ここは空っぽ
外に出るとそこはジャングルだった。
テレビとかでしか見たこと無いような植物が
いっぱい生えていて、空には雲一つ無い青空が視界いっぱい広がっている。きれいだった
でも……「何か変だよ」「ああ、変だな」
歩いても歩いても虫一匹すら遭遇しない。
植物はいくらでも生えているが、それに頼って生きている様な生物が居ないのだ。
「あの教師まさか……」
「え?なんか分かった?」
「ああ、これは多分」
だがその時、竜也のデバイスが震えた。ザネムはデバイスを顔に近づけると、
空中に浮いた四角みたいなのを指で押した
「もしもし?もしかして一番さん
ですか?」
"ザーッ……どうだ?そろそろ冒険始めたか?
それはどうやら現実世界とVRを繋げる電話的な機能らしい。相手は教師だ
「始めましたけど……ここ生物が居ないんですよ!あんたもしかして生物を配置し忘れたとかまさか!?」
"そのまさか何だよ。ま、その内何とかするわ
ガチャッ……電話が切れたみたい。ザネムはしばらくデバイスを眺めてたけど、突然そばにある木に頭をガンガンぶつけ出したのだ
「ざっけんなぁあああ!生物の居ないVRが
あるかってんだああああ!!!!」
「お、落ちついて!その内何とかするって言ってたじゃん!」
「それが何時になるか分からんから怒ってんだろうがああああああ!!うおああああ!」
「わ、わ、わわ……」
今度は木をひたすら揺らし出すザネムはもう
僕に止められ無かった。しかし、その頭上
「おっふぅ!!」
降ってきた謎の木の実がザネムを襲った!
地面に転がったそれは見た目的にはヤシの実みたいだけどこれ……食べられるかな?
「痛っった………死ぬかと思ったぜ」
「めちゃくちゃするから……よいしょ」
僕はそれを拾い上げた。硬そう、ほんとヤシの実って感じ
「これ……食べられるかな?」
「分からんよ。モンスターの卵かもしれんぜ
案外それがこの世界に産み落とされた俺ら以外の生物だったりして」
「ふむむ……」
耳を当てて見たが、鼓動は感じない。振ってみるけど、カシャカシャ音はするだけだし
「よし!物は試し!」ガブッ
「うおああ?!齧ったぁ!?」
その瞬間、僕の味蕾がびびびと震えた。口の中いっぱいに広がるこの味はま……ま……
「まっっずっいいいいいあああああああ!」
すぐさま僕は実を投げ捨て、落ちてきた木を
蹴飛ばし始めた。凄まじい不味さだ、苦いとか甘いとかじゃ無い、蜘蛛のフライにしもつかれとその他色々を混ぜた様な最悪な味
「そこまでか……?」ガブッ
「……」
「ああああああああああああああ!!!」
その雄叫びは空っぽの世界にどこまでも響いたという