第六話 実力テストと強制の体育祭での役割
入学から一か月がたち五月になった。
入学してから初めての実力テストが行われた。
俺は中学ではちゃんと勉強していたためそこまで苦戦するテストではなかった。
そんななか
「難しかった。きつかった。疲れた」
と、言いながらテストが終わった鈴谷が教室に来た。
「おまえちゃんと中学で勉強してただろ」
「いや高校入ってから授業以外でまともに勉強してなかった」
「テストがあるのわかってたんだから勉強しとけと」
と、鈴谷と話していると
「どうしたの鈴谷ちゃん、そんなに疲れた顔して」
と、白沢が話しかけてきた。
その隣には二岩がいた。
「テストが疲れたよ」
鈴谷が泣きつくように白沢の近くに行った。
「そんなに難しかったの」
と、白沢が聞いてきたの対して隣にいた二岩が
「結構難しく感じたけど、桜や水無月は随分余裕そうだね」
と、言ってきた。
「まあ中学の内容だし受験のために勉強頑張ってたからな」
俺の言葉に続けて白沢が
「私も同じ感じだね」
と、言うと二岩が
「いいな頭に余裕がある人たちは」
と、妬ましそうに言ってきた。
そうしてテスト期間が終わりテストが返ってくるまでの楽しみである体育祭の準備が始まった。
(体育祭が終わったらテストが返ってくるし楽しい顔が絶望にかわるんだろうな)
と、一人思いながらみんなで帰った。
次の日から本格的に体育祭の準備が始まった。
俺たちのクラスは今日、リレーと徒競走、団体対抗代表リレーを誰が走るかの話し合いが行われた。
司会をしていた体育委員が当然のように俺に何がしたいか聞いてきた。
「なぜ俺に最初に来るんだよ。まずは全体に聞けよ」
俺の反論に対して
「クラスで一番速いやつが頑張ってもらうのは当然だろ。そして代表リレーは出るの確定だからな」
と、笑顔でとんでもないことを言ってきやがった。
俺の運動能力がクラスでずば抜けて高いことはみんな知ってるとはいえ強制はだめだろ。
などなど言いたい文句があるが反論しても無意味なのはわかりきってるので俺はリレーに出ることにした。
俺が決まってからはやりたい人を募ってリレー、徒競走、代表リレーのメンバーは決まった。
「はあ、なんだよさっきの茶番は。俺の拒否権はどこに消えたんだよ。先生も黙認してたし」
弁当を食べながら星野と白沢にぶつぶつと不満をもらしていた。
「別にお前出たくないわけではなかっただろ」
「もちろん出るつもりでいたけどさ」
「ならいいじゃん、その手間がなくなったんだから」
「それまでの過程が大事なんだよ」
「まあ頑張ろうぜ。俺も徒競走と代表リレーには出るんだから。それに白沢さんだって」
「はあ」
と、ため息を漏らしながら弁当の残りをかきこんだ。
今日の学校は午前中で終わりで昼からは部活に打ち込んでいた。
弓道部で練習をしながら今日あったことを先輩に話すと
「お前それはかわいそうだったな」
と、腹を抱えて笑いながら言ってきた。
「でもいいじゃん水無月君の運動神経はそれなりに有名だよ。運動部のやつらは君を勧誘しようかしてたし」
「そこまでですか」
「そりゃ君クラスの運動神経の持ち主はみんな強い運動部に入って活躍してるらしいからね。本当に何で弓道部に来たのか謎なくらいだからね」
最終的に笑い話になったが周りからの期待の大きさに体育祭が億劫になった俺だった。