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 フォルティナは目の前で繰り広げられている光景に既視感を覚えながら、溜息をついた。

 ここは花街の入口。フォルティナは習慣としている自主的な巡回を終え、出てきたところだった。

「離して!!」

 男3人に囲まれている女性の声が耳に届く。男たちの間から垣間見えるワンピースは街灯の明かりの下でも上質なモノであることが窺える光沢を放っていた。

「こんなところに立ってるなんて、客を探してたんだろう?」

「随分上等なモノを着てるじゃないか。なのに新しい旦那が欲しいのか?」

「さっきから周りを値踏みするように見てたもんな」

「俺たちがお前の新しい旦那になってやるよ」

 男たちは口々に自分の都合のいいことを言いながら、女性を無理矢理連れて行こうとする。周りにいる人たちは男たちの態度を見て、関わりたくないとばかりに遠巻きに見ているだけだった。

「離してって言ってるでしょう!私は人を探していただけよ!」

 必死に抵抗している女性の声に、フォルティナは、仕方ない、ともう一度息を吐くと、男の1人に声を掛けた。

「失礼、どうやら本気で嫌がっているようだけど?」

 肩に手を掛けられた男が不快そうに振り返った。

「なんだよ、俺たちが先に目をつけ…」

 振り返った男は、自分の肩に手を掛けたままのフォルティナにそのまま固まる。

「おい、どうしたんだよ?」

 残りの2人が急に黙ってしまった1人を不思議に思い声を掛けてきた。そして、その2人もまた、フォルティナの姿に顔を強張らせ、見る見る顔色が悪くなっていく。

「フォ、フォルティナ・リモニウム!?」

「なんで、お前がこんなところに!」

「なんで、と、言われてもねぇ…。君たちみたいのがいるから、かな?」

 固まっていた男たちは、フォルティナの叫ぶと、そのまま後退った。

「それで、彼女は君たちの連れなのかな?」

 男たちの様子に優しそうな笑みを浮かべ(けれど瞳は笑っていない)問うフォルティナに男たちはブンブンと音がしそうな程に首を横に振った。

「ち、違う」

「俺たちはこの子が道に迷ったっていうから…」

「そうそう!だから、親切に道案内をしてやろうとしただけだ!」

 言い訳にもならないことを口走る男たちにフォルティナは呆れたように息を吐いた。

「お、お前がいるなら、お前に任せる!」

「そうだな!お嬢さんもそこの騎士様に送ってもらうといい!」

 溜息をついたフォルティナが、男たちにはさらに怒っているように見えたのだろう。そういい捨てると我先にとその場から逃げ出していった。

「大丈夫でしたか?」

 いつも間にか地面に座り込んでいた女性にフォルティナはそう言って手を差し出した。

「ありがとうございます」

 そうってフォルティナの手を掴んで立ち上がった女性はそのまま手を離すことなく、フォルティナくを見つけてきた。

「やっとお会いできましたわ。今日もこの間も助けていただいて、ありがとうございました」

 そう礼を述べてきた女性にフォルティナは涼やかに返す。

「いいえ。困っている方がいたら助けるのは普通のことですよ。それより、怪我はないですか?」

 いまだに手をしっかりと掴み、離さない女性に少々困惑しながらもフォルティナは怪我の有無を聞いた。

「それが…」

 フォルティナの言葉に女性は言いにくそうに口ごもる。

「どこか怪我を?」

「…先ほど、転んだ時に足を痛めてしまったみたいなのです」

「では、お送りしましょう」

 先ほど、座り込んでいたからその時にでも痛めたのだろう、と、フォルティナは女性にそう申し出た。

「よろしいんですか?何か御用があったのでは…?」

「いいえ。後は帰るか、馴染みの店に飲みに行くかするだけでしたので、問題ありませんよ」

 そう言って、フォルティナは女性に手を貸して、彼女と共に歩き出した。 

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