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すっごいたいくつ


「ねーいつまで説明書眺めてんのー早く出かけようよー」

「まあ待てって」

椅子に座りながら五個目のプリンを食べつつ

僕は退屈していた。ここに来てからまだプリンしか食べてないし一緒に来た同級生の田仲

竜也はずっと説明書とか言うのを読んでる


そもそも何でこんな場所でプリンを食べてるかは数時間前に遡る……


━━━━━━━━━━━━━━━


「遂に完成した……これがVRデバイスだ」

教卓に体育教師である醤油一番(しょうゆはじめ)は黒い腕輪みたいなのを置いた


「VRデバイス……?」

「それが?」


放課後の教室で机を二つ使って僕は寝転んでたし、竜也は普通に座っていた。そもそも呼び出された理由が「面白いものあるから来い」とかでVRとか言われても困る


「つまりVR空間に行けるって事ですか?」

「そうじゃなきゃなんだ!!」


竜也は机に肘を付き、一番を睨んだ。でも

僕はじっーとデバイスとやらを眺めた


「めっちゃ怪しいんですけど……」

「怪しくは無いって。まだ出来たばかりだけどさ」

「出来たばかり?」


そう言うと一番はあっという間に僕ら二人の腕にそのデバイスとやらを嵌めたのだった


「ちょ……何してるんですか」

「物は試しだよ。ここのボタンを押してだな」

「嫌ですって……あ!」


何か面白い事になりそうだったので、僕は腕輪の指定されたボタンを押してみた


「たくっ……仕方ねぇな」

「いってら」


こうして僕ら二人は別の空間に来たのだ


━━━━━━━━━━━━━━━


VRとやらに飛ばされ、辿り着いたのは

木で出来た部屋だった。まだ外も見てないや


「あむっ……でも……プリン食べ放題……いい……」


冷蔵庫にプリンが一個あって、取り出して冷蔵庫を閉めたらまたプリンが発生したのでこれを無限プリン製造機と僕は名付けた


「わからん……」

「なにが?あむっ」

「それだよ」


竜也は僕の足を指さした


「説明所に三頭身の理由が全く記されて無いんだよ……あの馬鹿教師に聞くべきだった」

「ああ、背丈のことね。いーじゃんかわいいし」

「良くねぇよ!」


どこからか手鏡を取り出すと、竜也は僕の顔に向けた。そこにはつやつやの肌にちょっとぷにっとしたほっぺに瞳の中にハートがある

誰かがいた


「これでもか?」

「ん……これ僕?」

「ああ」


「ん〜すっごいいーじゃん!かわいいし」

「はぁ?!」


僕は思わず空になったプリンの容器を投げ捨て、思いっきり身体を震わせた


「てことは竜也の目は……どれどれ」

「おい馬鹿やめっ」


椅子から手伸ばすと、竜也のほっぺたに

届いた。むにっとつまんでみると幼児みたいにもちもちだった。そして、その瞳には青い星が一つずつ浮かんでいた


「星だ!これもいい!よし!早く見せにいこう誰かに!」

「ち、ちょっと待て!」

「え〜」


つまんでいた手を無理やり竜也は離して、僕と距離を取った。少し顔が赤くなっている


「ここから出るには名前を決めなきゃ行けないらしい。まずそれから……な」

「早く行きたいのに……」


ちょっとだけ上がったテンションに冷たい水をかけられた感覚だった。まあ名前は大事だし仕方ないか


「えっと……これか」

「紙?」


竜也はどこからか二枚の紙を取り出し、一枚を僕に渡した。その紙には"名前"と書かれた

下に四角が印刷されていた


「ほら、ペンも」

「あ、どうも」


宙を舞うペンを右手で掴むと、僕はすぐさま

考え始めた。名前……名前ねぇ……名前


「何でもいいのかな?」

「枠に収まればいいんじゃね?うんこでもしょんべんでも」

「うんこ……」


うんこ……ユーザーネームとして流石にそれは無い。だってこれからこの空間で会う度に

うんこって呼ばれるわけだし。それでいくと

しょんべんも無いな


「名前……名前……あそうだ」


ピンと閃いた文字をすぐさま紙に記す。

ひらがなで「ま・な」と


「これでよしっと。じゃあこれから僕は"まな"って事で」

「それで本当にいいのか……?さっき説明書に書いてあったが一度決めたら変更出来ないらしいぜ」

「いいに決まってんじゃん。で、書いたらこの紙どうすんの?」

「あ、ちょっと待って。俺も書くから」


竜也も何か思いついたのかさらさらっと紙に何かを記した


「で、これをだな」

そして、僕がうふふあははと眺めていた紙をひょいと取り上げると、窓からそれを捨てた


「ちょ?!なにしてんの!せっかく書いたのに!」

「いちいちうるせぇな、これでいいんだよ!」


せっかく書いた物を捨てられて僕は腹が立った。すぐさま目の前の竜也を殴りたかったが

勝てそうも無くてぐぅ……と手を引っ込めた


"ユーザー登録が完了しました。【まな】様と

【ザネム】様のフィールド探索が全ての地域で解除されます"


「ん……声がしたけど?」

「ああ、名前が登録されたってさ。これで

外に出かけられるってわけ」

「え〜?!」


「わっほ〜い!!!」

何となく嬉しくなって椅子から飛び上がる僕をザネムこと田仲竜也はアホだ……コイツみたいな目で見た


「ねぇどこまで行こう?街はあるかな?危ない奴とかいるかな?友達出来るかなぁ?」

「落ちつけよ……まずは色々準備しないと」

「準備……あ!」


何を思いついたのか、まなこと金崎倫也は冷蔵庫からプリンを取り出して閉めてまた取り出して閉める動作を何回も何回もしだし


「もしかして持ってこうとしてる?プリン」

「そう、何があるか分からないし」


あっという間にプリンは10個になり、20個になり……どんどん床に置かれていった


「で、そのプリンをどうやって持ってくの」

「あ!」


コイツ間違いなく本物の馬鹿だ……増やしたプリンに囲まれてあわあわする倫也を見ながら改めてザネムは感じた



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