第87話 王城にやってきました
入団式が始まってしばらく経った頃。
身なりをばっちり整えたクロエは、王城を訪れていた。
「す、すごい、大きい……」
天に聳える巨大な建造物を前にして、思わず言葉を溢すクロエ。
シャダフの実家なんて比べ物にならない。
遠目では良く目にしていたが、実際に目の前にしてみると王城はとても巨大な建物だった。
「この国の王様が住んでいるのだから、当たり前ね……」
そんな場所に今から足を踏み入れると思うと、少しばかり緊張してきた。
「よしっ……」
気を入れ直して、入り口である門番所に足を運ぶ。
「ご、ごめんくださいー……」
ロイドと同じ、騎士の格好をした門番二人はクロエに気づくなりぎょっと目を丸めた。
「え、ちょ……かわっ……」
「ど、どこの令嬢だ? お前、話聞いてたか?」
「いや、何も聞いてない。しかし、令嬢なら従者もつけずに一人で来る事はないような……」
「あの……?」
ごにょごにょと何やら内緒話をしている二人に話しかけるクロエ。
「あ、ああ、すまない。お嬢さんがあまりにも可愛らしくて、つい慌ててしまって……」
「可愛いだなんてそんな、とんでもないですよ」
にっこりと、クロエが穏やかな笑顔を浮かべる。
十中八九お世辞だろうが、お世辞を口にしてくれるほどには身なりを整えることが出来ていたみたいと、クロエは内心でホッとした。
一方の門番二人は、クロエの笑顔にぽーっと見惚れてしまっている。
クロエをどこか良い所出の令嬢だと判断した、二人の勘は当たっていた。
クロエは辺境伯の令嬢で、元々が整った顔立ちをしている。
しかも今は化粧も服装もばっちりで、王都の上級貴族の令嬢にも引けを取らないほど見目麗しい容貌をしていた。
ただ本人は幼い頃から醜い呪われた子だと罵倒を浴びせられ続けてきたため、自分がそんなハイレベルな容姿をしているという自覚が全くない。
「…………あの?」
「あっ、ああ! ごめんなさい! それで、ご用件はなんでしょうか?」
一人の門番が前に出てクロエに尋ねる。
何故か敬語と揉み手の彼を不思議に思いながらも、クロエは経緯を口にする。
「えっと、私、ロイドさんの家で家政婦をしているクロエと申します。ロイドさんがお弁当を家に忘れてしまったので、届けに来たのですが……」
「ああ、ロイドの家の家政婦……って、ロイドの!?」
ぎょぎょぎょっと、門番二人はひっくり返ってしまいそうな程の驚きを見せた。
「ロイドさんをご存知なのですか?」
「ええ、ええ、もちろんです! 僕たちは第一騎士団所属じゃないんですが、王国屈指の騎士として数々の伝説を残してきた、ロイドさんの噂はもうかねがね……」
「な、なるほど……凄いですね、ロイドさん……」
ロイドの名前を出すだけでこんなにも大きなリアクションが返ってくるとは思っておらず、クロエは感嘆してしまう。
(流石、本当に有名人なんですね……)
ただ一点勘違いとして、門番が驚いている理由は『こんな可愛らしい子があのロイドの家の家政婦……!?』という部分であったが。
「それで、私はどうすれば良いでしょうか? 関係者以外入れないようでしたら、このお弁当をお届けするのだけでもお願いしたいのですが……」
「えっと、入れます、入れます! 今は別に有事でもないので、王城の一部区間は国民の交遊スペースとして一般開放されていますし……」
「そうなんですね、よかったぁ……」
ほっと安堵の息をつくクロエに、門番の頬も思わず緩む。
「と、とにかく、ロイドさんの元へは僕が責任を持って案内します。そろそろ入団式が終わって、訓練場に戻ってくる日程になっていたはずなので」
「あ、ありがとうございます、よろしくお願いします!」
そうしてクロエは、簡単な持ち物検査とボディチェックを受け、王城への入城許可の手続きを終えてから、城の中へ通されたのであった。
【お知らせ】
ド田舎の迫害令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される
/
2巻発売決定です!!
\
皆様の応援のおかげですーー!!
本当にありがとうございます!!
発売日等はまた追って告知いたします!!




