表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】ド田舎の迫害令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される【第3巻 11/10発売】  作者: 青季 ふゆ@醜穢令嬢 2巻発売中!
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/173

第28話 朝ごはん

「……おはよう」

「おはようございます!」


 リビング。

 ちょうど朝ごはんが出来たタイミングで、ロイドが起きてきた。


 寝起きはあまり得意では無いのか、どこかボーッとしているように見える。


「あっ」


 クロエが何かに気づき、ロイドのそばに駆け寄った。


「ロイドさん、寝癖ついてますよ」

「む……」


 ロイドの頭の斜め上らへんでぴょこんと跳ねた黒髪を、クロエは見上げてせっせと直す。

 

「はい、これでよし」

「……気付かぬ寝癖は剣士の恥」

「なんですか、それ」


 くすりと口に手を当てて笑うクロエ。

 一方のロイドは何故か、先程のぼんやりとした瞳が完全に醒めていた。


「朝ごはん、いつもはどうしています?」

「食べないか、携行食を丸齧りか」

「よくそれでお仕事持ちますね……」

「問題ない、ジャングルでは三日三晩飲まず食わずなどザラだった」

「ジャングルで度々ひどい目に遭ってますね……簡単ですが朝食を作ったので、良かったらぜひ」

「作ってくれたのか?」

「ええ、せっかくなので」


 ロイドは驚いたように目を丸めた後、言う。


「なら、いただくとしよう」


 テーブルに着くロイドの前に、深めの丸皿を持ってくるクロエ。


 丸皿には何か、荒い粉状の物の上に蜂蜜的なものがたっぷりかけられている。

 ほかほかと湯気だっていて温かそうだ。


 何やらふわりと甘い香りが漂ってきて、空っぽだったロイドの胃袋をきゅっと刺激した。


「どうぞ」


 スプーンを手渡され、一口。

 ロイドのスプーンが口の中に入ったまま止まった。


「ど、どうでしょうか……?」


 緊張気味に聞いてくるクロエ。

 一口目をゆっくり堪能し、味わってからロイドは一言。


「美味いな、これは」

 

 ザクっとした食感の後に蜂蜜とバターの味が流れて来たかと思うと、ほのかにチョコの風味が鼻を抜ける。

 まだ起ききっていない朝の脳に最適で、これから身体を動かす身としては最高の栄養が固まっているように感じた。


「良かったです!」


 喜びと安堵の表情を浮かべるクロエ。


「多分ですが、コーヒーとも合いますよ」

「……なるほど」


 いつの間にか淹れられていたコーヒーも啜ってみる。


「これは……合うな」


 甘みが強いのと水分を取られるので、苦味のあるコーヒーはベストマッチだった。

 マリアージュとはまさにこの事だろう。


 ザックザックと食べ進め、コーヒーを啜るロイド。

 

 ふと、思う。


「しかし、こんな食材、家にあったか?」

「あ、それ携行食です」

「……。……!?」


 ぱちくりさせた目を、ロイドは見開いた。


「出勤時間がわからなかったので、簡単に作れてかつ素早く食べれるものにしました。味としては薄いチョコクッキーみたいな感じでしたので、一度粉々に砕いてからバターと蜂蜜をトッピングした後、温めてみたのです。甘いものが美味しい朝に食べるにはちょうどいいかなと」

「魔法みたいなことをするな、君は」


 なんでもない風に解説するクロエに、ロイドは賞賛の言葉を贈る。


 実家ではコックの怠惰によって本来仕入れられる予定だった食材が未入荷、なんて事が多々あったので、残り物やありあわせて新しい料理を作るのはクロエのお手のものであった。


