しょんぼり
あたま すごくわるい と表示された事も
一旦置いといて、またジャングルを進む
風とか何かが落ちる音はするけど相変わらず
犬以外の生物には遭遇しない……てか!
「人が居ないんだけどぉ!?」
「そりゃ、体育教師がてきとーに作ったVRMMOをプレイしたい人間は居ないだろ」
「それもそうだけどさ……うぐ」
僕はすっかり気分がしょんぼりしていた。来る前は知らない人といっぱいお喋りできると
思っていたのに果物は美味しくないし、犬に
噛まれるしで散々だ
「今日で辞めちゃうかも……このVR」
「まあ……それもいいかもな」
下を向いて歩けば途端に世界は色を失う
今の僕にはどこまで歩いても灰色の世界にしか見えないのだ
「例えどんな出来ご……ん?」
「どした?」
「あれはまさか」
さっき下を向いて歩いていると言ったけど
ずっと下を向いてるわけじゃない。たまには
前を向く事もあってそれは一瞬だけど、その
前を向いた瞬間に世界がおいでおいでする事もあるらしい
僕の視界には何か建物が映った。あれは多分アイテムとかが置いてありそうな店だ
「おーみーせーに!れっつごー!!」
「おいちょ!待てや!こら!」
すぐさま僕は駆けた。誰も見てないから転んでも平気だったんだけど無駄に元気な僕の身体はどんどん加速するばかりで絆創膏なんか
知ったこっちゃ無いって感じだった
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「わー」
「これは見事な……」
辿り着いた建物は外から見る限り営業してる
様には思えなかった。入口の自動ドアは、穴が空いていたし建物の名前を記した看板は一文字も無い。落ちちゃったのかな
「完全に廃墟じゃん。入って大丈夫か?」
「大丈夫だって。どーせさっきの柴犬しか
居ないんだし」
「お、おい!待てって」
僕は鼻歌をふんふ〜んと口ずさみながら、穴から建物へと入った。振り向くと、珍しく立ち止まっているザネムの姿があった
「置いてっちゃうからね〜そこにいたら」
「え……ええ!?」
僕はにやりと笑って先を歩くと、慌てたのか
ザネムが転んだ音がした。ちょっとだけ面白くて思わずくすくす笑ってしまった