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【09-05】タイムとコンバット

 大会当日の朝。今は六時過ぎだ。

 僕は一人、ホテルの和食ビュッフェに来ていた。ホテルでの朝食はビュッフェが基本。和食ならず洋食や中華もある。今日は和食の気分だった。


 店に入り受付に鍵を見せる。鍵を受け取った給仕が専用の機械にに鍵をスキャンさせる。このホテルに泊まって一週間が経過しているのですでにおなじみの行動だ。鍵には僕の宿泊情報が詰まっているようで僕が朝食を払わずに食べられるということが機械を通して給仕に伝わる。

 鍵を返却されればあとは自由だ。入り口近くにある台から大きめのお皿を一枚とってビュッフェを一周する。どんな料理があるかを確認したら食べたいものを取って空いてる籍を探す。ご飯に味噌汁、それと、卵焼きと納豆を取った。

 四人掛けのテーブルが開いていたからそこを占領する。他にも空席が目立っているから問題ないはず。人が来たら移ればいいし。


 僕がもぐもぐと朝食を食べていると僕の向かいに一人の男性が座った。その男性はまんまるとした体形。気弱そうに見える気の抜けた顔。カズさんこと剛田和道だ。


「カズさん、お久しぶりですね」


 カズさんがこのホテルに泊まっていることはすでに聞いていた。僕は朝食べたらVRテストのために大会開催地に向かい、夕飯前に戻っては夕飯を食べて寝る。そんな生活をしていたために彼と会う機会がなかったのだ。


「久しぶりだね。瑠太君」


 彼は一人で僕の前に座っていた。両手にお盆を持っている。僕の前にお盆が僕のを除いて二つ並んでいるところを見るともう一人いるのだろうか。とすれば美樹さんか。

 僕がお盆を見ていたのが分かったのかカズさんがすこし恥ずかしそうに笑う。


「あー。これ? 僕朝はいっぱい食べるんだ」

「朝からよく食べられますね」

「そう? 瑠太君もいっぱい食べた方がいいよ」


 カズさんはそう言うと黙々と朝食を始めた。焼き鮭が三尾あるってことだけでこれ一人分じゃないじゃんって思うんだけどな。これ食べるって言ってるし。

 僕は最初に取った料理がすべてなくなったのを見て、自分のお腹のすき具合を確認する。今日は大会初日だ。お昼ご飯を食べる時間があるかはわからないから多めに食べておいた方がいいかも。


「料理取ってきます」

「んん。いってらっしゃい」


 僕は席を立って再び料理を取りに行く。

 あの料理をすべて食べるってことはカズさん一人なのかな。とすれば、美樹さんはいないってことか。合宿中に話を聞いていた感じだと一緒に来ると思っていたんだけどな。


 また料理を適当に取って席に戻る。

 席に戻ってからはカズさんと二人で取ってきた料理を腹に詰めて行く。お腹がパンパンになった所で部屋に戻ることにした。

 目の前で未だ朝食を続けるカズさんに先に部屋に行くことを言う。それにしても、さっき初めと同じ量を追加していたのに食べる速度が減らないのはすごいな。


「ごちそうさまでした。カズさん、僕は先に戻りますね」

「ん。じゃあ、またあとでね」

「はい」


 僕はそのままレストランを出て部屋に戻った。


 部屋に戻ってからは集合時間までまだ時間があったからシャワーを軽く浴びてからスーツに着替えた。八時に一階エントランスホールに集合と言われていたからあと三十分ぐらいある。少し早い気もするけどもう行ってもいいかな。姿見で自分の服装を確認。胸ポケットにリンカーとARグラスを挿してイヤホンを左耳に入れる。最後に部屋の鍵を持ったことを確認してドアを開けた。




-------




 大会の一回戦は十三時から。今日の午前中は大会の開会式があるだけ。開会式は十時から始まって十一時に終わる予定。僕たちは八時にホテルを出て大会会場に先乗り。そこで最終チェックをして開会式に参加。開会式が終了したら会場入りする選手の出迎えをして一回戦開始を待つ。

