第56話 家族ごっこ
「じゃあ、私がパパで、ロイドおにーちゃんが私の子供ね!」
夕食後、リビングの一角。
ミリアとロイドが、何やらお人形さんで家族ごっこ的な何かに興じている。
「了解した、父上」
「オセロはお母さんね!」
ミリアが元気よく言う。
くああぁぁっと欠伸して、オセロは興味なさそうにどこかへ行ってしまった。
「父上、大変だ、母上が育児放棄した」
「いくじほうきー?」
ちなみにサラさんは夕食会の片付けをしているようで、台所でガチャガチャやっている。
クロエが手伝いを申し出てやんわりと断られたのは、ごく自然な流れであった。
「いやあすまないね、クロエちゃん、ロイドを貸してもらって」
わちゃわちゃと家族ごっこに興じる二人を、クロエとフレディが大きなソファから眺めている。
「いえいえ、二人とも楽しんでいるようで、何よりです」
「ロイドのあれは楽しんでいるのか……?」
子供の人形を手に持ち、至極真面目な表情で五歳児の相手をするロイドの姿はシュールとしか言いようがないが、クロエからすると結構楽しんでいるように見えた。
「ミリアは最近、家族ごっこがブームみたいでね、よく三人でやるんだ。オセロが来るまでは、サラがパパで、ミリアがママ、俺は息子役だった」
「へええ、いいですね。オセロが来てからは?」
「俺はペット役にされる事が多くなった」
「フレディさん……」
憐憫の情を浮かべた瞳で、クロエがフレディを見る。
「ま、良いってことよ。オセロが家族になってから、ミリアも遊び相手が増えたって大喜びさ。そういえば、オセロはクロエちゃんが助けてくれたんだよね?」
「そ、そうですね……買い物帰りに、ミリアちゃんが困っていたのを見つけて、それで……」
目を逸らすクロエ。
にいっと笑ってから、フレディはクロエに言葉を贈る。
「娘から聞いてるよ。ひょいひょいひょいと、物凄いスピードで木を登っていったそうだね?」
「あ、あはは……木登りほんの少しだけ、得意と言いますか……」
「改めて礼を言うよ、“お猿のおねーさん”」
「も、もうっ、フレディさんまで……」
クロエが顔をりんご色にして恥じらう。
ほんの些細な思いつきで田舎のスキルを発動しただけなのに、奇妙な異名までついてしまうとは思ってもみなかった。
「まあでも、真面目な話、クロエちゃんには感謝をしているんだよ」
一転、声のトーンを変えてフレディがそう言う。
「私は木登りをしただけですよ?」
「ああ、違う違う」
首をゆっくりと振って、フレディは言う。
「ロイドの事だよ」
「ロイドさんの?」
フレディの言葉に、クロエはこてんと小首を傾げた。




