第五話 ここにきた理由
四月の後半になに高校生活に慣れてきた。
そして、クラスや学年で中学からの友達や同じ部活なんかでグループが出来上がっていた。
俺はとくに友達には困らずクラスでも楽しく過ごせていた。
休み時間は席の近い友達と次の授業の準備をしながらしゃべったりしていた。
「なあなあ、この本面白かったぞ。次の巻っていつ出るの」
と、しゃべりかけてきたのは同じ弓道部である星野樹だ。
星野はライトノベルを読んでいたため話がよく合いお互いに本を貸し借りしている。
「その本がひと月くらい前に発売されてるから数か月はでないぞ」
「ラノベ一巻ごとの発売の間が長すぎていやになるわ」
「それはわかるけどこればかりは待つしかない」
いつもそんな話をして休み時間をつぶしていた。
昼休みになり持ってきた弁当を星野と一緒に喋りながら食べた。
食べるメンバーは時々白沢が来たり他のクラスのやつが来たりしている。
弁当は俺は他の人より多く食べるため二段の大き目の弁当箱を使っている。
そして俺は一人暮らしのためその弁当箱を朝からひとりで詰めている。
もっともだいたい前の日の残り物を使っているが。
弁当を食べ終えたら次の授業の準備を始めた。
今日は体育のため体育服に着替えていた。
「今日って体力テストのなんの種目するんだっけ」
「今日は五十メートル走とハンドボール投げだったかな」
着替え終え星野と喋りながらグラウンドへ向かっていた。
「五十メートル走ならいけるけどハンドボールはなぁ。信はどうなんだ」
と、星野が聞いてきた。
「俺はどっちもいけるというか長距離走と柔軟以外は基本八点以上だ」
「そんなに動けるのかよ。じゃあなぜ弓道部に来た。もっと向いてるものあるだろ」
「それはほんとにそう。実際中学までは野球で主力張ってたからな。高校で弓道やりたいって言ったらほとんどのやつからもったいないなって言われたぞ」
「そりゃそうだろ。そんだけ才能があったら甲子園を目指そうと思うのが普通だ」
「俺にとっては自分が楽しめるかどうかが重要だからな。その点において野球は俺には向かなかったってことだ」
実際俺は野球を続けていれば熊本には来ていなかった。
甲子園の常連高校から声もかかっていた。
中学でピッチャーをしていた時は三年ですでに球の速度は百四十キロ近く出ていた。
中学の県大会で投げたボールの八割はストレートだった。
それほどに実力があった。
「じゃあなんで熊本との高校を選んだんだ。弓道をするだけなら京都でもできただろ」
と、星野が聞いてきた。
「それはね、熊本に戻りたかったのとこの高校の弓道部の先生が良いという話を聞いてここにしようと思たったからだよ」
と、喋るが心の中では
(実際それだけではないきがするな)
と、少しの引っ掛かりがあった。
授業が終わり今日は部活もなく鈴谷と一緒に帰っていた。
「そういえば鈴谷ってなんでこっちに来たんだ」
と、俺が聞くと
「ええとそれは、、、」
少し言いよどんだ鈴谷は数秒後
「せっかくだから新しい世界を見に行きたかったし親もそれに賛成してくれたから。それで信がここにいくって言ってたからちょうど良かったから」
と、答えた。
その鈴谷の姿は俺には別の理由があるように感じたがそれ以上は何もわからなかった。
「そういえば鈴谷はこっちに来てよかったの。家の旅館の手伝いもあったでしょ」
「親がいいって言ったっから大丈夫でしょ。それにこっちに来て毎日が中学の頃より楽しくなってるよ」
「そうなのかなら良かったけど」
喋りながらも人の観察が得意な俺はさっきの鈴谷の態度が少し気になっていた。