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2 女魔王との出会いとチートレベリング

「悪いが物は売れない。帰ってくれ」


 果物を買おうと露店に向かったら店主にそう言われた。


「勇者のセシル様が戻ってきたのはお前がやらかしたせいなんだろ?戦犯」

「え?」

「聞いてるぜ。セシル様が今更こんな始まりの町に戻ってきたのは魔王に強制的に転移させられたからって、それでその負け筋を作ってのはお前だって」

「何のことだ?」

「んな戦犯に物は売れねぇって言ってんだよ」


 訳の分からないことを言われて何も買わせてくれなかった。

 そしてそれはどの店もそうだった。


 どうやら話を聞くと魔王に負けた俺たちはこの街に戻された。

 そしてその敗因になった俺は言わば戦犯。


 そんな役立たずに売るものは何も無いということらしい。


 小さく笑うことしか出来なかった。

 もう何処にも居場所はないようだ。


 もうこの街に用はないしいる意味もない。

 とにかく町を出てみるか。


「そう言えば近くに四天王の城があるって聞いたな」


 四天王の中で最強格のいる城がこの近くにあるという噂を聞いていた。


「スキルが外れだとこんなにも惨めなのかよ。世の中クソだな」


 小さく笑ってからそっちに向かうことにした。

 もうどうにでもなれ。




「開いてないじゃねぇかよ」


 せっかくここまできたのに城に繋がる城門は開いていなかった。

 鍵がかかっていたので諦めてその横に座ることにした。


 そのうち誰か通りがかるだろう。

 魔物に食われてもいい。


 そんなことを思ってそうしていたら


「何奴だ」


 声が聞こえた。

 そちらに目をやると


 長い金色の髪の毛をツインテールにして王冠を被って綺麗な服装に身を包んだ少女がいた。


「あんたこそ何者だよ。四天王って奴か?」

「お前、人間だな?」


 質問に答えてはくれなかったが頷く。


「貴様ここで何をしている。魔王領だぞ?」

「何だっていいだろ。あんたは何者なんだ?」


 別に何者だっていいが、そう思いながら槍を横に投げ捨てた。

 どのみち魔王領にこれだけ堂々といるのなら魔王軍関係者だろうし。


「むっ、何故捨てる」

「必要ないからだ」


 そう言ってからまた口を開いた。


「勇者は今始まりの町にいる」

「何故それを私に伝える」

「もう俺には必要ない情報だ」


 少女に目を向けた。


「殺してくれ」

「やだ」

「は?」

「動かない敵を殺して何になる。それとまだ質問に答えていなかったな。私は魔王だ」

「そうか」

「驚かないのだな」

「あんたが何者かなんてどうだっていいからな。俺を殺してくれるならなんだっていい。もう帰る場所なんかないんだから」


 自称魔王様は急に悲しそうな顔をする。


「何があったのだ?私でいいなら話聞くぞ?」


 優しさに触れて俺は涙を流しながら今までの事を話した。

 すると


「酷い奴らだな」


 どうやら同情してくれているらしい。

 そうして魔王は口元を歪めた。


「だが、貴様中々面白いスキルを持っているな。経験値増加、か。見たことの無いものだ、ユニークスキル、か」

「使い物にならないものだ。増加量は1で固定だからな」

「本当にそうか?私が少し鍛えてやろう」


 そう言うと魔王はアイテムポーチから何かを取り出すと俺に渡した。

 ポーションのようなものだった。


「とりあえず飲むといい」


 言われた通り飲むと俺のスキルのレベルがそれだけで30に上がった。

 先ほどまでレベル1だったのにだ。 


 これだけでも驚くことだった。


「槍を持て。こうやって頭上に横に掲げていればよい」


 俺は魔王のやってくれた通りに槍を持ってみた。

 すると何度も何度も俺の槍に剣を軽く振り下ろしてくる魔王。


 その度に何度も何度も弾かれてくれている。

 しかし驚くのはそこじゃなかった。


「何だこれ」

「ふっ」


 笑う魔王。

 だがそれは視界に入らずに別のものが視界に入った。


 今までに見たことのないものがあった。


【合計取得経験値6000。ガード成功300経験値ボーナス5700】


 そして


【レベルが上がりました31】

【レベルが上がりました32】

【レベルが上がりました33】


 というふうに俺のレベルがグングン上がっていた。

 このレベルはセシル達とほぼ同じだった。


 短時間でここまでのレベルになれるなんて信じられないと思いつつ魔王に目をやる。


「私の顔に何か付いているか?」

「いや、違、何だこの経験値」

「経験値を稼ぐ手段は幾つかある。敵を倒すのもそうだが、ガード成功でも入る。今のはそれだ。それから、お前のユニークスキルはスキルレベルが上がるとそれに伴ってボーナスの経験値量も上がるようだ」

「知らなかった」


 魔王の顔を見ると俺に手を差し出してきた。


「立つといい」


 俺が頷いてその手を取るとグイッと引っ張って立たせてくれた。


「私はリシア。貴様、名は?」

「ノルンだ」

「私と来ないか?ノルン」

「え?」

「貴様の話を聞いて思った。仲間にもこんな仕打ちができる人間はやはり生かしてはおけないということに。一緒にこの世界を変えようじゃないか」


 そう言って笑いかけてくるリシア。

 その笑顔は誰のものよりも純粋で綺麗で、俺は気付いたら片膝を着いていた。


「リシア、俺はあなたと共にいこう」

「うむ。よろしく頼むノルン」


 そう言って笑うリシアは今までに見たことの無い綺麗な顔だった。



 俺はリシアに同行して始まりの草原を歩いていた。


「むっ」

「どうしたんだリシア」

「あれを見よ」


 彼女の指さす先そこには


「あの馬車。エルフを運んでいる」


 遠く夜で視界の悪い中彼女はそう断言した。


「この距離から見えるのか?」

「魔法だ」


 そう言ってから彼女は俺を見た。


「竜騎士と聞いた。今のお前ならあの程度の賊仕留められるのではないか?」

「俺が?」


 俺はスライムすら時間をかけてようやく倒せるかどうかという人間だった。

 そんな俺が、盗賊を相手に?


「期待している」


 そう言って俺を見てくるリシア。

 そうだな。この人の期待には応えなくてはいけないな。


 そう思いとりあえず竜騎士の使える技、ジャンプを使ってみることにした。

 ジャンプは空に飛び上がり高空から地上に向かって落下して攻撃する技だ。


 俺はしゃがみ込み右手に槍を持つと跳躍力を溜めた。

 そして跳んだ。


 馬車の進行方向を予想して通るだろう場所に遥か上空から落下した。

 ドカン!地面に槍を突き刺すと起こる衝撃で


「な、何だ?!ぐあぁぁぁ!!!!」


 盗賊と馬車が弾け飛んだ。

 同時に破壊される馬車から1つの檻が宙にに放り出されたので


「よっ」


 俺は直ぐに体を動かしてその檻を掴むと優しく地面に下ろした。

 その中には


「……」


 ポカーンと口を開けて俺を信じられないものを見るような目で見る黒髪の少女の姿があった。

 やっと口を開いたかと思ったら


「か、神様ですか?!」


 思わず周りに目をやった。

 神様なんてどこにいるんだろうか。

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