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立ち上げの章(1)

今章から立ち上げの章となります。

花菊の身請け金の為に翻弄する光の運命は…

花菊の声は俺には届かない。だって…

俺ってば失神してる最中だからぁ!!


俺の顎に見事な一発をお見舞いした花菊は自分の仕出かした事も臆せず俺を叩き起こす。

「旦那!何時まで寝てるんです!!」

「…あれ、俺は一体…。」

「本当に弱いお人です事。女子の拳で意識を無くすなんて。」

呆れたように俺を見下す花菊。

あのさ、顎に入ったら女の力でも十分気絶しますから!

「っで旦那、これからどうするんです?」

シャァシャァと話す花菊。

「…とりあえずごめんなさい。俺…身請けの意味知らなかったんです。」

再び土下座!ってかこれしか出来ない!

キャンセル料すら払えなくて御免なさい。


「…それはもう聞きました。旦那は身請けの意味を知らなかったのでしょう?」

「はい!すみません。」

「だから、知らないで済む話じゃないんですよ。」

お前はまた殴られたいのか!という花菊の表情。

「…じゃぁ、俺はどうすればいいんですか?」

「…金子を用意するしか無いですね。」

「金ですか。」

「金ですよ金。」


結局金かよ!と思ったが花菊の言う事も分かる。

花魁が男に振られたなんて街中に知れ渡ったら…花魁の格が下がってしまうだろう。

そんな事になる位なら花魁を止めて安い売春婦にでもなった方がマシなんだろう。

こんな綺麗な(気は強い)を、そんな目にあわす事はできない。


「俺は…どうしたらいいんでしょうか。」

ここは腹を割って相談した方が良さそうだ。

花菊の気が済む様に、花菊のプライドを傷つけない様に…

「旦那、仕事が無いと言いましたが、それはずっとですか?」

おっ、相談に乗ってくれるのか?

「…まぁ、一応数日前までホストはしてました。」

「…ほす…とう?それはどんな仕事ですか?儲かるのですか?」

「女性の酒の相手をする仕事です。あっ、花菊さんの仕事と少し似てますね!

 それで年収…給金は売れっ子…仕事が上手な人程沢山稼げます。」

「…貴方は仕事が上手だったのですか?」

「うーん、泣かず飛ばずですね。」

「そんなぁ…、では他に稼げそうな仕事の経験はないんですか?」

「うーん、上京…えっと、故郷に居る頃は親の脛を齧ってまして…」

自分で言うのも何だけど、俺って自慢できる事何も無いよなぁ。


「ふぅ…。ではしょうがない。そのホストウという店を開きましょう。

 開店資金は私が出しますから。」

…はぁ?

「あの花菊さん?俺に江戸でホストをやれと言うのですか?」

「左様で。他には何もできないのでしょう?ならそのホストウとやらで身請け金を工面しなさい。」

花菊は何が何でも身請けされたい様だ。

「…あの、俺的には構わないんですが…難しいですよ?」

「女郎屋が流行るんです。ホストウは同じ様な店なのでしょう?なら儲かる筈。」

確かに?ホストは当たれば儲かりますけど…俺ってば駄目ホストだったんだよね。

それに…店開いてる場合じゃ無いし!麻美探しだって進めないと!


「あの、実は俺…ある女性を探してるんです。」

「女性?…っ、思い人ですか?」

思い人…思う人間…あぁ!恋人かぁ!

「いえ、別に恋人って訳じゃないんですが…大切なお客さんだったんです。」

「お客?ホストウの?」

「はい。彼女は唯一俺の指名客で…。」

「指名?指名が入る程のホストウだったんですか?なら早く店を出しなさい。」

一件の指名客なんですけどね。


「…あの、ちょっと祥さ…先生に相談してもいいですか?」

「先生に?そりゃ勿論。先生なら良い知恵を授けてくれるでしょう。

 とにかくホストウとやらで私の身請け金を稼ぎなさい!早急に!!!」

花菊さんって本当に美人なんだけど…怖いよ。

こんな人を嫁に貰ったら…一生尻に敷かれる!!


俺は花菊さんと別れ、思い足取りで祥さんの所に帰った。


家に入るなり祥さんは俺の元にすっ飛んできて…

「どうでした?金払えとか言われました?」

そんな興奮しないでよ!という位ハァアァしている祥さん。そんなに俺の事…

「祥さん…、すみません心配掛けちゃって。でも大丈夫ですから。

 あっ、顎に一発食らいましたがもう痛くないので…。」

恥ずかしくて女にヤラレタなんて言えないけど…ぐすん。俺痛かったの!


