2019年4月(5)
21時前、比嘉ふみよ達三人は県庁に近い中華寺院の前にやって来た。既に北見先輩は来ていた。2回生はもう大人アピールなのか缶ビール片手に飲んでるし。
「来なかったら一人夜酒ってどうかなあ、どうしようかと思っていたけど大丈夫だったね。あんたたちがバンドメンバーさがしてるって話は部長からちらっと聞いてたからさ。この程度の頓知わからない子とはやりたくなかったからちょっと遊ばせてもらったけど気を悪くしたかな?」
さらりと北見朱里先輩に言われた。
「いいえ。そんな事はないです。それにそういう言い方するという事は加わってもらえる余地もありそうですから」
比嘉ふみよは三人を代表して答えた。
Tianfeiとは「天妃」なのだ。中国語発音をカタカナで書くなら「ティエンフェイ」が近い。北見先輩が指定したのは三国志の英雄の一人、関羽を祀った関帝廟のある中華寺院だった。そしてその関帝廟には媽祖も祀られている。これは天妃ともいう。
「天妃ってさ、海の女神だから。私達海事科学部女子学生にとって大事な神様かなって」
というのが南京町の中華街のお店とかではなく関帝廟を選んだ理由だったのだ。
中谷ちゃんは何か閃いた。
「じゃあ、もしも、もしもだよ。うちらでバンド結成するとなったら、いや、もうしちゃうって思ってるけど、その時はバンドの名前を天妃にしない?」
摩耶がすかさずツッコミを入れた。
「テンピ?うーん、イマイチだよ。でも意味はいいから中国語読みでティエンフェイにしない?」
頷く北見先輩と比嘉ふみよ。
中谷ちゃんが叫んだ。
「じゃあ、うちらはティエンフェイ!」
なんだか、なし崩し的決定だなあ。このバンドの一面示す事になるんだろうなあと若干ため息交じりの苦笑をしながら比嘉ふみよは思ったのだった。