第45話 再会
今日は天気も良く絶好の家事日和だった。
まだまだ気温は低いが、爛々と輝く太陽が出ているだけで洗濯のモチベーションは鰻登り。
掃除中も、洗濯中も、クロエは機嫌良く鼻唄を口ずさんでいた。
一通り日課の家事をこなした後は、お買い物へ。
服装はお馴染みの姉ドレス。
もはや外行き用の貴重な一着となっている。
そろそろ傷みも許容できない感じになってきているので、ドレスじゃなくても外出用の衣服を何着か購入したいところではあったが、ロイドとの外出まではこれでいこうとクロエは考えていた。
お馴染みのお買い物リュックを背負って、商業地区へ足を運ぶ。
今日も今日とてメインストリートは活気があって、眺めているだけで元気が貰えそうだった。
ひとまず消耗品のアレコレを購入し、露店のエリアへ向かう。
「ようクロエちゃん、買い物かい?」
「こんにちは、アルノイドさん。はい、日用品と夕食の材料を買いに来ました」
「やっほークロエちゃん! 今日も可愛らしいね!」
「こんにちは、スノーさん。いえいえ、そんな……」
歩いていると、時たまこうして声をかけられる。
この二週間、暇さえあれば商業地区に赴き色々なお店に顔を出しているうちに顔見知りになった人たちだ。
もともとクロエは人当たりがよく腰も低いため、誰かと仲良くなるのは得意だったりする。
本人にその自覚は皆無であったが。
「やあクロエちゃん、いらっしゃい!」
「こんにちは、ステーラさん」
様々な露店の中でもクロエお気に入りの店。
初めて商業エリアに来た際に夕食の食材を買った、ステーラおばさんのお店にクロエはやってきた。
食材もいいし接客も気持ちよく、クロエが一番足を運ぶお店になっている
「ステーラさん、今日のおすすめはありますか?」
「よくぞ聞いてくれたさね! 今日はとびきりの牛肉を仕入れたわよ! 柔らかくて肉厚で美味しいさね!」
「牛肉! 良いですね、じゃあそれを二人分ください」
「毎度あり! ついでに玉ねぎもサービスするさね! しぐれ煮にするととても美味しいよ!」
「わあ、ありがとうございます、嬉しいです! しぐれ煮、良いですね! いつもアイデア出し、とても助かってます……」
「こちらこそいつもありがとね……って、あら?」
何かに気づいたステーラが、クロエの顔を見て目をぱちくり。
「如何なさいました?」
「そのイヤリング、贈りものかい?」
ステーラが、クロエの耳で光る花柄のイヤリングを指差して言う。
「よ、よく気づきましたね」
「当たり前さね! 伊達に客商売続けてないよ!」
豪快に笑うステーラ。
細かな変化にも気づく目の利き方は流石であった。
「それで、“これ”からかい?」
「な、なんで小指を立てるんですか……えっと、例の方から、お礼だと言っていただきました……」
「ほーほーほーほー! 甘酸っぱいさねー、いいさねー」
微笑ましいものを見るような表情で、ステーラはうんうんと頷く。
「とても似合ってるさね。その人、とってもセンスが良いわ」
「ありがとうございます」
自分でもお気に入りのイヤリングを褒められて、純粋に嬉しい気持ちが湧いてくる。
胸のあたりがぽかぽかと温かくなった。
「毎度あり! また来てちょうだいな!」
お会計を済ませた後、ステーラが陽気な笑顔で手を振ってくれる。
今日もステーラさんに笑顔のお裾分けを貰った気がした。
またこのお店に買いに来ようと、クロエは思うのであった。
夕食の食材も買い終えた後、しばらく街をふらふらしてから帰路に就く。
「……あら?」
家まで後少しという距離にある公園に差し掛かった時、何かに気づいて声を漏らすクロエ。
二週間前、この公園で出会った女の子──ミリアが、見覚えのある子猫と一緒に戯れていた。
「あ!」
ミリアもクロエに気付き、こちらに駆けてくる。
その後ろを、子猫がトコトコとついてきた。
「お猿のおねーちゃん、こんにちは!」
「こんにちは、ミリアちゃん。……ちょっと待って、お猿じゃない」
「でも、するする木登りしてた。だから猿さんだと思って」
「うっ……確かにお猿さんは木登りするけど、うーん……」
腕を組み首を捻るクロエの足元で、子猫が「みゃあ」と一鳴きする。
「ほら、オセロもお猿さんって言ってる」
「あら、その子猫ちゃんとお友達になったの?」
黒と白のハチワレ子猫は、二週間前にクロエが救出した猫ちゃんに間違いない。
子猫特有の成長期なのか、少しだけサイズアップしたような気がする。
「うん! いま飼ってるの! 黒と白だから、オセロって名前! あの後、家までついてきたみたいで、お母さんはお世話できないでしょって言ってたけど、出来る出来るって私が言ったら、飼っていいことになったの」
「そうなんだ。良かったねー、オセロ」
クロエは膝を曲げて、オセロを撫でる。
ふわふわした毛ざわりと確かな体温が手から伝わってくる。
オセロはクロエのことを命の恩人だと覚えているのか。
喉をぐるぐる鳴らして、クロエの手に自分の頭を擦り付けた。
「か、かわ……かわわわ……」
小さくて目がまんまるでもふもふした可愛さ破壊力抜群の生き物に、クロエの目尻がだらしなく下がる。
「お猿のおねーさん、変な顔になってる」
もうお猿でもなんでもいいわ〜と、世界の可愛さを凝縮したような子猫にクロエがデレデレになっていると。
「あ、パパ!」
不意に、ミリアが声を上げた。
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