 今大会というかこれまでの三回は、VRオリンピックと言われていても競技種目は四つしかない。種目を増やそうという話は噂としても出ては消えてを繰り返しているが第一回大会からこの四つの種目から増えることも減ることもない。


 その四つの種目はさらに二つに分けられる。一つ目が『タイム』。そして、もう一つが『コンバット』。

 『タイム』に関しては、三つ。『スカイラン』、『スイム』、『ダンジョンラン』。

 『コンバット』に関しては、『シージ』。

 この四つがVRオリンピックにおける種目。


 タイムに関しては、文字通りタイムを競い合う。


 スカイランは別名スピードランとも呼ばれている。国立VR競技専門高等学校一期生の緒方先輩が去年銅メダルを取った種目だ。陸上でスタート地点からゴールまでのタイムを純粋に測る種目。競技中は何をしても良い。妨害ありきの競技だ。

 コースとしては何もなければ十分ほどで駆け抜けられる距離だが、そう簡単には終わらない。駆け引きが重要であり単純な協議に見えて玄人志向な一面もある。緒方先輩はこの競技で飛行ができるキメラを使って銅メダルを取った。

 スピードランと言われることもあって、この競技はスピード狂たちに人気のスポーツでVRオリンピック以外で最も多くアマチュア大会が開かれている種目となっている。


 スイムはスカイランと同様にスタートからゴールまでのタイムを計る。スカイランとの違いは競技が基本水中で行われることとコース上に複数の関門があることと道具の使用が許されることだ。スカイランで許されているアイテムは装備アイテムのみ。それに比べてスイムで許されているアイテムは事前に許可を得ていればすべてのアイテムが許可される。

 去年は小型の船を持ってくる選手が多く、途中で船の破壊合戦になってみてる分には面白かった。スカイランと比べて数時間かかるレースになる。関門を抜けるために時間がかかることが多く、駆け引きというよりは事前準備をいくらできるかで勝負が決まる競技になっているのが現状だ。


 ダンジョンランは決められたダンジョンを最大五名のPTで効力するタイムを競う種目だ。最下層にあるゴールにたどり着きさえすればなんでもありだ。スカイランとは違ってチームプレイが必要となるため、前二つと比べると見ごたえがある戦いになる。VRオリンピックにおいて人気を二分する競技だ。

 これも指定されたダンジョンによっては時間が掛かる協議で競技時間は過去三回の大会でどれも二十四時間を超えている。スカイランとスイムは現実世界と等速で時間が進む。VR空間による加速が行われない。ダンジョンランはVR空間での時間加速が行われる。加速倍率は四倍。二十四時間で終わるとすれば現実世界の六時間で競技が終わることになる。競技中は自由にログアウトが可能になっていて各自の判断で休憩をとれるようになっている。スカイランとスイムを合わせたような種目ともいえるかもしれない。


 シージは所謂攻城戦だ。

 二十名の選手に五名までのオペレーターの参加が認められている。

 各自に与えられた陣地を守りながら敵陣地にあるフラッグを獲得することで勝利となる。各陣地に建てることができる取りでは競技開始一時間前から建設可能で資材に関しては各自があらかじめ用意しているアイテムを使えばいい。そのアイテムも持ち込むときに事前に申請が必要になる。もちろん現地での最終も可能だ。過去三回はフィールドが森林だったことから今回も森林だと思われているがネット上では森林のステージを望む声が一定数ある。

 これも競技時間が一日を超えることため、時間加速を四倍にしてプレイとなる。


 初日の今日がスカイラン。明日がスイム。その次の日がダンジョンランで、次がシージとなっている。最低で四日で終わるスケジュールだが、過去三回で四日で終わったことはない。


 僕はこれらすべてで裏方だ。VR接続のテスターが終わったらあとは観戦するだけかと思っていたけどそんなことなかった。僕には観戦する暇がないほどだ。

 僕は自分の仕事をするためにエントランスホールで他の人を待った。僕の他に当然誰もいなかった。





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