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玄冥殿の守り神
幼い頃、忙しい合間を縫って訪ねてきた祖父がよく聞かせてくれたおとぎ話がある。
一人の少年が宮殿の北にある玄冥殿の守り神様に連れられて、城壁にある開かずの鵬尾門から桃源郷を旅したという冒険譚だ。
その話はまるで見てきたかのように鮮やかで、細部までのすべてが生き生きとしていた。
何度も何度も同じ話を、祖父は優しい目をして繰り返すのだ。
そして、いつも祖父は話の最後に私にこう言い含める。
「もしもどうしても困ったことが起きてしまったら、玄冥殿にお願いしてみなさい。きっと玄冥殿の守り神様が助けてくれる」