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第1章

 風が気持ちい。外に出たのは何年振りだろう。っていうか死んだはずなのになんで風を感じれるのだろうか。

「まさかここが天国?」

 目の前には青々と茂る草原が広がっている。僕はここで寝転んでいたのだ。

「にしても天国ってもっと豪勢で煌びやかなものを想像してたのに、思ったよりしょぼいな」

 周りを見ても人ひとり見当たらない。

(本当に……ここは天国なのだろうか。)

「ここにいても何も始まらないし、そこら辺を散策するか」

 僕は草原をあとにして森のほうえ足を運んだ。森の中は先ほどの草原とは違い太陽の光があまり入ってこないのでとても涼しい。

「う~ん、本当に何もないなここは。」

 何もない世界にいいかげん嫌気がさし散策をあきらめようとしたその時、どこからか女性の声が聞こえてきた。

「せんぱ~い、このこの印はどうやればいいんですか?」

 こっちの声の主は活発だがとても生意気そうな感じがする。これはあくまでも直感だが僕とは相性がとっても悪そう。

「この印はねここをこうすればいいのよ」

 こっちの声の主はおっとりとしていて清楚な感じがするな。

「さっすが先輩なんでもしってますね」

 たぶん、この子は自分が尊敬してる人には敬語を使うのだけど、自分より下だと思ってる人にはとことん生意気に食って掛かるのだろうな。いやこれはあくまでも僕の推測であって、決して彼女がこういう人だと断言しているわけでわない。

「とりあえず天国の住人だろうし、話を聞いてどこに行くか決めないと」

 残念なことに人生のほとんどを病院で過ごした僕は年の近い女の子と全く話したことがない。話したことがあるとすれば、もうそろそろ加齢臭がにおいそうな歳のいった看護婦くらいだ。そいうわけで今僕は非常に緊張している。なにせ人生初?いや、もう死んでるから人生ではないかもしれない若い女の子と話すのだから。

「あの~、すいません。ここって天国であってますか。」

 もしここが天国でなかったら、僕は、ただの頭のおかしい人になってしまう。だからここが天国であってほしいと全力で願った。

 だがしかし、神かこの世界の主か知らないけど奴らはそれを許さなかった。

「はぁっ、あんたそれ新手のナンパ?」

 僕が予想していた通りの女だった。とてつもなく口が悪くて生意気だ。

「えっだって僕死んで目が覚めたらここにいたんだよ。ならばここは天国か地獄のどっちかのはずでしょ」

 今の僕はたぶん他の人からみれば頭のおかしいことを、一生懸命いってるようにみえるだろう。だが僕は一生懸命であって決して頭がおかしいわけでない。

「あんたは死んだかもしんないけれど、私達はまだしんでないの。勝手に殺さないでよ」

 彼女が言ってることは生意気だが正論だ。だが僕は負けるわけにはいかない。もし僕が死んで天国にいってになら僕はどこに行ったことになる。まさかここは異世界か?僕は勇者なのか?

「さっきからあんた何一人でぶつぶつ言ってるの?馬鹿なの?死ぬの?」

 はっ、危ない危ないもう少しで厨二病全開の痛い人になるところだったよ。

「でもちーちゃん。この人の着ている服見たことないよ。」

 いままではおどおどしていて僕たちの会話にはいってこれなかった……(名前はまだ知らないのでここでは先輩さんと呼ばせてもらおう)先輩さんが困っている俺に助け舟を出してくれた。

「確かに先輩の言うとおりこの人うちらの学校の制服きてない。部外者ならなおさらなんでここにいるのよ」

 なんでって僕が聞きたいよ。目が覚めたらここにいたんだから。

「またぶつぶつ独り言を言ってる。本当に気持ち悪いのであたしがあなたを成敗します。」

 そう言った瞬間彼女の周りの空気が変わった。僕は自分の目を疑った。彼女の頭の上に火が発生したのだ。いや、火ではあるのだか形が火の形ではなく鳥の形になっている。

「我に永久の忠誠を誓う式よ、我に敵対するものを火で焼き滅ぼせ。」

 火の鳥は彼女が命じた通り、僕に向かって飛んできた。

「なんで天国に来たのにまた死なないといけないの?」

 まさか僕は死神に愛されてるのか、いや神様に憎まれてるのか。どっちにせよ死ぬ運命からは逃げられないってことだ。僕は自分の死を覚悟して目をつぶった。

「そこまでよ。」

 先ほどまでおろおろしていた先輩さんが凜とした声を発した。その姿は先ほどのものとは打って変わって自信に満ち溢れていた。

「ちーちゃん、ろくに話を聞かずに攻撃するのはよくないと思います。」

 ちーちゃんと呼ばれた彼女は、僕への攻撃をやめ先輩さんのほうへ向きなおった。

「でも先輩敷地に無断で侵入したものは風紀委員が処罰するのが学園の規則のはずですよ。あんな見るからに怪しいゴミ虫を処罰しないなんて間違ってます。」

「おいっ、人をゴミ虫なんていうなよ。」

「ゴミ虫をゴミ虫って言って何が悪いの。どうせあんたは私たちを捕まえてあんなことやこんなことをしようとしてたのでしょ?あぁいやらしいったらありゃしない。」

「あんなことやこんなこっとてなんだよ」

 そう聞くと彼女の顔が徐々に下から赤くなっていき仕舞には顔を茹蛸のようにさせて硬直してしまった。

(よしっこれでうるさいお子様は封じれたな)

