ブランデル区
俺の名前はそもそも無い、強いて言えば帝国防衛軍に所属した時にシュトルムトルーパー・アインと呼ばれていた事程度でしかない
アキュロス帝国では各地域に方言が多くあり、特に帝都周辺はこういった呼ばれ方をしていた。
今日の俺は道路交通警備として巡回しているものの、上司から色々と言われてしまってな
===数時間前===
「今日もご安全に!」
「「「ご安全に」」」
「あー、新人くん?それはモデルガンかい?大きくて危ないから置いていかないかい?」
「問題ない」
「見た目も赤いし誘導灯としても良さそうだね!よし仕事に取り掛かろう新人くん!」
===今に至る===
こいつはリモコン起爆式の擲弾銃だ。
接着榴弾射出用擲弾銃…通称リムボルトガンの狙撃仕様、俺の相棒である銃だ。
装弾数は2発、弾初速は1342ms。
弾丸形状が特殊なせいで射程限界が1200m程度で命中精度も良くない
他の警備員はPPKs拳銃を装備している程度で俺のが圧倒的に大型のを使用している。
あとは通信機、前の記憶を頼りに軍の通信コードを全て把握している。
軍の兵器輸送コードも把握済でもう一つの相棒であるフレイムドローンだ。
こいつは起動後に敵と認識した対象に目掛けて火炎放射攻撃を行うドローンだ。
稼働時間は1分程度だが牽制には使える。
「おーい新入り!こっちの信号機の調子が悪い、手伝ってくれ!」
他の警備員の先輩のところに向かって信号機の応急修理を始めた。
「何故この警備会社に入ったんだ?前職は技術研究科学局だったろ?何故世界最大のエリートコースの職を辞めたんだ?」
「俺の気まぐれってヤツさ」
「はぇ~やっぱりあそこは変わり者が多いという噂は本当だったんだな」
信号機の応急整備は数分で終わった。
超小型製造装置のおかげで摩耗していた部品を新品に取り替えれた。
この製造装置のおかげで装備換装も弾薬補充も容易に行えれる。
しかしその引き換えにアーマー強度を一定量失う
アーマー強度を回復させるには奴等の医療品を奪取する必要があるからだ。
夕暮れになれば時間通りにグーペンリュート軍の地上部隊がやって来る。
ここで上司が死ぬ…彼の死によって俺は帝国防衛軍に志願したんだ。
ここが全ての始まりの地
「新人くん、業務終了時刻だ。戻ろう!」
その数秒後に敵の航空攻撃が来る。
俺はエネルギーシールドを設置しその機銃弾を防いだ。
「うわぁぁっ!?なっ!何事っ!?」
「ここで待っていてくれ」
「あぁ…分かったよ…」
取り敢えず出した通信機で軍の要請コードを入力して座標をホログラムデータ転送させた。
===帝国防衛軍・カリフラワー航空基地===
忙しなく軍人達は突然襲来してきた蒼い艦隊の対応をしている。
「こちら管制塔誘導員、ブランデル区にて近接航空支援要請!直ちに戦闘爆撃機隊は離陸して下さい!」
<了解だ。で詳細な座標をくれ!>
「詳細座標を送ります。えっ!?民間の通信機!?」
<何ッ!?民間人から航空支援要請だと!?何故軍の通信コードを知っている!?兎に角現場はヤバい事に違いない、各機現場へ急行!>
カリフラワー航空基地との距離にして到着時間は5分以内に位置について攻撃態勢が整う
この間に敵の航空攻撃は収まって敵艦載機は母艦に帰還する頃合いだ。
===ブランデル区市町内===
前方から石畳の道を砕く金属音が聞こえてくる。
予想通り敵の戦車隊が歩兵と共に向かってきている。
気休め程度に砲兵砲撃支援要請も出した。
「x-3251.z4521送れ!」
<砲撃要請を受理しました!えっ!?民間の通信機コードですって?!>
<何!?民間人からの砲撃要請じゃとな?貴様ら弾を込めろ!>
20年振りに聞いた砲兵貴族、まだ20に満たない若き伯令嬢とその老執事と衛兵達
その後の大雑把な老執事の掛け声がなんとも心地よいことか
<405ミリ榴弾砲ッ!撃てぇぃッ!!>
砲撃と共に航空支援攻撃が同時に着弾し敵部隊は一掃されたものの次の侵攻部隊が大量であった。
歩兵隊も到着するも敵歩兵と戦車も多く、僅かに重戦車も含まれていた。
「民間人を早く安全な場所に避難させろ!」
「軍曹!前線で戦っている民間人が居ます!」
「なんだと!?救助に向かうぞ!」
敵重戦車が出たからには民間土木建築作業用人型ブルドーザーを要請するしかない、この時代は埃を被っているに違いない
<民間人がビークルを要請?送っておいた。受け取れ>
兵器総合倉庫基地ブルーフレームから物質転送装置を用いてギガンティストランスローダー・ゴリラが俺のところに届けられた。
「ギガンティストランスローダー・ゴリラだと!?」
「軍の要請コードを知っているようだな、ただの民間人じゃあなさそうだ」
「ゴリラを動かすには複雑な起動シーケンスが必要……動かした…だと?」
三週目だから問題なく動かせれて馴染みのある操縦席、地表から50メートルも離れた胴体
開発元は極東にあるディーツーパブリッシャー社の民間向け人型ブルドーザーだ。
あまりの巨体によって開発予算で一体だけとなった上に誰も発注しないことから軍が買い取ったのだが、誰もマトモに操縦出来ないことから倉庫で埃を被っている毎日であったようだ。
早速敵重戦車を踏み込むと簡単に押し潰された。
反撃に他部隊の戦車隊の砲撃やら成形炸薬憤進弾が飛んでくるも、何とも物としない多重装甲に阻まれた。
本当に民製なのか?
「民間のブルドーザーがこんなにも固いなんて!」
「アレを動かせる彼も凄いが…途轍もない防御力だ…」
「よし!あの民間人を援護するぞ!」
「 了解だぜ!軍曹!」
<こちら特戦歩兵第二分隊!基地が危ない!援軍を求む!>
通信内容は丸聞こえでありブランデル区防衛本部が襲撃されているのが分かる。
あそこには戦術核弾道ミサイルが三本収容されている。
ゴリラでひたすら敵部隊を踏みつけながら囮となっていると、他の防衛軍兵士達が集まって死角に居る敵兵を一掃していた。
「民間人が飛び降りた!?」
「やばいぞ!あの高さではし……えっ?」
大気圏から振り落とされても特に何も怪我もなく着地出来る。
着地と同時に別のビークルを要請し、乗り込んだ。
「おいおい!最新型のブラッダーE7主力戦車じゃねぇか!?」
「ただの民間人じゃあなさそうだ。あの勢いだと基地に向かうだろう、基地に向かって合流し話しをしよう」
主力戦車に乗り込んだ後、榴弾で残りの敵部隊を蹴散らした。
基地に向かって全速力で移動するのだった