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【09-10】閉会


 スカイランとスイムが終われば残るはダンジョンランとシージの二つだ。

 残る二つは競技時間が長いため時間の加速が行われた。よく考えれば考えるほどに謎な技術だけど当たり前のように世界中に浸透している。

 僕は二つとも昨日今日と同じように作戦室に入り、特等席で観戦した。

 特筆すべきことは多々ある。僕が言えることはただ一つ。何度も思っているけれど、レベルが違いすぎる。


 ダンジョンランはあらかじめ大会専用に作られたダンジョンをどれほどの速さで攻略できるかを競う種目だ。よくネットに上がっているダンジョン攻略の動画には、ワイワイと出演者が会話をしながら解説を挟みながら攻略をしている物。効率を重視した立ち回りの説明に周回を前提とした解説物など多岐にわたる。ちなみに、周回とはダンジョンに入りクリアするまでを一周としてそれを何周も繰り返すことだ。AW内には多種のダンジョンが存在していて、周回が可能なものもあればそうでないものも存在する。

 そういった動画の中には当然ダンジョンランを意識した動画もある。昨日の夜に見ていた動画にもあった。しかし、それらの動きとは明らかに違うものがダンジョンランの競技にはあった。


 当然といえば当然なのだが、正式な種目であるダンジョンランとそれを意識した動画では前提の大きな相違がある。これはダンジョンランのプレイヤー主催の大会が著しく少ないことにも直結している。

 それは、ダンジョンランに使用されるダンジョンは新規に作成されたダンジョンだから。大会専用に作られたダンジョンは当然初見での攻略になる。動画で行われているダンジョンランは既存のダンジョンだから事前情報もたっぷりあって、それこそ周回するように何度も攻略しているかもしれない。稀に初見でダンジョンランをなんてうたい文句の動画も現れるが見ていられるものではなく、実際の競技と比べれば児戯にも等しい。だから、動画はイレギュラーが限りなく少ないダンジョンランのような何かになってしまうのだ。


 VRオリンピックに出場するようなプロの選手には動画を投稿している選手も多い。スポンサー契約をする際に動画をネットに投稿することが条件の場合もあると聞く。そんな彼らの動画は国境を越えて再生される。そんな彼らが投稿しているダンジョンランの動画もあるが、それらを見ても実際の競技を見たときと同じ感想を持つことはないだろう。

 ダンジョンランは見ごたえもあり、観客としても楽しめるものだった。


 シージは攻城戦の名前通り、あらかじめ規定された中で作られた防衛拠点を各国が持ち込んでの戦い。国によっては初見殺しとも言える策を弄する場合もある。しかし、その大半は二回戦、三回戦と勝ち進んでいくと同時に攻略されていき、最終的には丸裸となる。それでも、城としての最低限の機能が残っていれば選手の自力で戦えるかもしれない。しかし、地力がある選手たちがそろっているチームが初見殺しと言えるようなある種の賭けのような築城をしてくるかと言われれば答えはノー。初見殺しの機能は兼ね備えていたとしても堅牢で安定性のある城を築く。これが今のシージのトレンドだ。

 攻城戦であるシージはスピードランに次いで大会が多い。プレイヤー個人が開くのような小さな大会から企業がスポンサードするような大きな大会まである。

 VRオリンピック以外の大会では、VRオリンピックのようにあらかじめ設計した城を大会側が用意できるものではなく、あらかじめ作られている城に戦闘前に設けられた設営時間に城の防備を固めて自分たちの城を作ることが多い。そんな決まりが浸透しているからか城の構造を利用した一点特化な初見殺しではなく、どんな城であっても使える汎用性があり、かつ、破壊力のある仕掛けが多く発明されていることも最近のトレンドにつながっているのかもしれない。


 VRオリンピックほどではなくとも、シージの大会はテレビで中継されることが多い。観客の目も肥えていると言える。シージはその競技の特性から企業が運営するプロチームも多く存在している。日本の選手でも海外のプロチームに所属している選手もいる、逆に海外の選手で日本のチームに所属している者もいる。だからこそ、レベルの高い大きな大会が多く開かれてそれがテレビに映る。


 僕が日本代表に選ばれたのは、このシージという種目の選手としてだ。

 僕もいずれはプロチームに所属するようになるのだろうか。現状では少し名前が売れただけで実績がない状態。僕の戦闘に関する情報が広く知れ渡っているとも思えない。もちろんすべての選手がプロチームに所属しているわけではない。僕が合宿でお世話になったカズさんもプロチームに所属していない。所属に関しては、奥さんである美樹さんが運営する会社になっている。服飾関係であることとSW(セカンドワールド)内で有名な企業なこともあって、モデルのような活動をしている。よく雑誌の表紙になっているカズさんの服はすべて奥さんである美樹さんのプロデュースというわけだ。

