第49話 ドレスを買いに
翌日はロイドの非番の日であった。
というわけで、クロエはロイドと予てより行こうと提案してまだ行けてなかった商業地区のドレスショップにやってきた。
ちょうどいいので、明後日の夕食会に着ていくドレスを買おうという話になった次第である。
「わあ……」
目の前に広がる光景に、クロエは感嘆の声を漏らす。
赤、黄、青、緑……色とりどりのドレスが所狭しと飾られていて、まるで御伽の国に来たような気持ちになった。
「こんな数のドレス……見たことありません!」
「副団長に聞いたところによると、ここは商業エリアの中でも一番大きなドレスショップらしい」
「そ、それは、凄いですね……!!」
瞳をジュエリーのように輝かせるクロエは、ご馳走を前にした小動物のように見える。
「……自由に見てきて良いんだぞ?」
「あ、はい! では、お言葉に甘えて……」
クロエは小走りにドレスの元へ向かう。
しばらくクロエは店内のドレスを見て回った。
可愛らしいピンク色のドレスに「はわあ……」と息をついたり、装飾だらけでギンギラギンなドレスに「おおっ……」と驚いたり、胸元がやけにはだけたキャミ系のドレスに頬を赤くしたり。
今まで着てきた芋臭いドレスとは明らかに違う、都会のスタイリッシュでお洒落なドレスたちに、クロエはたくさんのリアクションを見せていた。
そんな様子を、ロイドはまるで、珍しい生き物を観察するように眺めている。
ロイド自身、女性とドレスショップを訪れるなど初めての経験で、少々緊張しているというのが正直なところであった。
が、ドレス一つ一つを楽しそうに見て回るクロエを見ていると、どこか微笑ましい気持ちになってくる。
一通り見て回ったクロエが、ロイドの元に戻ってきた。
「気に入ったドレスはあったか?」
「……選びきれません」
「む?」
「どれもこれも素敵で、何を購入すれば良いのかわからないと言いますか……」
「なるほど」
じゃあ俺が選ぼう、などと言えるほどロイドにファッション的な知識があるわけではない。
ただこうなった時の対処法を、ロイドはフレディから予習済みであった。
「こっちへ」
「は、はい」
ロイドはクロエを、ドレスを畳んでいた女性店員の元へ連れて行った。
「彼女に似合うドレスを一式、揃えてくれる事は可能か?」
「はい、もちろんで……」
にこにこと受け応えていた店員さんが、クロエを見るなり硬直する。
「な、なんでしょうか……?」
「……ダイヤモンドの原石……」
「へ?」
「いえ、なんでもございません。お任せください、お嬢様」
スマイルに戻った店員さんがロイドに尋ねる。
「ちなみに、ドレスのご用途をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「外行用で、夜会やパーティにも着用できるものだとありがたい」
「かしこまりました。必ずや、貴方様に似合う極上のコーデをして差し上げます」
「は、はい! よろしくお願いいたします?」
何やら女性店員からやる気に満ち溢れたメラメラオーラが見えるのは気のせいだろうか。
「それでは、お連れ様は少々お待ちください〜」
「よろしく頼む」
店員さんに導かれ、クロエは奥へと連れて行かれるのであった。
──これは、腕が鳴るわね。
そんな声がチラッと聞こえたような気がした。




