【03-06】狩り
草むらから現れたのは勇人だった。
「え、ごめん。戦闘終わってたから」
勇人は申し訳なさそうな仕草で頭の部分を掻く。
「なんにしても無事合流できてよかったな」
拓郎が降りてきた。
「そうだな。四人そろったところで次の狩りに行こう」
智也は促す。
「ドロップ品は確認しないのか?」
「ああ、あとで確認する。まずは移動しよう」
拓郎は智也の言に納得し、従う。
AWは無駄に現実に近く作られているから、狩りの後は移動が必須になる。
僕たちは移動を始めた。
「おれが最後だったみたいだね」
勇人が申し訳なさそうに言う。
「瑠太が最初で、その次が智也だったぞ」
拓郎はアクロバティックな低空飛行をしながら移動する。
「瑠太、適当な気配を見つけたら言ってくれ」
智也に言われて、適当な気配を探す。
しばらく歩いてから、適当な気配を見つけた僕が三人に伝えて狩りを始める。
相手はイノシシのようなモンスターだ。牙が異様に発達している。言うなれば『ファングボア』だが、ネットに載っていたファングボアとは違うように見える。
僕が倒した狐や、三人で倒した大型犬のように僕が知らないモンスターだ。
さっきと同じように智也が先制する。
智也は風を使ってイノシシのモンスターを切りつける。拓郎は空中で待機している。
敵が智也に向かって突進を仕掛けてくるが、勇人が間に入って阻止する。
勇人の大盾にイノシシの牙が当たり甲高い音が鳴り響く。
「タゲ取った」
勇人が言う。
戦士のスキル〔挑発〕を使ったのだろう。〔挑発〕はMMOにあるよくあるスキルと同じだ。敵のヘイトを上げるスキル。ようは、タゲをとるスキルだ。
その声を会津に智也と拓郎が攻撃を始める。攻撃内容はさっきの戦闘と同じだ。
僕も攻撃に参加する。僕は攻撃力が高いわけではない。僕が連続で攻撃するよりは〔猛毒〕スキルを使った方がいいだろう。オンとドーとラーでイノシシを噛みつき毒を流す。
僕は三人の動きつつ隙を見て毒を流す。大きな傷ができるわけではないからあまり活躍できていないように感じる。
イノシシのようなモンスターも何度か攻撃を仕掛けるが、勇人がうまく処理する。
勇人がイノシシの攻撃を受け、タゲを取らない程普に攻撃する。この繰り返しで倒すことができた。
このコンボがパーティ戦での基本に近い戦い方だろう。
智也がドロップアイテムを確認せず広い、移動を開始する。
その後も何度か狩りを行ってから、拠点に決めた木に戻ることにした。
智也をリーダーとした戦闘は順調に戦果を増やしていった。
ドロップアイテムが十を超え、全員の荷物に空きがなくなったあたりで木に着くことができた。目印もないのによくたどり着けたなと僕は思っているけど何かあるのだろう。そう思っておくことにした。智也が下げている剣は結局一度も使われることがなかった。
四人で木に登り一息ついた後で智也が全員に聞いてきた。
「これまで戦ってきたモンスターで知っているものはいたか?」
僕は首を横に振る。拓郎と勇人も否定する。
「やはりか。このイベントに出てくるモンスターはすべて新種……」
薄々気づいていた事実に僕は驚きを隠せない。僕が知らないだけかもしれないという考えは甘かったようだ。
「だいぶ金掛かってるんだな」
僕も拓郎に同意する。『だいぶ』どころではない金額のお金がこのイベントに絡んでいるはずだ。色々と疑問は尽きないが意識的に無視する。
「そろそろ日暮れだ。今日はここで夜を明かす。火は焚かない。夜目は利くか?」
「おれは大丈夫」
「俺は鳥目だ」
勇人は大丈夫のようだ。拓郎は容姿まんまだな。
僕は首を横に振る。
「僕もダメ」
僕の体はヒューマン種のまんまだ。当然夜目は利かない。
「じゃあ、私と瑠太、勇人と拓郎でペアを組む。野営もこれで回す」
僕は頷く。
「食料は持ってきているな?」
智也が聞き、他が頷く。これを何度か繰り返し、智也の確認が終わった。
「分かった。私たちはこのまま野営を始める。夜は危険だからな。食料は早めに取ろう」
既にだいぶ暗くなっている。僕はバッグから干し肉を出して齧り付く。普段、食堂で食べるときはもう少し話しているが、今は完全に沈黙だ。日が落ちるこの状況で戦闘になれば全滅する可能性が高い。他者に気づかれる要因はすべて排除しなければならない。
僕はチャットを開き、三人にジェスチャーする。タイピングの真似だ。
先に勇人が気づき、数秒後、智也と拓郎が気づいた。
僕たちはチャットで会話することにした。
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LORD「ナイスアイデアだ。瑠太」
tail「ありがと」
守君「これなら声出さなくていいね」
ducrow「そうだな。食べ終わったらどうするんだ?」
LORD「まずはドロップの確認をする」
ducrow「あいよ」
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チャットを読んだ拓郎が自身のバッグからさっきの狩りで手に入れたドロップアイテムが入った箱を出した。
すべての箱が同じ大きさになっている。
僕もバッグからドロップアイテムの入った箱を出して準備する。
既に食料は確認している。他に何が入っているのだろう。
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ducrow「ガチャみたいで緊張するな」
守君「外れがあるのは嫌だけどね」
LORD「告知では『物資』と書かれていたはずだ」
tail「僕が開けたときはカロリースティックだったよ」
ducrow「開けたのか!」
守君「いつのまに?」
tail「合流前だよ」
ducrow「で、なんだったんだ?」
tail「カロリースティックだって」
LORD「他は?」
tail「いや、それだけ」
ducrow「えっ、まじかよ」
LORD「いや。これほど金をかけてそれだけはないはずだ。きっと何かあるはずだ」
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僕は智也の言ったことを考える。
智也の言った通り、ここまで大きなVR空間を作って、新種のモンスターを大量に導入しているのだ。金額はかなりのものだろう。そんなイベントのドロップがカロリースティックだけっていうのは流石にないだろう。
僕はとても嫌な予感がした。本当に。このドロップアイテムは開封しない方がいいんじゃないかと思うぐらいだ。
十一個あるドロップアイテムを開けていく。僕の持つ三つはすべてカロリースティックになった。他の八つも四つがカロリースティックに。他四つは、テントが一つ。寝袋が二つ。そして、ランタンが一つだった。イベント開催側の企業にそういった物を販売する企業があるのだろう。すべてに見覚えのあるロゴが付いている。
分配としては僕はテントとカロリースティック一本、勇人と智也が寝袋とカロリースティック一本、拓郎がカロリースティック五本に落ち着いた。寝袋を使える二人がそれをもらい、テントを使わない拓郎がカロリースティックだけになったため僕がテントになった。僕と拓郎は寝袋を使えない。僕は尻尾が拓郎は翼が邪魔をして寝袋に入れなかったのだ。これは仕方ないことだ。
アイテムの分配を終えた僕たちは睡眠に入る。日は落ちているが時間としてはまだ早い。しかし、初めての野営だ。全員が確実に睡眠をとれるように長い時間を睡眠に充てることにしたのだ。
僕と智也が最初の見張りだ。
「じゃあ、頼んだぜ」
「おやすみ。智也くん、瑠太くん」
拓郎は翼に包まり、勇人は寝袋に入った。このまま、四時間ほど見張りをすることになる。
僕と智也は寝ないようにチャットをしながら夜を過ごした。




