第44話 抑えきれない気持ち
ロイドからプレゼントをもらった翌日の朝、玄関。
「今日はパトロールの任務があるから、少し遅くなるかもしれない」
「わかりました! では、気持ちゆったりめに夕食を作りますね」
いつにも増して上機嫌そうなクロエに、ロイドが小さく頷く。
「……? 如何なさいました?」
じっと見つめてくるロイドに、首を傾げるクロエ。
「……イヤリング、早速つけているなと思って」
クロエの耳で、花柄のイヤリングがきらりと光る。
「えへへ……お気に入りですので」
「まだ一日も経っていないぞ」
「お気に入りはお気に入りなのです。ずーっと付けていたいくらいです」
「そうか……何よりだ」
嬉しそうにはにかむクロエに、ロイドの口元も思わず緩む。
「おそらく遠慮しているのだと思うが……給金で個人的な物を買うのは自由だからな?」
「バ、バレてましたか……」
「やはりな。おそらく、今まで不自由だったゆえ癖が染み付いているのだと思うが、この際、遠慮はいらない。自分の意思を尊重してくれ」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
ぺこりとお辞儀をするクロエの頭を、ロイドがぽんぽんと撫でた。
優しくて、心が穏やかになる感触に、クロエの目がとろんと溶けてしまいそうになる。
先日から何かとロイドが行うようになった動作だが、ふと疑問に思って尋ねる。
「……頭を撫でるのが、お好きなのですか?」
「すまない、嫌だったか?」
「いえいえいえいえ! 嫌じゃない、です。むしろ、その……」
もじもじしながら、クロエは呟く。
「嬉しい、です、はい……」
「…………なら、良かった」
恥じらう乙女のように頬をいちご色に染めるクロエ。
その表情から目を逸らし、ロイドは言う。
「……好き、かはわからないが、君の挙動を見ていると、ついしたくなる、というか……自分でもよくわかっていない」
たどたどしい口調からは、戸惑いの感情が窺える。
「ま、まあでも、お互いが良いのであれば、よろしいのではないでしょうか?」
「あ、ああ、そうだな、そういうことだな」
二人して頷く。
そして訪れる、無言の間。
お互いに妙に気まずくなった二人は時間を進めた。
「……では、行ってくる」
「……はい、いってらっしゃいませ」
クロエに見送られ、ロイドは仕事へと向かう。
ひとりになった後、クロエは耳を真っ赤にしてその場にしゃがみ込み頭を振った。
(ああ……恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……)
最近、ロイドの前で正常でいられない事が増えた。
自覚はあった。
最初に出会った頃から、ロイドの事を異性として意識していると。
でも自分は家出してきた居候の身で家政婦。
相手は王都のエリート騎士。
釣り合うわけがないし、自分なんかに好意を持たれても迷惑なだけだろうと、低い自己肯定感がそう思わせていた。
自分の気持ちをなるべく自覚しないようにして、押し込めていた。
だけど最近、無視できないほどに、ロイドへの想いが日に日に大きくなっていっている。
昨日ロイドからプレゼントを貰って、その気持ちはより確かな物になっていた。
でも、だからと言って何か行動を起こそうとは思わなかった。
この程よい距離感が、日常が、とても落ち着くし愛おしい。
今はまだ、このままで良いかなと、クロエは思っていた。
ふと、頭に手を乗せる。
まだ頭に残るロイドの手の感触を確かめるように。
そんな自分を客観視してしまい、余計に顔が熱くなった。
(いけない……これじゃただのポンコツじゃない……)
再び頭を振って、雑念を脳から追い出す。
深呼吸してから立ち上がり、クロエはぎゅっと胸の前で拳を握りしめた。
「……さて、まずは掃除からやりますか」
こうして、今日も変わらぬ一日が始まる。
変わらぬ一日の、はずだった。
【重大告知】
いつも本作をお読みくださりありがとうございます。
『忌み子なのに幸せになってもいいんですか?』ですが、書籍化・コミカライズが決定いたしました!
いやっふうううううういいい!!!
いじらしい二人のいちゃあまがイラストと漫画で見れるー♪
皆様の応援のおかげです!
本当にありがとうございます!
一冊の本として、そして漫画としてもしっかりと面白く読めるよう書籍作業頑張って参りますので、
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
レーベルやイラストレーター、発売日などはまた追って告知させていただければと思います。
「面白い!」「続きが気になる!」「書籍化おめでとう!」など思ってくださりましたら、ブクマや↓の☆☆☆☆☆で評価頂けると励みになります……!




