表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/21

7 レベルカンストと新たなミッション

 翌日。

 俺達は魔王城にある闘技場に来ていた。


 いろいろと試したいことがあったし、それが成功すれば俺達のレベルはかなり上がるからだ。


「先生!ほんとにレベル上がったね!」


 クレアがそう嬉しそうに口にしている。

 

「私も上がりましたノルン様!」

「私も!」


 その後にミーナとエリーもそう報告してきた。

 俺のスキルは個人にのみ適用されるのではなく、パーティ単位で適用されるのかもしれない、という話をリシアに聞いたのでその実験に来ていたのだった。


 そして結果はばっちり。

 俺のレベルもそれ以外の3人のレベルも上がっていた。


「みんなレベル50後半、か。すごいな」

「何言ってるの?先生はもう99じゃん!」


 そう言われて自分のレベルを思い出した。

 ウィンドウに目をやる。


 【次のレベルアップに必要な経験値0】


 俺のレベルは99でカウンターが止まっていた。

 つまり上限まで上がりきってしまったということだ。


 正直少し前はレベル5だったのを考えると実感は湧かない。


「流石ノルン様です♡実力も凄いならスキルもチート級なのです!」


 そう言って俺の腕に抱きついてきたミーナを見て


「あっ!ずーるーいー!私も!先生の独り占めなんて許さないから!」


 クレアも反対側からしがみついてきた。

 2人とも暫く離してくれないようだ。

 

 それに苦笑いしながらエリーを見ていると


「じゃ、じゃあ私も!」


 エリーは真ん前から抱きついてきた。


「なっ!」

「それはずるです!」


 3人が俺を取り合ってギャーギャー言い始めた。

 まさか俺のせいで喧嘩になる日が来るとは思っていなかった。


 でも、あんな出来事があったばかりでそこまで俺の事を思ってくれていると考えるなら少し嬉しくもあった。



 俺はリシアにやってもらいたいことがあると話を聞いて彼女に同行してとある部屋に来ていた。


「念の為確認しておくが本当に私と共に来てくれるんだな」

「あぁ。俺はリシアと共に歩もう。勇者、親父、村人達どれも顔も見たくない。うんざりだ。特に勇者に関しては倒して思ったよ。殺す価値もないほどくだらない男、だと。俺の槍にあんな奴の血をつけてやりたくないとまで感じたよ」


 もう人間として過ごす事なんてないだろう。


「ならば、お前にはダンジョンを経営してもらいたい。1つ荒れ果てているダンジョンがあってな」

「ダンジョン経営?」

「あぁ。お前の力を見込んでやってもらいたいのだ。ダンジョンは私たちの領域だ。魔王領を奪われないためにもダンジョン経営は重要となってくる」


 なるほどな。

 とりあえずダンジョン経営が重要だということは分かった。


 そしてそれを俺に行って欲しいという話も理解した。

 だが、俺はそんなことをしたことがないが大丈夫だろうか。


「お前に行ってもらいたい場所だが、ここだな」


 彼女は地図を広げて1つの森を指さした。


「ゴブリンの森だ。出現モンスターの殆どがゴブリンであり人間にとっても易しいダンジョンだが、とりあえずお前に任せるダンジョンとしてもうってつけだと考えた」


 それは確かにいいダンジョンかもしれない。

 いいよという意味を込めて頷く。


「よし、ならば直ぐに行こう。テレポ」


 彼女が魔法を使うと直ぐにゴブリンの森、その深奥にやって来た。

 そこは周りを草木で囲まれた場所。


 自然の中にあった。


「ここはゴブリンの森の最奥」


 そう言った彼女はゴブリンの森にあった小さな石碑に手を当てた。

 すると

 ブン!

