ヘイト活動に勤しんでいたら自分がヘイトの対象だった件 A
2ちゃんねる、ツイッター、果てはニュースサイトのコメント欄やブログまで、世の中は暴言で溢れてる。
だから、俺がやっていけない理由がどこにある?
俺は日本人が嫌いだ。みな、好きなものもあれば嫌いなものもあるだろう。そして、嫌いなものは排斥する。少なくとも、見えるところからは消え去ってほしい。実に普通の考えだ。
日本人ってやつは卑怯者だ。金を持っているからって金にものを言わせている。少し戦争に勝ったからと言って過去のことも謝りもせず、のうのうと金にものを言わせて平気でいる。しかもアメリカやヨーロッパには金を渡して自国文化を宣伝させている……しかも、挙げ句の果てはひどいヘイトスピーチだ。自分たちはヘイトをするくせに、他人のヘイトスピーチには敏感で、すぐに他人にはやめろと言う。まったく、ヘイトというのは便利な言葉だ。それさえ言えば、全て自分達の思い通りになると思っている。
だから、ヘイトスピーチなんて言葉を使う正義者気取りは、論破してやらなくちゃならない。
その日も俺は正義気取り野郎を全滅させるため、ツイッターで草の根運動をしていた。
「あなた、ヘイトスピーチはやめてください」
「うるせえ。チョッパリは存在自体が害悪だ。存在そのものがヘイトだ。死ね!」死ねというのは使ってもいい言葉だ。日本では日本死ねと言っても許される。そのくらい強い気持ちで、変わってほしいと俺は思っているのだ。
ツイッターで喧嘩を吹っかけてきたやつは、ブロックして去っていった。目を逸らしたのだから俺の勝ちだ。夜になれば、ツイッターで動いている人間は減っていく。夜になれば2ちゃんねるで戦わなければならない。
正直に言えば、ツイッターや2ちゃんねるで勝利しているくらいでは意味がない。2ちゃんねるで論破したところでまた次の日になればIDも変わって、連中は日本擁護を続けるだろう。以後2ちゃんねるやツイッターの使用禁止くらいまで追い込まなくては意味がない。
というか、そもそも、日本を擁護するやつなんてのは日本人か在韓日本人なのだから、母国へ帰ればいい。韓国から日本人を追い出すぐらいのことをしないと意味がない。そうだ、そういうことを公約に掲げる政治家が出たら、俺は全力で応援しよう。
俺がどうして日本を嫌いになったか……それは、日本がひどい国だと教えられたからだ。
確かに、隣国ではあるし、交流や貿易はあるのかもしれない。しかし、日本の人々の反韓感情や、反韓運動は明らかにひどい。そのほか経済的や政治的な反韓活動もある。詳しくは政府の公報でも見てみるといい。
俺は子供の時、日本人に間違われたことがある。俺は家が貧乏で、住んでいた家の近くには日本人の集落があった。おかげで、たまたま近くに住んでた俺も日本人だと思われた。
「お前、日本人の子供じゃないのか」
「在韓、在韓。国に帰れ!」
「このチョッパリ野郎!」
畜生。俺は韓国人だ。なのに、連中のせいで、ひどい目に合った。友人はいなくなり、仲の良かった女の子も話しかけてくれなくなった。教師まで、冷たい目で見る始末。
子供の時は、日本が悪いわけじゃないと思ってた。ごく普通の国で、たまたま近くに住んでたから悪いんだと思ってた。でも、そうじゃない。あの国は罵倒されて当然だ!
だから俺は今日もやっている。日本人をこの国から追い出すためなら、なんでもやる。
電車に揺られながら、ニュースサイトをチェックする。また日本が思い上がった言動をしていないかを調べるためだ。国際関係のニュースは特に注意して見なければいけない。
こんなことをして何になるのかとは思う。見ていればストレスが溜まるばかりだとも。しかし、嫌でも目に入ってくるのだし、目に入れば余計にストレスが溜まる。機先を制してやってしまうしかない。ほかのことで気を張らすには、趣味もなければ、金もないのだ。韓国が不景気なのも、俺の給料が低いのも、郵便ポストが赤いのも全部日本のせいだ。
在韓外国人放逐の法律の議論が始まると、ニュースサイトは告げていた。少子化のせいで、一時期、海外からの労働者受け入れが増加した。俺達韓国人のために、外国人が奴隷のように労働してくれるならいいと思った。しかし、現実には儲けたのはそれらを使う上の立場の人ばかりで、俺達労働者の待遇は全く良くならなかった。しかも、外国人は労働現場から逃げ出したり、労働の現場就労ビザが切れても滞在したりして、治安悪化や外国人待遇を求めてデモをしたり、そもそも視界に入ったりと、不快きわまりない。在韓の放逐は自然な流れだった。
不当滞在者はもちろん、正当な滞在許可を得ていてもその許可の見直しなどが始まることになっていた。
俺はニュースサイトのコメント欄に書き込んだ。「外国人の追い出し賛成! 在韓日本人は追放! 無許可で残ってる日本人は裁判なしで吊せ」
本当にそうなればどれほどいいか。
「ニュース、見た? 外国人労働者の受け入れ停止だってよ」
「まじか。現場どうするんだよー、韓国人の労働者なんて来ないのに……」
同僚達が、朝のニュースを見て話している。情報の遅い奴らだ。
数年が経った。俺は相変わらず草の根運動を続けている。世間的に表立ってデモへ行くなんて、悪目立ちのすることはしたくない。
相変わらず世の中は暗く、日本人は世の中にはびこっていた。しかし、俺には嬉しいニュースがあった。日本人のみならず、外国人への風当たりが強くなってきたのだ。
外国人労働者の受け入れが停止された。そして、追放の動きも始まった。
しかし、国民の感情は収まらない。当然だ。中国や日本などの特定アジア国に肩入れする現政権は解散となった。新政権の議員の選挙が始まった。
俺が応援するのはもちろん、新党愛国韓国党だ。在韓外国人の永住許可の取り消しをマニフェストとして掲げていた。
それはヘイトなんかじゃない。国を挙げての法令だ。たとえ世界的な情勢と反していたって、我々が先駆けとなり、世界中に広げていけばいい。自分たちの国、自分たちの民族で暮らせばいいのだ。世界的に見ればかつてはそうだった。移動が容易になり、混じり合って暮らすことも始まったが、それが誤りだと実感されつつある。ならば、それを正すのがむしろ正義というものだ。正義は俺達にある。
ヘイトを叫ぶ連中は未だにいるが、ヘイトを叫ぶ奴の方がバカだ。韓国人だけで暮らすようになれば、むしろヘイトを叫ぶやつはいなくなる。そうなるなら、その方が良かったということだ。
そして、もちろん、愛国韓国党は勝利した。韓国マンセー!