 あとは、もう一人のおとなしい先輩さんにここがどこだか詳しい小手でも聞けくしかなさそうだな。

「あのぉ。よろしければここが何処だが教えてもらえませんか?」

「ここは伊弉諾(イザナギ)大陸で、いま私たちがいるとこは明星(メイセイ)高校の敷地内です。」

 先輩さんは僕のことをまだ信用していないようで、疑うような目でこちらを見ている。

「何者かわからないうちは貴方のことをほっとくわけにはいきません。ですので我が校の学園長してまで同行してもらいます。」

 (よかったぁ……この人は話が分かる人だ。)

「ですが何か怪しい行動に出た場合は、容赦はしませんよ。私はちーちゃんほど甘くはないので。」

 うそだろう。いきなり攻撃してくるやつより危ないってどんなんだよ。僕は冷や汗をかきながら彼女の後をまるで今から処刑されるような罪びとのようについていった。

 彼女の後をついていくこと数十分。ようやく学園長室と書かれたドアの前についた。

「学園長、先ほど連絡したものを連れてまいりました。」

 この女いつの間に?

(まさか……この女くノ一なのか?)

「あぁ、入りなよ。」

 年寄りなのか若いのか女なのか男なのかわからない声が扉の向こうから聞こえてきた。

「失礼します。」

 彼女はお辞儀をし、ドアを開け中に入った。僕も彼女に続いて中に入った。だが中には誰もいない上に物一つ置いていなかった。ただ一つ折り鶴が空中に一つ浮かんでるだけだ。

「本当にあなた式を知らないの?」

 彼女は本当に驚いた顔をしが、すぐ凛とした顔に戻した。

「学園長はいつも式を使って周りの情報などを集めているのよ。姿を見せるのは、入学式や卒業式などの学園行事くらいよ。しかも、その時も仮の姿でしかないから本当の姿を知っている人はほとんどいないの。」

 うれしそうに理事長のことを語る彼女の表情は、さきほどまでの凛とした顔ではなく、欲しい物を手に入れた子供のようにみてて微笑ましくなるようなものになっていた。

「だかそんな仮の姿しかみせないようなやつ信用できるのかよ。」

 僕はこの後自分がいかにまずいことを言ったのかを知り後悔することになった。

 そう、微笑ましい表情だった彼女の顔が一瞬で般若、いやそんな生易しいものではない。鬼神のような表情になったのだ。

「あなたは今行ってはいけないことを言ったは」

 言葉一つ一つから人を殺せそうな殺気を滲ませていた。あまりの恐怖に僕は、息をすることを忘れしまい危うく窒息死しそうになった。

「あんたら、学園長室であばれないでくれ。」

 今まで黙って事の流れを黙ってみていた学園長が僕らのやり取りを見ていられなくなったのか止めに入ってくれた。

「そこの坊主、あんたがここではない何処からか来たっていってるやつかい?」 

「ああそうだよ。」

 これといって敬っているわけでもないので友達にでもするような返事をした。直後にまた横から殺気が僕の体を包んだのだ。

(まさか、これだけでスイッチがはいったのかよ。)

 止まらない冷や汗がとうとう体から出る変な汁に変わったころ、彼女の怒りも静まったのか殺気がなくなった。

「貴方には敬意ってものがたりないのよ。学園長先生は太古この世界を救った安部晴明の第一の弟子だった御方なのよ。」

 やばい、また彼女のスイッチがはいりそうになってる。はやくわだいをそらさなければ。

「安部晴明っていったらこっちの世界にも昔いたな。有名な陰陽師だったような気がする。」

 確かに入院生活の中でこれといってやることのなかった僕は本を読んでいたのでそこら辺のジャンルにも触れていた。しかし、なぜか安部晴明についてのことだけは、記憶があいまいになっているというかそこの部分だけ頭の中に靄があるような不思議な感覚であるのだ。

「確かに安部晴明様も異世界から来たんだし、坊主の服装からしてもココの世界の人ではないことは嘘じゃないようだね。」

 どうにか信じてもらえたようだ。

「元の世界に帰るにしたって、当分はこの世界で生活しなくちゃいけないだろうし晴明さまと同じ世界から来たのも何かの縁だ。この学園は坊主を受け入れるよ。」

 そして僕は先輩さんこと神流崎(かんなざき) 撫子(なでこ)と同じ明星学園2年3組に転入することになったのだ。


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