第59話 羨ましい
【お知らせ】
先日から告知していた通り、書籍化に伴い『忌み子なのに〜』からタイトルが変更となりました。
新タイトルでもどうぞよろしくお願いいたします。
また後書きで諸々の情報解禁がございますので、お楽しみに!
今日は満月の光が妙に明るく、蝋燭もいらないほど視界が開けていて、帰り道に迷いは生じなかった。
「楽しかったか?」
「はい、とても!」
ロイドの横を歩くクロエが元気よく頷く。
「お料理、どれも絶品でしたし皆さんいい人で……本当に、素晴らしい時間でした」
しみじみとクロエは言う。
「ロイドさんは?」
「俺は……どうだろうな」
「楽しく……無かったのですか?」
「いや、おそらく楽しくはあったんだが……」
うまく形になっていない感情を言葉にしてから、ロイドは口を開く。
「副団長の家のような、おそらく一般的な家庭というものに縁が無くてな。少し、胸がざわついたというか……うまく言えないが、もやっとした気持ちがあった」
「なる、ほど……」
少し黙考してから、クロエは答える。
「私も、その気持ちはわかる気がします」
ロイドがクロエの方を見る。
「優しい両親に、温かくて美味しいご飯……楽しく家族ごっこをする皆さんを見て、ミリアちゃん、愛されてるんだなあって……ちょっぴり羨ましいなと、思いました……」
クロエの横顔は、微かに寂しそうに見えた。
「……後半、君が少し、疲れているように見えたのは気のせいではなかったか」
「あはは……顔に出ちゃっていましたか。せっかくお招きいただいた方に対して抱く感情では無かったですね、失礼いたしました」
「謝るようなことではない。俺も、共感出来る」
「そう仰っていただけると……助かります」
もちろんフレディに悪意などない。
クロエとロイドも、予想だにしていなかった。
夕食会に参加し、いわゆる『幸せな家族』というものを目の当たりにし、これまで歩んできた人生の中で『欠けているもの』を漠然と認識した結果、胸中になんとも言えない感情が漂ってしまうなんて。
──ロイドは正義感が強く、根は真面目で良い奴なんだけどな。生い立ちが生い立ちな分、やはり人との接し方が不得手なんだろう。
ふと、クロエの脳裏にフレディに言われた言葉が掠める。
(ロイドさんの、生い立ち……)
とても、気になった。
「ロイドさんは……」
(今までどんな、人生だったのですか?)
気がつくと開いていた口を、慌てて閉じた。
自分の過去でさえほとんど明かしていないのに、ロイドの過去を聞きたいと申し出るとは……なんというか、平等じゃない気がして。
「どうした?」
「い、いえ……やっぱりなんでもありません」
「……そうか」
ロイドは仄かに怪訝な顔をしたが、それ以上、深く聞いてくることはなかった。
(何も、今急いで聞くようなものでもないし……)
物事にはタイミングというものがある。
もう少し心の準備というか。
そういう流れになった時に、ゆっくりと聞きたい。
顔を合わせる時間も長いのだし、機会はいくらでもあるだろう。
そう、クロエは纏めた。
──だが、その機会はすぐに訪れた。
家まで後少しというところで、ロイドが不意に立ち止まった。
クロエがミリアと出会った公園の前。
「どうしたのですか、ロイドさん?」
尋ねると、ロイドは暫し逡巡してから言った。
「少し、話をしないか」
【告知】
『実家、捨てさせていただきます!』
諸々情報解禁です!
レーベル:DREノベルス
発売日:12/10(予定)
イラストレーター:有谷 実
▼DREノベルス様公式サイト▼
https://drecom-media.jp/drenovels
創刊ラインナップということで緊張しますが、書籍版共々どうぞよろしくお願いいたします!
またコミカライズもDREコミックス様で進行中です!
こちらもお楽しみに!




