第十一話 まさかの誘い
夏休みに入って最初の週はとにかく部活と宿題に打ち込んだ。
なぜならせっかくの高校生の夏休み。
これを無駄に過ごしてはもったいない。そして後から必ず後悔がおそってくるだろう。
一番拘束時間が長い宿題だけは早く終わらせて自由にできる時間を増やさなくては。
俺はその一心でクーラーも点けず、扇風機の風だけで暑さも忘れて宿題に没頭した。
そんな宿題に没頭していた日曜日のお昼頃、スマホに一通の連絡が来た。
「誰からだ」
と、スマホを取って確認するとそこには白沢から連絡が来ていた。
『もし良ければ今から遊ばない』
端的な一言が送られてきていた。
「あいつから誘ってくるなんて珍しいな」
『良いよ。特に何もしてなかったし』
そう返すとすぐに返事が来た。
『良かった。それじゃあ神社まで来て』
『わかった』
そう返した俺はすぐに着替えなどを済ませて十分後には家を出ていた。
家から自転車で二十分ほどの場所にある神社、そこは白沢と再開した神社だ。
それを思い出してあの時の事って白沢は覚えているのかなと考えていた。
しばらくして大きな桜の木が見えてきた。
桜の木は春に見た時のピンクに染まった花びらはなく、代わりに爽やかな緑色で覆われていた。
「あんまよく見たことなかったけど桜の木ってこんなに印象変わるんだな」
葉の色が変わって見える景色の印象が全く変わっていることに驚きながら神社の中へと入っていった。
神社の中に入り、どこに行けばいいのかと周りを歩き回っていくと
「おーい。水無月君」
神社の建物に隠れた家の中から白沢がこっちに走ってきていた。
「急に呼び出しごめんね」
「それは良いけど、そういえば呼び出された理由聞いてなかったね」
「そのことだけどとりあえず家の中に入ってからでも良いかな」
というわけで白沢の家の中へとお邪魔することになった。
家はお屋敷と言って差し支えないような大きさで、家の中はthe和風というような家だった。
白沢に案内されて廊下を歩いていった。
途中、廊下からは本殿の裏手とその屋根の上からは桜の木が顔を覗かせていた。
そしてそこから更に廊下を進んでいって、ある一室の前で足を止めた。
そこは他の見えてきた部屋とは違って襖ではなく、黒色のドアだった。
周りを見ても襖しか見えないからとても異質な部屋に感じた。
そのドアを白沢が開けるとその中から調和の取れた様々な音が聞こえてきた。
「これって防音の音楽用の部屋で、あってる、のか」
「そうだよ。今日読んだのはね私たちとバンドをしないか誘うためなの」
白沢の言葉に驚いている俺をよそに俺たちの声を聴いた部屋中のやつらが出て来た。
「おお、信来たか」
「なんでお前がいるんだよ」
まさかのそこには駿に二岩、北村がいた。
そしてその部屋の中にはドラムやギターなどバンドなどで使われる楽器類が置かれていた。
俺が思考停止しているのを横目に駿が
「とりあえず色々話したいことあるし中で話そうぜ」
そう言うのに合わせて白沢は中へと入っていき俺も仕方なく入ることにした。
こうして俺の夏休みは急なバンドへの誘いから始まった。