 カズさんの容姿は決して優れているとは言えない。ラインも悪い。しかし、彼が来ている服は売れるそうだ。世の中美男ばかりではないからね。


 閑話休題。


 攻城戦であるシージもダンジョンランと同様にVR(仮想現実)仮想現実の中で時間加速が行われた。種目としては長時間の競技だからメリハリが重要だ。時間のある人はVRに入って同じ速度で時間を加速して観戦する。試合が硬直状態になって均衡が保たれるようになると、多くの観客が集まる観客席や大きなモニターが置かれている競技場前の広場では国籍構わず観客たちが世間話を始める。今年はどのチームがよかった。今年はあの選手がよかった。なんて話から仕事の愚痴まで。そして、試合が動けば全員で熱中する。VRならではの平和の形だ。

 そんな世界平和が行われている時でも、僕がいる作戦室は戦争状態だ。主に敵となりうるチームの情報を集めて解析、いい戦法であれば穴を探して自分たちがより良い戦法を駆使できるように話し合っている。こういう状態を議論百出というのだろうか。議論っているレベルではなくほとんど言い合いだけど。

 怒声が飛び交う中で、もちろんだけど僕が口を出せることはない。僕が思いついたことはすべからく誰かが先に代弁しているからだ。だから、僕は彼らの話し合いを聞いて情報をまとめる手伝いをしていた。おかげで情報の入力速度が速くなった気がする。

 それに、作戦というものも分かった気がする。当然なことかもしれないけど、これまで僕が戦闘中に考えていたことは戦法でもなくて、ただの戦いの手順。より高度なレベルがあることを知れた。僕はこっそりこれをリンカーで読み取って保存しておきたくなる気持ちを抑えながらデータにまとめていた。


 結果的には今年のVRオリンピックで入賞者は出なかった。種目自体が四つしかないうえに階級もないから入賞者は十二団体しか選ばれない。参加国が百を超えてることから見ても少なすぎる。これも種目を増やす噂につながる一つの大きな要因だ。

 僕はなぜかデータ打ち込みの腕が見込まれたのかシージが終わるまで作戦室で行っていた作業をシージの決勝後までさせられた。いつの間にかシージの情報はまとめ終わったのかダンジョンランのデータまで僕のところに回ってきていた。僕はそれを黙々と整理し続けた。おかげで僕も何かを学べた気がする。

 この四日間で僕の実力不足は嫌というほど突き付けられた。選手に選ばれたときによくわからなかった気持ちにもやはり選ばれたということに対する優越感のようなものがあってそれが完全にこそぎ落とされたような感覚だ。




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 四日間の競技が終わった翌日。今日は午前中に閉会式が行われる。閉会式が終われば午後には大きな晩餐会だ。会場はSW(セカンドワールド)の中。さすがに今大会の参加者全員が入ることのできる場所は限られるが、それは現実世界での話。仮想現実で行われることで場所の準備が必要ない。そもそも大会に参加する人の中には自国からVR|《仮想現実》に接続している人もいるから現実世界で行われてしまうと参加できない。

 すべてが仮想現実内で行われると味気なく感じるかもしれないが、これによって開催国を選ぶ必要もないし、開催における費用が掛かることもない。各国が負担するのはVRオリンピックに出場するために必要な強度な通信設備とVR接続するためのヘッドマウントディスプレイ。これらがありさえすれば、どの国でも参加ができる。現実に行われるオリンピックではいくつかの国が連合のように選手団を作ることがあるけど、それは必要ない。一種目で会っても簡単に出場できることはVR技術によって世界が縮まっていることの証拠ともいえる。


 大会最終日は表彰式と閉会式だ。

 SW内でそれはもう大々的に行われた表彰式。各国が用意していた自国の文化が現れる装いで選手が登場する。そして、表彰と同時に会場の装いがその国の文化色が強いものへと変わる。日本の選手が受賞すれば表彰中は会場のすべてが和風の外観へと変わる。緒方先輩が入賞した去年の動画は今でも世界中で再生されている。戦国時代の城を思わせる内装の表彰場は和服で統一された日本選手たちが主役のように錯覚させる。表彰されている緒方先輩はそれはそれはかっこよかった。

 今年の表彰式もそれはそれは豪華絢爛と言って過言ではなかった。表彰ごとにコロコロと変わる内装に僕も心を躍らせた。ちなみに僕は予備の選手として登録されていたようだけど表彰式に参加することもなくコーチたちと一緒に各国のサポートスタッフ用に用意された場所から表彰の様子を眺めていた。見てる分には楽しいけどあの場所に立っていたら不安と心配と自分がそこにいる意味の不明さで挙動不審になってしまうことは間違いない。


 表彰もつつがなく終わると表彰状は一転して近未来SFのような装いに変じる。そこでは去年まではその年起こった大きな出来事を軽くまとめるように少し長い演説が数人の偉い人によって行われて閉会を宣言されていた。今年もそれに変わりはないだろうと誰もが思っていた。








お待たせしました。いろいろと考えていましたがこのような形になりました。

これで九章は終わり、明日一話投稿してから十章となります。まだ十章は完成していません。


先日、面白いから是非続きを書いてほしいというメッセージをいただきました。とてもうれしかったです。エタらせる気はありません。しかし、私はかなりの遅筆ですので気長に待っていただけるとありがたいです。

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