【02-10】 死に戻り
外套を買った後、僕はギルドでスライムの討伐依頼を受けた。僕は北門を出てスライムを探した。ここまでの道のりでこの外套が尻尾たちにそれほど悪影響がないのは確認済みだ。外套から顔を出せば自動防御も発動すると思う。動きに多少影響が出る可能性はあるけど、後々のことを考えれば、今のうちに慣れておいた方がいいだろう。いざというときの不意打ちにも使えると思っている。
スライムを見つけた後、〔気配遮断〕で気配を消して近づき、オン、キー、ルーで攻撃する。この方法で狩ることができる。
最初はあった緊張感もすでになくなってきていて、もはや作業になってしまっている。狩る対象をスライム以外にした方がいいかと思いながらも、僕はそのままスライムの討伐依頼を三回達成してからログアウトした。レベルが六に上がっていた。上げることができたステータスはSTRで四になった。
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ログアウトして食堂に行き、一人で夕食を食べた。ここ一か月で僕と同じように毎日夜七時前後に夕食を食べている人は少ない。今はまだ大丈夫だが、先に進めば七時にログアウトするのは難しくなるのかもしれない。
夕食を食べた僕はいつものように部屋に戻り、歯を磨いてから共用スペースで掲示板やネットを見た。この後はスライムではなくホーンブルを狙うことにした。掲示板によると、ホーンブルは攻撃が直進の突進のみだが、防御が固いため時間が掛かると書いてある。横転させることができれば殴り放題だと書いてあったが、僕にはできないと思う。
掲示板を見ていたら、生徒証にお知らせの通知が出た。内容は『二十八日の夜七時に食堂に集合』というものだった。生徒証に入っているチャットアプリを使っての連絡だ。
ホーンブルについてある程度情報を得た僕は、VRルームに向かい、ログインした。
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噴水広場から冒険者ギルドに行き、依頼を受けた。ホーンブル討伐の依頼だ。この依頼を達成すれば草原以外のエリアでクエストを受けられるようになるらしい。依頼の報酬は一頭につき百マネー。五頭討伐すれば達成だ。僕はギルドを出て、草原に向かった。
僕の対ホーンブル作戦は簡単。まずホーンブルの攻撃は避ける。あとはオン、ドー、ラーの三匹の〔猛毒〕で仕留める。一度接近してしまえば突進はそこまで怖いものではないと思う。今日中に一匹狩ることを目標にする。
僕は草原に出て、ホーンブルを探した。ホーンブルは、角兎やスライムよりは数が少ないが、群れでいる事が多い。僕は一匹でいるホーンブルを探して歩く。〔気配察知〕では気配の有無ぐらいしかわからない。特定のモンスターを探すときには役に立たない。
はぐれのホーンブルを見つけた僕は、適当な石を拾って投げつけた。石が当たったホーンブルは周りを見回し僕を見つけると、角を前に突き出し威嚇してきた。ホーンブルを見ながらじっと待つ僕と威嚇するホーンブル。数秒立った後、ホーンブルが僕に向かって突進してきた。それを待っていた僕は避ける為に動く。
紙一重で避けられそうな僕は作戦通りに動けたはずだった。ここで予想外のことが起こった。ホーンブルの突進軌道上を外れた僕本体とは別に、ヒュー以外の尻尾たちが僕を防御しようとしていたのだ。重心を乱しそうになった僕は咄嗟にドーとラーを操作してなんとか重心を戻した。しかし、オンとキーとルーはホーンブルの突進を受けてしまう。結果、引っ張られるように僕は吹き飛ばされる。
地面に倒れこんだ僕は、なんとか起き上がろうとするが痛みで思うように動けない。ホーンブルの突進を正面から受けたオンとキーとルーもぐったりとしていて力が入ってないように見える。そういえば前にも避けようとして防御しちゃったときあったようななんて思考が飛んでしまう。
動けない僕とは裏腹にホーンブルは僕に追撃を仕掛けてきた。ヒューとドーとラーが僕を守ろうと立ちはだかるが、意味はない。一瞬の衝撃と宙に飛ぶ僕。気がついたときには僕は噴水広場に立っていた。
結論、僕にホーンブルは早かったようだ。
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僕は今、噴水広場に立っている。死に戻りしたということだろう。AWのデスペナルティはステータス半減だ。期間は一日。結構重い。
僕はホーンブルを諦めて、スライムを狩ることにした。ギルドの依頼を受けていないから依素材の収納はできないが、物理的な回収はできる。僕は安めのバッグを買ってから草原に向かった。
スライム狩りを始めた僕は、急に下がったステータスに戸惑いながらも五匹のスライムを倒すことができた。買ったバッグにスライムを五匹詰めたところで丁度入らなくなったので、これを売りに行くために町に戻った。
レベルが七に上がっていた。上げることができたステータスはVITだ。
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町に戻った僕は、ディスプレイから地図を開いて店を探す。そもそもスライムはどこで売ればいいのだろう。少し考えてから、雑貨屋的な店を目指すことにした。冒険者ギルドのそばにある店で僕の持つ二枚の地図の両方でチェックされている店に行った。
「いらっしゃい」
店にはレジのカウンターに座って本を読むおじさんが一人いた。店の中はあまり整理されていないようで物が散乱している。おじさんは僕の方をちらりと見た後、本の続きを読み始めた。
「すみません。買い取ってほしいものがあるのですが」
僕は訪ねた。
「見せてくれ」
おじさんは知的な声で言った。僕はバッグごとカウンターに出した。
「スライムか?」
「はい」
おじさんは困ったような顔で笑った。
「申し訳ないが、うちでは買い取れない。スライムの買取は主に薬屋が行っている。そっちの方に行ってみるといい」
雑貨屋ではなかったようだ。
僕が礼を言ってから店を出ようとすると、おじさんが聞いてきた。
「おまえ、新人か?」
「はい」
僕は肯定する。
「訓練所に行かなかったのか?」
「訓練所以外でスキルを覚えたので」
僕は答えていく。
「なるほど。一度訓練所に行くことを勧める。あそこはスキル以外にもいろいろと教えてくれる場所だ」
おじさんはそう言って本を開いた。それにしても、訓練所ではスキル以外も教えてくれるのか。知らなかった。
僕は改めて礼を言い、店を出た。取り敢えず薬屋に行ってから、訓練所に行くことにする。
地図を見て、近くの薬屋を探した。薬屋に着いた。僕は中に入る。薬屋の中は品物のほとんどがショーケースのようなものに入っていて、キレイに整頓されていた。
「いらっしゃい」
今度は魔女みたいなお婆さんだ。魔女の窯で調合するのだろうか。
「スライムを買い取ってほしいのですが」
僕はバッグを見せた。
「ここに出しなさい」
僕はカウンターにバッグからスライムを出していく。
「スライムが五匹。一匹が二十五マネーだね」
「それでお願いします」
僕は了承する。
「待ってなさい」
そう言って奥に行って何かを取ってきた。
「五匹で百二十五マネーだね」
お金を受け取る。所持金は千九百七十五マネーになった。
「また何かあったらうちに来なさい」
「ありがとうごさいました」
僕は薬屋を出て、訓練所を目指した。
訓練所は北門のすぐそばだ。




