友達の出来る喜び
ある木枯らしの吹く肌寒くなった日、飄香はとても悩んでいた。
引越して来た地元の高校に入ってから半年以上も経っているというのに周りには友達と言える人が一人もいない、飄香は入学当時誰とも口を聞かなかった自分自身を恨んだ。けれども、人見知りが激しい飄香は今更どうすることも出来ない。
そして、飄香は毎日の様に誰かが話しかけてくれるのを待ち望んでいたがそんな人はいるはずもない、そんな事は飄香自身が一番良く知っていた。
クラスでは他の女子達が男子と楽しそうに話しているのを見て、とても羨ましくも嫉妬した。それを見て自分にも話しかけてくれる優しい人と仲良くなって一緒に遊んで見たいと妄想さえもした。けれども、それは楽観的な考えであるのは分かっていた、しかしそんな事を考えずにはいられなかった。
そんな事を考えていると、転校生が明日来るらしいと言う噂が耳に入って来た。けれども、こんな自分に話しかけてくれる様な人は居ないだろうし、自分から話しかけることの出来ない自分には関係のない話だった。
その次の日に噂通り先生から転校生が来ていると言う事が知らされた。すると、先生はいつもの調子で「塚田くん入って来て」と言った。飄香はその名に聞き覚えがあり懐かしさを感じた。そうそれは引越す前の場所で昔とても良く遊んでいた人の名前だったのだ、しかしこんな所に都合良く引越してくるはずはない。そうは思いながらも少なからず期待を胸に落としていた視線をゆっくりと上げ、立っている少年を見た。
するとそこにはあの人が立っていたのだ、飄香は泣き出しそうになった。すると、塚田を自分に気付いた様で「久し振り!」と言ってくれた。すると、先生は少し安心した様な顔で塚田くんに「飄香さんと知り合いみたいだから隣の席にしてね」と言った。私はこの日初めて学校に友達と呼べる人が出来た。