 この味とこの味を組み合わせたら美味しくなる、ならないは大体決まっているので、今回もその応用をしたのである。


「ま、魔法だなんて、大袈裟な……」


 言いつつも、ぽりぽりと頬を掻き嬉しそうにするクロエ。


「ちゃんと自分の分は食べたか?」

「はい、もちろん」

「ならいい。……昨日は、しっかり眠れたか?」

「あ……はい、お陰様で……」


 急にぶっこまれたが、昨晩の事もあったのでロイドの気遣いからきた質問なのだろうと思う。


「あの、色々とご迷惑を……」


 謝罪を口にしようとするクロエを、ロイドが制した。


「謝るようなことはしていない。だから、謝らないでいい」

「……はい、えっと……ありがとうございます」

「それでいい」


 ふ、とロイドは口元に笑みを浮かべ朝食に戻った。

 あまり見られないロイドの笑みに、なんだか得したような気分になる。


 そんなやりとりをしつつ、ロイドはあっという間に朝食を平らげた。


「ご馳走様、朝から美味いものをありがとう」

「どういたしまして」


 クロエは笑顔で応えた。


 誰かのために作った料理をおいしいと言ってもらえるのは、それだけで幸せな事だ。

 改めて、クロエは噛み締めるのであった。


 その後、仕事着に着替えたロイドが戻ってくる。


「あ……」


 腰に差さった剣を見て、思わず声を漏らすクロエ。

 

「すまん、配慮不足だった」

「ああ、いえいえ……!!」


 後ろに剣を隠そうとするロイドにクロエは慌てて言う。


「鞘に収まっていたら大丈夫みたいなので……多分、尖った刃のギラギラした感じがダメなんだと思います……」

「……なるほど」


 ロイドが剣を元の位置に戻す。


「お気を遣わせてしまってごめんなさい」

「問題ない。また、対応策はゆっくり考えればいいのだからな」


 クロエとしても、昨日発覚したトラウマゆえ何がダメで何が大丈夫なのか、正確にはわかっていなかった。

 昨日のシチュエーションだと、心構えがない状態で急に刀身が見えたからパニック症状が出たのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。


 この辺りはこれから探っていく必要がある。


 そんな事を考えながら、玄関までロイドを見送るクロエ。


「今日も夕方くらいに帰る。君は?」

「昨日仰ったように、せっかくなので生活に必要な物を諸々買いに行こうかなと」

「そういえば、そんな事を言ったな。……大丈夫か?」

「これでも成人している身ですよ、昼間に一人でお使いくらい大丈夫です」

「そうか……それなら、この家を出て左の通りをずっと行ったところにある商業地区で買うといい。貴族御用達の店が多いし、見回りも充分に巡回しているから治安もいい」

「わかりました、ではそこで買い揃えてきますね。教えて頂きありがとうございます」

「問題ない。そうだ、金は……」


 ロイドは懐から、金貨と銀貨を何枚か取り出しクロエに渡した。


「これだけあればおそらく足りるだろう」

「じゅ、充分過ぎますね……」

「給料の前金だと思ってくれ。余った分は好きに使っていい」

「わかりました、何から何までありがとうございます」

「気にするな。では、行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」


 小さく手を振って、クロエはロイドを送り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【お知らせ】 新作の連載を開始しました! ↓タイトルをクリックすると新作のページに飛べます。

大当たり令嬢はニ度目の人生を謳歌する〜死にたくないので100億マニーを手に隣国へ逃亡します〜



― 新着の感想 ―
[良い点] 天然系不思議女子が何をするのか目が離せません。 [気になる点] 朝ごはんに、何が出てきたのか想像ができません(汗 食材が入ってこず、コックが仕事をしない状況で、 出されてあの母親が怒らなか…
[良い点] ロイドさんのジャングルでの経験も大概ですが、クロエさんの実家での生活もほぼサバイバルですよね。衣食住においての不安が解消された彼女の能力がどう発揮されていくのか楽しみです。 [気になる点]…
[一言] ロイドさんの胃袋つかみましたかね~。クロエちゃんが、お買い物無事にいけますように・・。本日も更新してくださりありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