第九話 街遊び
体育祭が終わり盛り上がりが少し落ち着き始めた次の週、テストが返ってきた。
見事に撃沈する者、何とかいい点数を取れて安心する者など様々な反応だったなか俺はしっかしと点数を取れて予定どうりだなといった感じだった。
星野は学年で二位を取っていたがあと少しだったらしく悔しそうだった。
白沢はまずまずといった感じらしい。点数と順位は教えてもらえなかった。がまあ低すぎるということはなさそうだ。
鈴谷が心配だがそれは放課後にでも聞くことにした。
それからはいつも通りの日常が戻って来て授業を受け、部活がある人は部活へ行って、部活がない人は放課後に何をしようか話しながら帰っていた。
俺は星野たちと部活に向かって行った。
部活が七時頃まであり、その間俺たち一年は作法と形作りを先輩の指導の下行っていた。
部活が終わる頃には暗くなる寸前だ。
夏前で暑くなりつつある中を自転車で俺たちは帰っていった。
そして次の日は学校が休みの週末で俺たちは街に遊びに来ていた。
メンバーは俺に星野、白沢、鈴谷だ。
他にも声をかけたが予定があって遊べなかった。
「どこ行くんだ」
午前十一時頃集まった俺たちは遊ぶという予定だけ立てて何をするかは全く決めていなかった。
「とりあえず、色々歩き回ろうよ。予定はそれから立てればいいよ」
白沢がそう言い、全員それに賛成した。
とりあえず向かったのは最近出来たばかりの大型商業施設だ。
服から食べ物、映画館にゲームセンターなど大体がココに来れば良いような施設になっている。
俺としては本屋も入れてほしかったところだがまあ少し歩けばあるから良いかな。
エスカレーターを上がっていくと途中にストリートピアノが置いてあった。
そこではピアノを弾いている人がいてその様子を撮影する人で賑わっていた。
弾いている曲は有名なボカロの曲だ。
「俺もあれくらい弾けたらな」
ピアノを聞きながら俺はそう呟いた。
「え、水無月君ってピアノ弾けるの」
白沢と星野は驚いた様子だった。
「まあ、小学校から六年習ってたからね。今は趣味程度にしか弾いてないけど」
「いいな、今度聞かせてよ」
「あ、俺も聞きたい」
白沢と星野が口々に言ってきた。
「まあそのうち機会があれば聞かせてやるよ」
そんなことを喋っているとエスカレーターが上がりきり俺たちは降りてその階を見て回った。
ゲームセンターにおもちゃ屋、アニメ関連のお店などが並んでいて俺たちはそこで数時間を過ごした。
クレーンゲームなどをしていて意外な才能を持ったやつがいた。
「これで3つ見だぞ星野」
そう、星野が意外にもクレーンゲームが上手だった。
お菓子を二つ、人形を一つ落としていた。
「いやね、俺の兄貴がこういうの上手で教えてもらったんだよ」
などと言っているが教えてもらっただけでできるものではないのではと思いながら見ていた。
それからご飯を地下にあるフードコーナーでハンバーガーをみんなで食べた。
そしておもちゃ屋や本屋などを回っているといつの間にか時間は午後四時を回ろうとしていた。
「そろそろ時間もちょうど良いし今日はこれでお開きかな」
「そうだね、じゃあその前にあそこの屋上行って見たい」
と、鈴谷からの提案でこの商業施設の屋上に行くことになった。
いくつかのエスカレーターを経由して屋上に着くとそこは周りのビルよりも少しだけ高くなっていて普段は見れない景色が綺麗に見えた。
「へえ、俺も初めてきたけどこんな場所だったんだ」
「あれ、意外と熊本に住んでてもこういう場所は来ないものなんだ」
星野が来たことがないことに少し驚きつつ、穏やかに吹く風を浴びていた。
屋上で三十分ほどおしゃべりをして俺たちは解散した。
帰り道は途中まで鈴谷が一緒で今日のことを話しながら電車に揺られていた。
「京都にいた頃も面白いものは多かったけどやっぱり新しい場所に来るとそこにしかないようなものを楽しめて良いね」
「そうだね、私は一人で新しい場所に来て少し怖かったけど友達がいてくれてほんとに楽しめたよ。またこうやってみんなで遊びたいな」
鈴谷は今日のことを嬉しそうに話していた。
途中の駅についてそこで鈴谷は降りた。
俺はあと少しの道を静かにゆっくりと過ごした。
買った本を読みながら。俺はその本の中にあった言葉に目が止まった。
そこにはこう書かれていた。
「男女の友情は成立しないんだよ。同じ時間を過ごせば必ず好きになって今の関係は壊れるものなんだよ」