暴力と【自主規制】²
大体リュックに詰め込んで、僕らはまだ
店内に何か無いかなとうろうろしていた
「ザネム〜プリン出して」
「嫌だよ。出すのだってめんどいし」
「そんな〜」
しかし、ザネムは色々探していたけど
僕はもう服に飽きてしまって目的も無く
店内を彷徨いていた
「そういやさっきしまった下着は何に使うんだ。まさか着るのかあれ」
「そりゃもちろんオ【自主規制】だよ!」
「のわああああ?!」
ガッシャーンっと服が掛けてあるマネキンに
ザネムは突っ込んでしまったみたいだ
「マジで言ってんの!?このちんまりした
身体で?射【自主規制】のしの字も知らなそうな身体で?」
「でもさっき着替えてる時にえっちな下着
見てたらおっきくなったよ。ちょっとだけど」
「おっきくなったって【自主規制】がか?」
「うん。ゾウの赤ちゃんから半年ぐらい成長した子供ぐらいかな」
「やりやがったなあの体育教師……」
そう、僕はただ着替えてたわけじゃない。
着替えながら自分の身体を改めて観察していたのだ。その結果分かった事だが男【自主規制】が皮も被って無いのに現実世界の男【自主規制】と比べ、大きさが八割ほどしか無いのだ。でもおっきくはなるけど
「だからここなら最初に辿り着いた家の中とかオ【自主規制】し放題ってわけよ」
「でも何で抜くってんだよ。ここは外部から
物が持ち込めないらしいし」
「それはその……妄想とかで頑張るとか」
「変な考えはよしな。せっかくのVRだぜ」
「……はい」
確かに言われて見ればその通りだった。現実世界で出来る事をわざわざゲームでやっても
意味が無いのだ
「それにあの体育教師が生徒をみすみす【自主規制】させるわけが無い、隠しカメラでも
仕掛けるかもしれんぜ」
「ええ?!嫌だよそんなの!トイレもいけなくなっちゃう」
「流石にそこまではしないだろ……」
体育教師こと醤油一番は
中々にぶっ飛んだ教師で有名だ。前科者の噂もあればデートに行くからとかで学校を休んだ事もある。つまりあの男が運営である以上何が起こっても仕方ない
「お、これなんかいいかも。まーな」
ザネムが中に掲げたのはマグロのぬいぐるみだった。大きさは100cmぐらいある
「お前、こんなの好きだろ。持ってくか?」
「む……」
その顔は僕を舐めきった様な笑顔だった
「いらない」
「えーせっかく見つけたのに!?」
「イルカじゃなきゃ嫌なの」
「んなこったろーと思った。ちょいと待て」
マグロのぬいぐるみを投げ捨て、ダンボールの山に潜り込んだザネムはあれを投げて、これを投げてとめちゃくちゃに何か探し出した
「あった……ほらよ」
そして、こちらにぽーんっと何かを投げたのだ
キャッチしたそれは水色が眩しいイルカの
ぬいぐるみだった
「ぬいぐるみ……あったんだ。諦めてたのに」
僕は40cmぐらいあるイルカをぎゅっと抱き締める。声がするわけが無いのに何故かイルカが「きゅっ」と鳴いた様な気がした
「言っとくがそれ……武器だからな」
「ふぇ?!名前付けて家に置いとこうと思ったのに!」
「甘いんだよ考えが!ほら、これも」
またまたザネムは何かを投げたので、キャッチするとそれは長い皮のベルトだった
「ずっと抱えたままじゃ不便だからな。背中に固定しておけよ」
「うぅ……でも」
イルカと目を合わせるとその子は黒目でじっと僕を見詰めているみたいだった。少し指で押してみるとちょっとぷにっと凹む。こんな子を戦闘に使うなんて
"大丈夫"
「え?」
"私はどんなに激しく扱われても平気だから。連れて行って……世界の果てまで"
「今……なんか声がしなかった?」
「いや、全く。なんか新機能でも解禁されたんじゃね」
「う〜ん……」
違う、この声はイルカの声だ。何となく分かる、イルカがぬいぐるみのはずのイルカの確かに鼓動を感じてる。だとしたら
「決めた。このイルカはずっと連れてく。世界の果てまで」
「うお、さっきが嘘みたいにキリッとしたな」
僕はイルカを背負って、ぎゅっとベルトで体に固定した
「じゃ、行こっか。日が暮れちゃう前にね」
「ああ」
「と、その前に……」
たったったと棚に移動して、学生帽を一つ手に取った
「ザネム、これ被りなよ。きっと似合うよ」
「あ、ああ。サンキュー」
きゅっと学生帽をザネムは深く被った。さて、格好も整った事だしこれからが冒険の
始まりだ
少し僕は胸がドキドキした