第十三話 鈴谷と買い物
連絡が終わってから三十分ほどしてから家のインターホンが鳴った。
時間から考えても今家の前に来ているの人が誰かわかりきっているので俺は用意していた道具を持ってドアを開けた。
「おまたせ、ごめんね急に呼んだりして」
「気にすんな。それに暇してたから丁度良かったよ」
「ありがと、じゃあまずアウトドア用の服と道具見に行こっか」
鈴谷が行く場所の確認をするのを聞きながら街へ向かうための駅へと向かっていった。
歩いて十分程度、電車で十分程度で目的のデパートに着いた。
ここは去年の春頃に完成したばかりのデパートだ。
しかし、熊本の街では意外と珍しいものだ。
それはここでは商店街が大きくできており、そこのお店をいくつか回れば用事は済むからだ。
それゆえに一箇所で大体のことが済み、少し足りないものだけ街に行けば良くなるこのデパートには休日と言うこともあり、多くの人が足を運んでいた。
「わあ、すごいきれいだね」
見上げればそこは五階か六階くらいまでの吹き抜けになっていた。
そしてその中央には青々しい大きな樹木が置かれていた。
その下には多くの人がベンチに座って休んでいる。
「テレビでは見てたけど実際見るとこんなにも違うのか。随分きれいだな」
色々驚き見ながら俺たちは目的のアウトドア用品店に向かった。
途中、色々目移りしそうになりながらもなんとか目的地に着くことができた。
お店に着いて鈴谷が提案してきた。
「とりあえずそれぞれで見たいもの見て回ろっか」
「そうだな、じゃあまた後で」
俺も欲しいものが少しあるからそれをパッ見てまた合流することにした。
店内を見て回って、俺は一箇所で足を止めた。
そこにはサバイバルナイフが置かれていた。
「やっぱ実際に見ると浪漫が違うわ」
若干のオタク気質からサバイバルナイフには憧れが強くあった。
いくつかのナイフを見て俺はその中の一つを取った。
一般的な包丁より一回りくらい大きく、全体的に黒いものだった。
商品説明に「切れ味抜群で木を切ることから魚をさばくことだって、さらには火打ち石の代わりにも」
と書かれていた。
ここまで万能ならば多少値が張っても良いかなとかごへと放り込んだ。
自分の分の買い物が大体済んだところで鈴谷を探しに向かった。
いくつかの棚を見て回ってようやく鈴谷を見つけた。
「やっと見つけた。俺は買いたいもの大体買ったけど鈴谷はどう」
「ごめん、もう少しだけ見させて」
鈴谷はそう言って今見ている棚と他の棚を行ったきりたりして見て回って、十分程度してようやく満足したようにレジから帰ってきた。
「結構色々見てたけど何をそんなに迷ってたんだ」
「それはキャンプまでのお楽しみにしといて。それじゃあ少しご飯を食べに行こっか」
そう言って買った物を見せてくれなかった鈴谷はさっさと先へ行ってしまったので俺も急いでその後を着いていった。
昼ご飯をフードコートで食べて、ゲーセンなんかで遊んで今日はお開きとなった。
(そういえば鈴谷は結局何を買っていたんだろう)
鈴谷が買っていたものを結局教えてもらえてなかったことを思い出し、鈴谷に聞こうと思ったがまああのお店で買った物だし今度の遊びに行くときにわかるだろうとそれ以上は考えるのをやめた。
「きっと今はまだ意識されてないだろうし、桜ちゃんもいるんだし、早く攻めて行かないとね」
そうひとり言をつぶやきながらも今日は満足げな鈴谷。
手に握られている袋の中には今度遊びに行った時、自分の思いを先に進めるための物が入っている。