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わたしとその男の子【5】

 新クラスになってからはしばらく名簿順で席に座り、それから最初の席替えでわたしと彼は隣の席になった。


 えっ?いきなり?

 しかも教室の前から向かって右側の一番奥。漫画みたいな展開だ。ちょっと出来過ぎじゃない?


 そうは言ってももちろん彼が話しかけてくるということはない。

 いつも一人で本を読んでいることが多い。

 まあこれはなんとなく予想できたことだ。結局わたしが話しかけるしかない。


 でもここで問題が発生する。そもそもわたしも、そういうのが得意な人ではないのだ。

 ちょっと変わった事情があって頻繁に学校を休むからか、わたしには友達がいない。

 むしろ逆にそれを言い訳に誤魔化しているとも言えるけど。


 元々あまり人当たりの良さそうな雰囲気は出せていないのだけれど、最近は名前だけ有名になってきてしまっているせいで益々話しかけられることは少なくなっていた。


 それに対し視線の方は常に感じている。男の子からも、女の子からも。

 その意味は全然違うけれど。


 突然つっかかって来る女の子がたまにいる。このクラスだと秋野さんとか。

 わたし間違いなく彼女に何もしていないのにどうしてだろうと思ったけれど、少し経ってわかった。


 この前珍しくわたしに話しかけてきたあのクラスのリーダーみたいな男の子か。

 あの子はみんなに対してあんな感じなんじゃないの。知らないけど。

 わたしに攻撃してる暇があったら素直に彼に甘えてた方がいいと思うよ。まあそういう可愛い理由なら多少は大目に見るけれど、わたしが良くても向こうは友達にはなりたくないんだろうな。


 そんな感じだから、はるひ君に声をかけるのは少しためらわれた。

 わたしが下手に彼に話しかけるようなことがあったら、教室中の注目がわたし達に集まりそうで。


 何となく気まずいまま日々はズルズルと過ぎてしまったけれど、話しかける絶好の日がやってくる。


 案の定、彼は一人で当番の仕事をてきぱきと片付けていってしまった。

 そこでわたしは日誌だけはなんとか確保し、これを書きながら教室で彼のことを待っていることにした。


 彼が教室に帰ってきた。椅子に座って帰らないでじっとしている。

 たぶんわたしの方を見ているけれど、何も言ってこない。


 あれ?この後どうすればいいんだろう?

 これよく考えたらわたしの方から話しかけたらたぶんちょっとおかしいよね?

 どうしよう、書き終わっちゃった。


 仕方がないので日誌を閉じて片付けながら次の一手を考える。

 頭の中はすでにぐちゃぐちゃになっている。


「ありがとう…。」

 

 彼のお礼の言葉。あぁ、何か言わなくちゃ。

 …そうだっ。

 

 追い込まれたわたしは、自分の中から特殊な選択肢を見つけ出す。


「…何言ってるの?」


 わたしのよく知っている女の子を頼るのだ。



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