する。 こちらの攻撃エネルギーさえも糧にする、最悪の捕食者。 銃弾も、刃も、魔術も通用しない。 船は沈みかけ、海水が足元を浸していく。絶体絶命。


 その時だった。


 バンッ!!


 船室のドアが、内側から蹴破られた。 現れたのは、ふらつく足取りの辰巳響(たつみ ひびき)だった。


 彼女の目は虚ろで、焦点が合っていない。口元には、先ほどまで貪っていたチョコレートがこびりついている。全身から力が抜け、今にも倒れそうなほど脆弱な姿。だが、その瞳だけが。 目の前で暴れる怪物(エサ)を見て、ギラリと、凶悪な光を宿していた。


「……美味そうじゃねぇか」


 響が、舌なめずりをした。その声は、女子高生のものではない。数千年の飢餓を抱えた、龍神の唸り声だった。

自分が読みたい物語を書いています。

可能な限り更新できるようにしていきたいなぁと思っています。

(制作に関してAIを利用しています)

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