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【完結】ド田舎の迫害令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される【第3巻 11/10発売】  作者: 青季 ふゆ@醜穢令嬢 2巻発売中!
第二章

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第103話 言いたい

「相変わらず見事な手捌きだな」


 夕食後、リビング。

 ハンカチに刺繍を刺すクロエの手元を、ロイドが覗き込む。


「それは、剣か?」

「はい。ロイドさんと言えば、やっぱりこれかなと思いまして」

「うむ、良いな。剣士の俺にぴったりだ」


 クロエの針作業をじーっと見つめるロイド。


「あ、あまり見られると恥ずかしいですね……」

「ああ、すまない。邪魔したか」

「いえ! 全然このまま見て頂いていて大丈夫ですが、あまり面白いものでもないかと」

「そんな事はないぞ。針作業のスキルが赤子ほどもない俺にとっては、とても新鮮な光景だ」

「流石に赤ちゃんよりかはあるような……」

「剣での闘いであれば負傷する事は滅多にないが、針作業だとたちまちのうちに手先が血塗れになるのだが」

「よほどですね。まあ、人には得手不得手がありますから……」


 そんなやりとりをしている時、ふとロイドが言う。


「やはり、見れば見るほど鮮やかな手業だな。ここまでの技量に到達するには、長い年月研鑽の日々を積み上げてきたのだろう」


 ぴたりと、クロエの手が止まる。


「そう、ですね……」


 ロイドの言葉で、思い出す。


 針作業を初めてしたのはいつだろうか。

 確か、十歳にも満たない子供の頃だったと思う。


 破れたドレスを修復しろと母に命じられて、見よう見まねでちくちくした。

 最初は上手くいかなくて、酷い出来になってしまったのを母に怒鳴られたものだ。


 それからシャーリーに教わって、少しずつ上達していった。


 元々手先は器用な方だったためみるみるうちに上達していき、裁縫の仕事もよく任されるようになった。

 それに姉リリーが目をつけ、刺繍を刺すよう命令されるようになる。


 当時はそれが普通だと思っていたから、何度も無茶振りを聞いていたものだった。

 思い出すのは眠気と、洗い仕事でボロボロになった手先を針で刺してしまった痛み。


 きゅ……とクロエは唇を噛み締めた。


「どうした、クロエ?」


 クロエの表情に影が差した事に、ロイドは気づいて尋ねる。


「あ……いや……えっと……」

 

 言葉を詰まらせるクロエの様子を見て、ロイドは何かを察したようで。


「……すまない。嫌な事を思い出させてしまった」

「そんなっ……謝らないでください!」


 申し訳なさそうに頭を下げるロイドを見て、胸のあたりに痛みが走る。


(元はと言えば、私が過去の話をしていないのが悪いだけなのに……)


 今の関係が居心地が良くて。

 本当のことを話して、ロイドに嫌われたくなくて。

 今まで隠していた、自分のこと。


 気が向いた時に言えばいいと言うロイドの言葉に甘えていた。

 だからと言って、このままずっと目を逸らして、沈黙を続けるの良くないのは重々わかってる。


 どこかで勇気を出さないと、ずっと言えないままだ。

 それはあまりにも、こんなにも良くしてくれているロイドに対して失礼だと思った。

 

(…………言おう)


 覚悟を、決めた。

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大当たり令嬢はニ度目の人生を謳歌する〜死にたくないので100億マニーを手に隣国へ逃亡します〜



― 新着の感想 ―
[良い点] 既に身バレは秒読みで、いつ爆発するかわからない時限爆弾もある以上、ここで言えるかどうかで運命が変わりそうですね。
[一言] 言え!言ってしまえ!姉と再会する前に、、、
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