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4 決着と魔王城

「ごめん。ノルンに言われてやっと抜ける決心できた」


 エリーが俺に謝ってきた。


「いや、謝るのは俺の方だろう。俺こそ俺が抜ける時に一緒に誘うべきだった」


 そう言ってから俺は彼女の目をもう一度見た。


「それより良かったのか?俺の方を選んで」

「うん。どんな結末だってノルンの横にいられるならそれでいいよ」

「ふっ、俺はお前と幼馴染なら良かったのにな」


 そう笑ってから草原に向かうことにした。


「勝算は?ない、よね……」


 俯くエリー。

 

「ないよ。嫌ならセシルの元に向かうといい」

「いや、戻らないよ。私ノルンの事好きだから。でも、もっと長く一緒にいたかったかな」


 そう言って微笑む彼女。

 試すような真似をしてしまったが、勝算なんて関係なく俺の横にいることを選んでくれたらしい。


 全て話すのは終わってからでいいだろう。



「よう。逃げずに来たみたいだなノルン」


 約束通り草原で待っていたらやってきたセシル達。

 全員フル装備だ。


「ぷっ、あははは。お前何だよその軽装。殺されてぇのか?」


 俺のやる気のない装備を見てか笑うセシル。


「やめてあげてください。装備も買えないのでしょう」

「そうだそうだ。稼ぎもないから装備も変えないんだろう」


 そんなことを言い合って俺を笑うセシル達。

 

「んじゃ、遠慮なく、ぶっ殺してやるぜ!」


 セシルが剣を抜いて走ってくる。


「ウィンド」


 風魔法を使った。

 ウィンド風を起こし対象を空に巻き上げる技だ。


 それで吹き飛ぶ勇者セシル。


「がはっ!」


 地面に叩き付けられたセシルがそう漏らして俺を見つめる。


「な、何だ今の……」

「何って風魔法だ」

「お前……レベル5の癖に魔法が使えるわけないだろ?!」

「残念」


 俺がそう呟いた時


「セシルに何を!!!」

「いきますわよ!!!」


 後ろに控えていたパーティメンバー達が叫んで俺に向かってくる。

 剣聖のエルザと賢者のメリーだった。


 しかし


「頭の悪い奴らだな。性格が悪ければ頭も悪いのか?」


 パチン!!

 指を鳴らしてウィンドを使う。


 風が吹き荒れて勇者パーティが上空に巻き上がってからやがて


「ぐはっ!」

「きゃっ!!」


 地面に叩き付けられる勇者パーティ達。

 セシル以外はローザも含めて気絶していた。


「ひ、ひぃいいぃぃ……」


 俺を見て芋虫のような体で後ずさるセシル。

 その横顔を踏みつける。


 実に爽快だな。


「土の味はどうだ?美味いか?」


 地面に顔を押し付ける様にぐりぐりと踏みつける。 


「な、何なんだお前……わ、悪かったってノルン」

「58」


 会話をせず呟いた。


「なんの数字か分かるか?」

「わ、分からねぇよ!」

「俺のレベルだ」

「なっ……」


 絶句するセシルに告げる。


「お前はレベル5だろ……」

「いや、違う今の俺は58だ」


 そう答えてから手のひらをセシルの顔に向けた。


「や、やめてくれ……お、俺は勇者なんだ……」

「へー」

「なっ、何なんだ?俺に恨みでもあるのか?!」

「無いわけないだろ?俺から何もかも奪ったお前に俺の何が分かる?」

「た、頼む!悪かった!許してくれ!」


 セシルがそう言うとミーナが俺の横に立った。

 そして可愛いけど邪悪な顔で口を開いた。


「くすくす惨めですね勇者さん?それに貴方を許せですって?冗談も顔だけにしてくださいよ。ノルン様に貴方を許す必要があるんですか?でも、ノルン様はお優しいので許してくださるかもしれませんね」