在韓外国人の追い出しが始まった。俺は狂喜した。
「許して! 許してくれ! 助けて!」
「お願いだから、この子だけでも! この子は韓国で生まれ育った! この子は半分韓国人だ、どうか!」
追い出され、飛行機や船で連れて行かれる日本人の様子には笑いが止まらなかった。飛行機や船なんて扱いが良い方だ、そのまま海へ突き落としてやればいいのだ。生き残るやつは生き残るだろう。
実際、一部ではそれも行われていた。政府にきちんと出頭するやつは送ってもらえるが、逃げ出したり誤魔化すやつは、愛国韓国人たちの手で海へと帰されていった。せめて、北側じゃなくて韓国海側に帰してやってほしい、と俺は考えたものだ。俺も変わったものだ、そんな優しい考えを持つとは。これも勝利したためかもしれない。勝者の余裕というものだった。
俺の、韓国の未来は明るい!俺は一人、飲み屋で祝杯を挙げた。世の中は良くなっていくことだろう。たとえ悪くなったとしても、それはよほど良いことだ。あのまま、現状を受け入れていた方が、よほど悪い。たとえ国力が落ちても、自分で選んだ道なのだ。
強制退去が始まると、朝のニュースでやっていた。遅かったくらいだ。愛国韓国人の手で帰されているのに、権力はやることが一々遅い。
電話がかかってきた。朝から珍しいこともあるものだ。実家からの連絡だった。
「母さん。どうしたの」
「早く逃げて」
「何を言うんだよ」
「実は、私たちは日本人なのだよ。それを告白すればどんな目にあうか分からなかった。だから、お前には言えないまま……。私たちももうおしまいだから、お前も早く逃げて」
「バカなこと言うなよ」
「本当だよ。あっ、何を、何をする。あんた達、この韓国野郎……」
ガラスが割れ、物が壊れる音、それから悲鳴、逮捕だと喚く声……
そんなことってあるものか。俺は韓国人だ。俺は韓国人だ……追い出されてなんてたまるか。俺は韓国が好きだ、韓国が好きだというのに、本当は韓国人だったなんて。嘘だ!
しかし、今更後悔したって遅い。日本人であることが知れれば、俺は国外へ追放だ。韓国人に捕まれば、海へ放り出される。くそ、俺は愛国者……韓国人だっていうのに……嫌だ、韓国を追い出されるなんて嫌だ。
日本人だっていうだけで、韓国を追い出されなくちゃいけないなんて……
しかし、こうしたのは俺だ。俺達が、韓国をこう変えたんだ。ヘイトは危険だ。俺は今更ながらに気付いた……何かを叩いていれば、自分が叩かれる対象となった時、途端に危険になるし、そうなった時にはもう遅いんだ。
ドアが激しく叩かれた。まるでドアを壊そうとしているみたいだ。俺の名前を呼んでいる。「××! いや、日本名××、お前には帰国令が出てる! この扉を開けなさい。抵抗するなら発砲も許可されている!」
ドアを叩く音がする。永遠に続いてるみたいに、響いている。俺はどうしたら……
いや! 捕まってたまるか!
俺はガラスを静かに開けて、逃亡した。俺はやるんだ。また草の根運動をやればいい。日本人だと誤認されている韓国人がいると、そいつらは許してやろうとツイッターや2ちゃんねるで言えばいい。逃げ出して、ネットカフェかどこかで暮らせばいい。韓国ならどこでもいい。独島でもいい。俺は韓国人だ!
それは素晴らしい妄想だった……そんなものが、現実になるはずはどこにもなかった。窓から飛び降りた俺は、両足が砕けて、走れなくなった。それから暴徒に囲まれ、殴りつけられた。
「このヘイト野郎! 日本野郎、チョッパリ! 国に帰れ!」
まるで俺が投げつけた言葉そのままだった。俺は物理的な暴力までは振るっていないのに。だけど、俺が投げつけたヘイトスピーチがこの暴力の素養を作ったのだ。
群衆を掻き分けて警察が来た。命は助かりそうだと思った。警察は、拳銃を俺に向けて、引き金を引いた。俺は韓国人だ! と、言う余裕もなかった。
ヘイトスピーチを助長する目的で書いたものではありません
ヘイトスピーチを抑制する目的で書きました