 と音を鳴らしてウィンドウが立ち上がった。


 そこにはこう書いてあった。


【現在ダンジョンマスターが存在しません】


 それを見たリシアが操作を進めていく。

 俺には何をしているのかよく分からなかったが


「よし、これでお前の登録が出来た。とりあえず手を当ててみてくれ」


 そう言われたので俺は彼女がやっていたように石碑に手を当てようとしたその時


「グルル」

「何奴だ」


 リシアが振り向いたので俺も振り向いたのだがそこには


「ゴブリン?」

「グルル」


 流石はゴブリンの森というだけあってかそこにはゴブリンが1匹立っていた。

 その身なりは一般的なゴブリンではないようで鎧を身につけて槍を携えている。


 兵士のような見た目。

 少なくとも俺はこんなゴブリンを一般的なゴブリンとは思わないな。


「ち、近付いてきますよノルン様」


 俺の後ろに隠れるミーナ。

 どうやら歓迎はされていないようだな。


「待て翻訳魔法を使う」


 リシアが魔法を使ったその瞬間。


「魔王様。そこの人間は?」


 低く唸るような声を発していたはずのゴブリンが流暢な人語を話すようになっていた。


「私がダンジョンマスターを任せた男だ」


 そう言われゴブリンが俺を舐めるような目で見てくる。


「まだまだガキじゃないですか」

「見た目で判断すると痛い目見るかもよ?」

「抜かすじゃねぇかガキが」


 俺たちの間の空気は一気に不穏なものになる。


「何が言いたいのだゴブリン兵士長」


 リシアが問掛ける。

 その言葉を聞くにどうやらこのゴブリンは兵士長と呼ばれる階級の高いゴブリンらしい。


「魔王様。このゴブリンの森は我々ゴブリン族がお守りしてきました。それを今更このような人間に?」


 鼻で笑って俺を見るゴブリン兵士長。その顔には嘲りの表情が浮かんでいた。


「ノルンを甘く見るなよ兵士長」

「人間はしょせん人間ですよ。無能な、ね」

「ノルン様をバカにしないでください!殺しますよゴブリンさん!」


 その声に反応をしたのはミーナだった。


「ミーナ?」

「はっ……」


 そこでやっと我に帰ったような顔をするミーナ。


「ご、ごめんなさいノルン様!私のような恥ずべき存在がノルン様を語ってしまうなど……」


 自分を卑下し過ぎだろう。

 ミーナの頭を撫でてやる。


「そんなに自分を卑下しないでくれ。俺はミーナの事好きなんだからさ。そうやって言われると悲しくなる」

「ノルン様……♡」


 瞳がハートに染った気がするが気の所為だろう。

 それよりも


「はっ人間が何を言い出すかと思えば実力不足を痛感して、そんな言葉しか吐けないのだな」

「そ、そんなことありません!ノルン様は偉大な方なんです!」


 やはり反応するのはミーナ。

 いや、


「そうだから!ノルンは私を助けてくれた!私に勇気をくれた!そんな私の尊敬する凄い人の悪口言うなんて許さないから!」

「そうだから!先生は私を認めてくれた!そうやってグチグチ言うだけしかできないあんたとは違うのよ兵士長!」


 エリーもクレアもそれに続いてそんな事を言ってくれて胸が熱くなる。しかし


「けっ!どいつもこいつもそこの人間が凄いだ?!しょせんは人間なのにな。見る目のない盲目の馬鹿とアホしかいねぇのか?ここには」


 その言葉を聞いてひとつの思いが胸を過ぎる。


「ゴブリン兵士長、と言ったかな?」


 言いすぎたな。お前は。

 冷ややかな目で兵士長の目を見つめる。


 普段ならこんな事しないし不必要に場を掻き乱す事もしない。

 面倒だからな。

 でも今は違う。


 自分の中のレベルキャップを外す。

 リシアと出会ってからの俺は必要がなければ自分の上限値まで力を出すことはしない、ある程度セーブしているからだ。


「な、何だこの感じは……」


 だが今は違う。

 俺とのレベル差を感じているからか後ずさり始める兵士長。


 やがてペタリと尻もちをついてしまう。


「こ、この俺が人間如きに恐れを……?有り得ない有り得ない有り得ねぇ!この俺はゴブリン兵士長だぞ?!こんな人間に恐れを?!」


 俺は兵士長の前に立つと言葉を放つ。


「お前が俺を認められないのは分かる。俺は人間だからな。でもそれがミーナ達を馬鹿にしていい理由にはならない。ミーナに謝れよ兵士長」

「ふざけるなよ人間が!」


 起き上がる兵士長。


「こちらにはこちらのプライドがある!今までゴブリンの森を守り抜いてきたのは俺たちゴブリンだ!その森の権限を全てお前のような人間に渡すなどこの兵士長が許すとでも思っているのか?!例え魔王様が認めたとしても私は認めん!断じて認めん!」


 そうか。そういうものがあるのか。

 俺としても無理やり権限を貰ってギスギスした関係を続けたい訳でもない。


 と思っていたのだが


「ノルン。放っておけ。私が譲ると言ったのだ。言わせておけば」


 リシアはそう言っているが


「いや、俺は兵士長に認めてもらうよ」

「なっ、そんな面倒な事する必要ないだろ?!」


 リシアが何やら言っているが兵士長に声をかける。


「お前に認めてもらうにはどうしたらいい?」

「竜王の宝玉……それを俺に持ってきてくれ。そうすればお前をマスターとして認める」


 そう言ってニヤリと笑う兵士長。


「りゅ、竜王の宝玉だ、と?バカを言うなよ?!お前!」


 本気で驚いているリシアの顔があった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