表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/21

16 その痛さ四天王級

 勇者を始末した翌日、いつも通りダンジョンの奥でダンジョンの管理をしていた。

 その横には魔王のリシアがいる。


「推奨レベルがまた上がっている……今度は75だと……?」

「それってやっぱり低すぎるんだよな?頑張ってるんだけど中々上がらないんだよね」


 俺の現在のレベルが99だ。

 それを考えるならダンジョンのレベルは低い気がする。


「え?」


 俺の反応にポカーンとするリシア。


「ん?俺何か変なこと言ったか?」

「言ったぞ!お前自分でこのダンジョンがどの程度のレベルなのか分からないのか?!」


 今度は一気にそうまくしたてて来る。

 しかし俺にはやはりどういう意味なのか分からない。


「あのなぁ。このダンジョンの難易度はラストダンジョンを超えてるぞ?」

「そうなのか?」

「私が育てたラストダンジョンは攻略推奨レベル58だ。ノルンのはそれを遥かに凌いでいるのだ」


 呆れたような顔をしているリシア。

 そうだったのか。


「お前やはり天才なのではないか?普通こんなに上がらないぞ?」

「そんな訳ないよ。俺は凡人だ」


 作業を切り上げる。

 この調子なら今日中に推奨レベルとやらは80までいけそうだ。


 そんなことを思っていたら


「た、大変です!ノルン様!」


 ミーナがバタバタと足音を鳴らして俺の近くにやってきた。


「どうした?」

「そ、それがクレア様が!」


 そう言われて今日はクレアを見ていないのを思い出す。

 いつもなら俺の周囲で遊んでいるけど。


「クレアがどうかしたのか?」


 俺はリシアに顔を向けた。

 何か知っているのかもしれないと思って、だ。


「何があったのだ?案内せよ」


 だがどうやら彼女も知らないらしい。


「はい!」


 ミーナが案内してくれるようだしついて行こうか。



 俺達はミーナに案内されて魔王城の庭園までやってきていた。

 俺たちの視界に入ったのは驚くべき光景だった。


「くっくっく……ふははは、この程度かクレア。私に挑んできたのだ。もう少し楽しませてくれると思ったのだが」

「うぅ……」


 そこには黒髪を腰まで伸ばした見知らぬ女と倒れているクレアの姿があった。

 どうやら戦っていたらしいが。


 あのクレアが怪我は少ないが踏みつけられていて、女の方は無傷だった。


「おや、魔王様お戻りになられたのですね」


 その女は魔王に目を向けるとそう口にした。

 どうやら知り合いらしい。


「貴様、何をしている」


 答えるリシアの声はいつもより低いものだ。


「何も。クレアが挑んできたので挑戦を受けたまでですよ。こうやってね」


 女がクレアの背中に乗せたままの足に力を入れる。


「いだっ!」

「やめろ」


 俺は考える前にそう口にしていた。

 ふっと笑って女は俺を見る。


「やめろ?悪いがこれはこいつが望んだことだ。私と戦いなさい!そう言ったのはこいつだ、邪魔をするな。これは穢されてはならない聖戦(ジハード)


 また力を入れようとしていたからクレアから引きはがす。


「結果は出てるだろ。お前の勝ちだ」

「ふっ、くだらんな。オプティマスのリジェクト計画では最優先だとは聞いたがダメだな」


 一瞬にして?で頭が埋まった。

 こ、こいつは何を言ってるんだ?


 人語ではない何かを口にしながら女は俺から離れると口を開く。


「正式な聖戦(ジハード)だ。邪魔をするな余所者」

「余所者ではない」

「どちらにせよ、人間などしょせん私たち魔族には到底及ばぬ劣等種。あまり口出ししないで欲しいが」


 そこでクレアがようやく口を開いた。


「せ、先生、やめて。私が悪いだけ、だから」

「いや、見過ごせない」


 そう言って俺は女に目をやった。


「お仲間ごっこ、か?魔王様が気に入る奴だと聞いていたがつまらない奴だ」

「口を慎めミリオーネ」


 リシアがミリオーネと呼んだ女をそう窘めるが。


「事実を言っている迄ですよリシア様」


 そう言うとミリオーネは剣を俺に向けた。


「くくくく、ふははは!私は魔王軍四天王の1人ミリオーネ、又の名を【神を殺す者】。何か言いたいことがあるのならば実力を示せ。まさか逃げるような腰抜けではあるまいな?」


 さっきから何を言っているのか一切理解できないところもあるが、言いたいことは何となく分かる。


「分かった。受けて立とう」

「せ、先生!ミリオーネの挑発に乗らないで!」


 クレアが何やら言ってくるが無視して話を続ける。


「その代わり約束しろ。俺が勝てばクレアに謝れ」

「ふん。くだらんがいいだろう。しかしお前が負けた場合はどうする?」

「お前の言うことを聞いてやる」

「その言葉忘れるなよ?闘技場へ来い。来なければ敗北と見なす。もっとも来たとしても私がお前に負けるとは到底思えないがな」


 彼女はくくくと笑って振り返るも


「ぎゃっ!!」


 ビターン!

 小石に躓いて盛大に転けていた。


「はっ……さてはこれは……私の暗殺計画が……?」


 そんな意味の分からないことを言ってどこかへ行ってしまったミリオーネ。

 それを見てからリシアに目をやった。


「すまないな。関係を悪くしてしまったかもしれない」

「いや、気にするな。それより今この状況で、慌てもせず私とあいつの関係の心配をするとはお前はやはりすごいな」


 彼女が歩き始める。


「どこへ?」

「闘技場だ」


 彼女に頷いてついて行く。

 その道中で彼女は言葉を発した。


「相手は四天王の1人だ。この間のクレアのようには行かないだろう。どう戦うつもりだ」

「特に考えていないけど」


 そう答えると目をまん丸にするリシア。


「か、考えてない?!考え無しに戦うつもりか?!」

「いや、だっていきなり決闘申し込まれたところだし」


 これが1週間前に告知されていた、とかなら考えようもあるけどいきなりのことで何も考えていない。

 クレアの時だってそうだったし。


「だからどうなるかなんて分からない。でもそれは向こうも同じだろ?」

「それはそうだが……」


 何だか煮え切らないような顔をする彼女。

 

「でも、何とかなるさ。リシアの顔に泥は塗らない。任せてくれ。言動から強さを感じるけど」


 何か凄い自信を感じる言動だった。

 そう思っていたらクレアが口を開く。


「き、気をつけて先生。お姉ちゃんは強いよ」

「ん?お姉ちゃん?」

「あぁ、あいつはクレアの姉だ」


 リシアがそう続けて


「ちなみにあの言動は強いからやっているわけではない。カッコイイと思ってやっている厨二病なだけだ。だからお前が勝って治してやってくれ」


 お前ら姉妹は俺と初めて会った時残念でないといけない決まりでもあるのか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 残念なうえにドジッ子♪何もしなくて勝てそうです!
[良い点] 話のテンポが良くて、読みやすいです。 一気に読んでしまいましたw なかなか個性的なキャラですよね。面白いです。 [一言] 前話で勇者殺されてますが、他のメンバーの今後とか書くんでしょうか。…
[良い点] 中二病姉妹(草 うけるー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