15 勇者パーティの結末
修正はサブタイトルの変更のみです
俺はただセシルに向かって口を開いた。
「久しぶりだなセシル」
「なっ……ノルン……」
鼻で笑って答える。
「見逃してやった命わざわざ捨てに来たか」
「頼む。フリーならパーティに戻ってくれ。悪かった!俺達にはお前が必要なんだ!」
「戻るわけないだろ?」
そう言って俺はアイテムポーチから水を取り出すとそれをセシルの頭に振りかけた。
びしょ濡れになるセシル。
「き、貴様!」
急に飛びかかって来ようとしたセシル。
しかし
「「「ノルン様!」」」
ゴブリン達がセシルを一斉に取り押さえる。
「がはっ!」
地面に組み伏せられてその衝撃で呻くセシル。
「恥を知りなさい賊。主の御前でその傲慢な振る舞い。死をもって償うべき重罪です」
システィナがセシルの首元に剣の先を突きつける。
「は、離せ!雑魚ども!」
喚くセシルを見下ろして告げる。
「汚れは水で取れて綺麗になるがお前の汚い性格は綺麗にならないらしい。残念だ。俺はただ水でお前の心を綺麗にしてやろうと思っただけなのだが」
「ノルン!貴様!」
「残念だ。口の悪さも綺麗にはならないんだなもっと水をかければどうなるか」
俺はそう言い水をかけ続ける。
「き、貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺に掴みかかろうとするがビクともしない。
「ちっ!ゴブリン如きが何でこんなに強いんだ?!雑魚モンスターだっただろ?!」
「ノルン様は貴様とは違って我々一人一人を大切にしてくれた。そしてレベルを上げてくださったのだ。貴様如きに遅れは取らん」
「くそぉぉぉぉぉ!!!!」
叫ぶセシルを見て1人のゴブリンが口を開いた。
「ノルン様、この男をどうしましょう?」
「ふむ。殺そうか。何時までも目の前をコバエに飛ばれるのはうざいからな。誤って切ってしまってはいけない。みんなは離れてくれ」
「こ、コバエ……?」
ゴブリンにセシルから離れさせて持っていた槍を取り出すとセシルの首に向けた。
だがシスティナが先に地に膝を着く。
「私にお任せをマスター。マスターがこのような穢れた雑魚を相手にお手を煩わせる必要はございません」
彼女が剣を抜いた。
「じょ、冗談だろ?!ノルン!俺たち仲間だったじゃないか!」
「そのマスターを先に裏切ったのはどこのどいつですか?私は貴方を許さない。マスターは私に色んなものを授けてくれました。そんな主に敵対する貴方は特に生かしておくわけにはいけません。お覚悟を。主を冒涜した罪の重さを知りなさい」
その言葉に答えたのは俺ではなくシスティナ。
「ま、待ってくれ!」
システィナに目をやった。
彼女が手を下そうとしたその時
「ひ、ひぃぃぃ!!!!」
セシルが逃げる。
その逃げるセシルを槍を投げて殺そうとしたその瞬間だった。
「待ってください!ノルン様!」
新たに聞き覚えのある声が聞こえる。
そちらに目をやると俺に物を売らなかった店主が立っていた。
その周りには始まりの町の住人達。
「た、助けに来たのか?!お前たち!」
叫びながら彼らの近くに向かったセシル。
そんなセシルを見て町の人達はニカッと笑う。
「あぁ!お前を殺しに来たぜ!」
「はっ……?」
一気に絶望の顔を作ったセシルが口を開いて呆然とする。
「な、何を言ってるんだお前……」
「ん?何って殺しに来たんだよ」
店主の後に続いて町人達が口を開いた。
「この野郎!!!!くそ勇者が!!!!お前のせいで俺たちは大変なんだぞ!!!」
「そうだ!お前がノルンさんを追放するから国中に影響が出てるんだぞ?!!!分かっているのか?!!」
「ぶっ殺してやる!こい!くそ勇者が!」
そう叫ぶ町人達。
別に俺は今はそこまで殺したいとは思わないしシスティナに手を汚させるのも出来れば避けたかった。
ならばこれは都合がいいか。
「あ、あがっ……」
涙を流しながら言葉を漏らすセシル。
そこからは一方的だった。
「このクソ野郎が!」
「お前のせいで!お前のせいで!ノルン様は町から去った!!ノルン様に代わって貴様をこの世から追放してやる!!!」
ドカッ!バキッ!ザクッ!!
殴ったり蹴ったり持っていた農具で刺したり。
それを見ていたシスティナが口にした。
「随分嫌われていたみたいですね。あれだけ嫌われていたのなら全て自業自得ですよ。ざまぁみろですよ」
そしてセシルは最後には殴り殺されていた。
そんな様子を終わるまで見ていたら
「申し訳ございませんでした!ノルン様!」
町人達はそう俺に謝罪して帰っていった。
気乗りはしなかったが元から殺すつもりだったし手間が省けたな。
「ファイア」
システィナがファイアでセシルの遺体を燃やす。
それを見ながらローザを含む残りの気絶している元勇者パーティをどうするべきか考える。
このようなゴミはいらないから持ち帰ってほしかったのだがな。
不法投棄しないでほしい。
仕方ない。使い道も思い浮かばないしゴブリンの玩具にでもするか。
何よりも、システィナの顔を見る。
「システィナの手が汚れなくて良かった」
「ま、マスター?!私のような者の穢れを考えて下さったのですか?」
「まぁね。女の子に殺しはできるだけさせたくないし」
「ま、マスター//////」
顔を赤らめるシスティナ。
「ど、どうしたの?し、システィナ?!」
「ぷしゅー」
そんな音を鳴らして倒れてからそれきり応答しなくなったシスティナだった。
それにしても危なかった。
もう少し俺の反応が送れていたら倒れるシスティナの後頭部が地面に当たっていたな。
◇
マスタールームに戻るとリシアがそこで待っていた。
「凄いなノルン」
俺に声をかけてきた。
「何が?」
「勇者をあんなに一方的に倒したことだよ」
満足そうな顔をしてそう答えてくれた彼女。
「そうか?」
俺は特に何もしていないので特に実感は湧かないがそうなのだろうか。
「あぁ。ゴブリン達を連れて勇者を倒すなど並のやつにできることでは無い。お前はやはり天才なのではないか?」
「そんなことはないよ」
俺は平凡以下だ。
天才と呼ばれるような人間じゃない。
才能は全て弟に奪われたのだから。
いつもあいつと比べられて何をやっても罵倒されて、だから俺は今でも自分の行動に自信が持てない。
とりあえずリシアに目をやった。
「今日は色々あって疲れただろう?私はもう帰ることにする。だから休んでおけ」
リシアの気遣いで別れることになった。
そんなリシアを見送ってから
「魔王様も言ってましたけど凄かったですよ!ノルン様!流石ですよ!」
ミーナがそう言ってくれた。
「いや、俺なんかまだだよ」
「またまたぁ謙遜しちゃって」
それを聞いたエリーが俺の右腕に抱きついてきた。
「先生!私は感動しましたよ!」
次にクレアが俺の左腕に抱きついてくる。
「あーずるいですー!ノルン様のお嫁さんは私なんですから!」
すると今度はミーナが俺の前から抱きついてくる。
それを聞いた2人が顔を俺に向けてくる。
「えー?!!私だから!!!」
「先生?!お嫁さんは私だよね?!」
やれやれ……3人とも引き下がりそうにないな。
これは話を片付けるのに時間がかかりそうだ。