「た、頼むノルン……許してくれ……悪かった。追放したのがそんなに気に障ったのなら謝る、俺たちのパーティに戻ってきて……下さい」

「ははは。誰が戻るかよ」


 笑ってから魔法ウィンドでもう一度吹き飛ばす。


「ギャァァァァ!!!!!!」


 吹き飛ばして地面に叩きつけられて倒れるセシル。

 それを見てから俺は歩き始める。


 とどめを刺したい気持ちもあったがここまで戦力差があると殺す価値もないように感じられたし、やり直すチャンスをやろうと思った。


 こいつがくれなかったチャンスを俺はこいつにやろうと思った。

 でも、また向かってくるというならその時は殺すつもりだ。


「凄いですね!ノルン様!今日もかっこよかったです!」

「そうか?」

「そうですよ!」


 楽しそうに付いてくる彼女とは別にエリーも嬉しそうな顔をしていた。


「どうしたの?あのすごい魔法」

「レベルが上がったから覚えたんだよ」


 そう答えて俺はエリーも連れて約束した場所に向かうことにした。

 リシアと落ち合う約束をしているのだ。



 俺達はリシアに案内されて魔王城までやってきた。


「ぬはは、ここが魔王城なのだ。ところで横の小娘は何だ」


 リシアが魔王城に付くと俺の横にいたエリーについて訊ねた。

 

「新しい仲間だ」

「そうか。まぁ、何でも構わないが」


 そう口にして彼女は俺に魔王城を案内してくれた。


「この部屋を貴様にやろう。これが鍵だ」


 俺に鍵を渡してくるので受け取った。


「何でここまでしてくれるんだ?俺はあんたの敵だったんだぞ」


 そうまで言った時


「確かにそうだな。魔王様よ。何でその人間にそこまでするんだ」


 後ろから女が歩いてくる。


「私にはそこまでしてやる程の男には思えんが」


 そう言って俺の全身を舐めるような目で見てくる女。


「エルフはともかく人間と獣人などしょせんは劣等種。今すぐにでも追放すべきだろう」


 そう言って女は俺の前に立つと自分の持つ剣の柄に手をかけた。


「私と決闘しろ人間。その力魔王様の役に立つか見定めてやろう」

「いきなり絡んできて見定める、だとか決闘だ!とか何なんだあんた」


 目を細めて女を見た。

 すると


「なっ!そこは決闘を受けるところだろう?!」


 何故か恥ずかしそうに顔を赤くする女。

 今までクールな女だなと思っていたがもう台無しだ。


「きぃぃぃぃ!!!ムカつくーーーー!!!いつもバカにされるから、こいつの前でくらいカッコつけたかったのにもう台無しなんですけどぉ?!!!!」

「慣れないことはするべきではない、ということだな。クレア」


 どうやらこの女はクレアというらしい。


「このカッコつけで残念なのがクレアだな、分かった」

「カッコつけとか残念とか言うな!私はカッコイイのだ!」


 やめろ。

 そんなに必死になるな。

 残念さが増すじゃないか。


「とにかく決闘だ!私が勝ったら出ていけ!私が負けても出ていけ!」


 ビシッと俺に人差し指と決闘を突きつけてきた。

 しかもめちゃくちゃな条件付きだ。


「そうだな!夜になるまでには中庭に来い!来なかったらお前の負けだからなバーカ!お前が負けたら、たとえ魔王様が許しても夜中にお前の部屋の前バタバタ走り回る嫌がらせ毎晩してやるからな!必ず来るんだぞ!!!」


 言いたいことだけ言ってバタバタ足を鳴らしてどこかへ向かったクレア。

 それを見て溜息を吐くリシア。


「仕方ない。あのアホを黙らせようか」


 リシアにそう言われたので頷いた。

 どうやら面倒なことに巻き込まれたらしい。


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― 新着の感想 ―
[一言] あれーーーーーー!? ざまぁした筈なのに最後に出てきたおねーさん? の方に全部持ってかれたぞ
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