21 テレポートが使えないからジャンプしたら移動技じゃないと言われた
次の日俺は相変わらずマスタールームでのんびりしていた。
人間は攻めてこないし敵も来ないし争いもない。
平和な日常を謳歌していたのだが、それも束の間、来訪者があったのだ。
「マスター。ルエナ達がきたようです。場所は新しく出来たフロアですね」
システィナにそう言われウィンドウに目をやる。
そこに映っていたのはルエナ達の他に大勢の人の子だ。
年はバラバラ。
小さい子もいれば俺と変わらない歳の人もいる。
「仕方ないな。システィナ、同行してくれるか」
「畏まりました。マスター様のためならばこのシスティナ何処までもお供しましょう」
よし、マスター権限を使おうか。
ウィンドウが開く。
【どれを使用しますか?】
→テレポート
・ダンジョン編成
【何処に移動しますか?】
→工房フロア
・居住区
・ダークエルフの森
・ゴブリンの森
「むっ」
「どうしましたか?マスター」
「テレポート出来ないな」
たまにあるのだ。
テレポート不可能な場所が。
仕方ない。
「ま、マスターどうしますか?とりあえず近くのフロアにテレポートしますか?」
「いや、直接跳ぶ」
「ど、どうするのですか?テレポート出来ませんよ?」
「ん?だから跳ぶんだよ」
「え、ですからテレポートできませんよ?」
微妙に話が噛み合っていない気がするが、困惑しているシスティナの手を取る。
「ま、マスター?!な、何を?!穢れた私の手を取るなどと御身がお汚れしてしまいますよ?!」
「大丈夫だよ?システィナは綺麗だよ」
「き、綺麗……ぷしゅー」
彼女は顔を赤くして気絶した。
「し、システィナ?!」
急に気絶するな?!
な、何故このタイミングで気絶?!
剣の腕前は世界一と言えるほどなのにどうして。
そういうところで気絶するのはポンコツ過ぎないか?!
「あぁ、もう。とにかくルエナを待たせている。さっさと跳ぶか」
スキルウィンドウからジャンプを選んだ。
【落下位置などの設定を行ってください】
目の前に地図のウィンドウが表示される。
地図上に表示されるのは、ダンジョンを覆うほどの円でそれに囲まれている範囲が俺のジャンプできる範囲内。
そこには
「ここだな」
当然ルエナ達のいる場所も含まれていて。
そこを落下位置として設定。
「跳ぶか」
◇
俺はルエナが見え始めると技のキャンセルを行い。
姿勢を帰るとそのまま緩やかに着地した。
気絶していたシスティナは抱き抱えて飛んできたが視線を下げると
「ま、マスター?」
俺の腕の中で見上げているシスティナの顔。
目覚めたらしいな。
「着いたぞ」
「つ、着きましたか?」
そう言って彼女は周りを見る。
その時ルエナが口を開いた。
「ノルンが上から……降ってきました……?」
「ん?ジャンプ使ったからね」
ジャンプは1度跳び上がってから落下する技だ。
だから当然上から下に落ちる。
「ジャ、ジャンプを使用したのですか?」
首を傾げるシスティナ。
「ん?テレポートは使えなかったけどジャンプならいけたからね。それがどうしたの?」
「じゃ、ジャンプって攻撃技ですよ?」
「うん。それは知ってるけど」
「移動技じゃないんですよ?あそこからここまで何百キロメートル離れてるとお思いなのですか?」
震える口でそう呟いたシスティナ。
「いや、知らないけど」
「普通の竜騎士がジャンプして移動しようと思っても何日もかかる距離ですよ?!」
「ん?そうなの?」
「だってジャンプには長いクールタイムが存在しますよね?!そうポンポン使ってたらここぞという場面に使えなくなりますよ?!」
「ご、ごめん」
そうなのか。ならあんまり使わない方がいいのかもしれない。
「あ、謝らないで下さいマスター!怒っているわけではありませんし私にはマスターを怒る権利なんてありませんから。でも、次からは少し使用は控えていただけると助かります」
「分かった」
そう言いながらクールタイムの確認のためにウィンドウを開いた。
【どの技を使いますか?】
→ジャンプ
・ウィンド
あれ、ジャンプ選べそうだけど、やっぱり選べないのかな?どうなんだろう。
とりあえず選んでみようか
「い、いいですかマスター。私達にとってマスターは大切なお方なのです。そうやって無闇にジャンプを使っていざと言う時に使えないと取り返しの付かないことに……って、何をなさっているのですか?マスター」
「え?落下位置選んでるんだけど」
「え?」
システィナがそう返事をした瞬間俺は同じ位置を設定してジャンプした。
技発動後キャンセルをして着地する。
「あれ?クールタイムなんてなくない?それとももうクールタイム終わってたのかな?」
もう1回試しておこう。
自分の技だしクールタイムの把握もしておこう。
また跳べた。
着地したらシスティナが目を丸くして俺を見ていたので聞いてみる。
「キャンセルしたらクールタイムなくなるのかな?」
「キャンセルしてもクールタイムはなくなりませんよ?!逆にどうしてクールタイムないんですか?!」
「え?どうしてだろう?」
「はっ!もしや」
何かに気付いたような顔をするシスティナ。
「1人だけクールタイムがない。やはりマスターは神様なのでは?」
そう呟いてブツブツ言い始めるシスティナ。
いくら呼び掛けても反応を示さない。
仕方ない、ルエナと話そうか。
「ルエナ、よく来てくれたね」
「え、えぇ……まぁ……それでこの子達が今日連れてきた子達です」
彼女が後ろに手をやった。
そこには何人もの人々。
全員若い人達だったが殆ど子供だ。
俺はその子達に近寄って挨拶する。
「よく来てくれたね、俺はノルン。よろしく」
そう言ってみたが誰も言葉を発さない。
だが、暫く見ていたら会話を始めた。
「か、神様ってこの人だよね?」
「そ、そうだよ!この人が神様だよ!」
「見た?さっきの?びゅーんって空から降ってきたよ」
「私達神様の国で暮らせるんだってみんなに自慢できるよ!」
なんて会話を初めた。
俺また神様扱いされてないか?
なんて思っていたらルエナが苦笑いしてやってくる。
「ま、まぁ皆ノルンとは初めて会って緊張してるみたいですけど、これからよろしくお願いしますねノルン」
「うん。よろしく」
さて、俺のダンジョンをこの子達に案内しようか。
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