「…そんな事はどうでもいいんです!金は払えと言われなかったのですね!!」

…、そっちかい!!!

「あの、何か変な事になっちゃって…聞いて下さいよ!!!」

俺はさっきの事を祥さんに話して聞かせた。

金が無いと言ったらホストをやれと言われた事。

出資はしてやるから早く店を出す様に迫られた事。

んで結局は花菊を身請けする羽目になりそうな事。


祥さんは俺が話している最中、黙って聞いてくれた。

ウンウンと頷き、何か言いたそうにしても我慢している様だった。

そして全てを聞いた祥さんは、重い口を開く。


「話はわかった。じゃぁ…やってみたら?」

なっ!抜け道を教えてくれるかと思いきや、やれと?江戸でホストを?

「祥さん!そんな無茶言わないでくださいよ!他に道が無いか一緒に考えて下さいよぉ!」

「確か…江戸村にはホストクラブは存在しない筈です。

 商売敵もいないですし案外儲かったりして!」

祥さんの顔が輝き始める。まずい…祥さんはノリノリだ!


「でも!ホストなんて受け入れられるんでしょうか?ここは江戸時代のコピーなんですよね?

 歴史とか知らないですけど、この時代って女性が酒とか飲むイメージ無いんですけど…。」

奥ゆかしい日本女性は見ず知らずの男と酒を酌み交わす筈が無い!!

客が居なければ出店しても意味がない。むしろ出張ホスト…夜のお相手でもした方が儲かりそうだけど。

「あのね、江戸時代の女性は確かに奥ゆかしく上品です。でもね…例外だってあると思いますよ?」

「例外…ですか?」

「そう売春婦達ですよ。彼女達は客と酒を飲み身体を売って生活をしている。

 普段はムカつく客にも愛想よくしなくちゃいけませんし、案外ストレス溜まってたりして…

 そこにホストクラブがあったら…来ると思いませんか?」

なにやら歌舞伎町でもある様な話だな。


「でも、水商売…女郎の人だけだと身請け金堪る程稼げるとは…。」

女郎相手だけだと儲からない。ガツンと儲けるには…そう富裕層!

大店の奥様とかお嬢様、はたまた武家のお嬢様とか…とにかく金を持っている奴ら!

そういう人が来ないと店自体潰れてしまうんじゃ…

「確かに。では…こうしたらどうでしょう。店の場所を工夫するのです。」

「店の…場所ですか?」

「えぇ。でも吉原からは女郎は出られない決まりですし…何か良い方法があれば良いんですが。」

祥さんでも難しい土地選び…やっぱり江戸村でホストは不可能なんじゃないか?


翌日、俺は昨日の祥さんとの話し合いの結果を花菊さんに報告しに行った。

「旦那、腹は決まりましたか?」

「うーん、やるのは構わなんですけど…出店場所とか色々難しくて…。」

「では一応は働く気に?」

「まぁ働くのは働きますけど…儲かるか解りませんよ?」

「はぃ?出資するからには儲からないと私が困ります。一体何が難しいのです?」

「えっと…じゃぁ説明しますね?」


俺は花菊さんに昨日の事を話して聞かせた。

儲かるには富裕層をターゲットにしたい事。

でも女性が酒を飲むとは思えない。

大門から出られない女郎をどうやって集客するか。


「…何やら難しくて分かりませんよ。」

「でしょうね、俺にもピンと来ませんから。」

「…富裕層ですか。…そうだ!何か色を出せば?」

「色…ですか?」

「はい。ホストウに来れば良い事がある。の様な感じの何か…。」

「そっか、この街では顔やトークだけだと通らないだろうし…色…色…。」

確かに花菊さんの言う事は一理ある。

普通に店を出しても面白くないし、女性を引き付ける何かがあれば…うん、いける!

いやらしくない、何か付加価値をつければ…

例えば開運ホストとか?…これは違うか。

いや?携帯やら麻美のバックやら…歌舞伎町から持って来たアイテムを駆使すれば…

流石花菊さん!だてに花魁じゃないや!


「…後は場所です。女性が気軽に来れて、出来れば女郎さん達も…。」

「そうですねぇ、場所…あぁ!あそこが良い!」

花菊さんは思い付いた様に掌を拳で叩いた。

何処?思い付いたぁ!って言いきれる場所なんでしょ?

俺…期待しちゃうから!!!

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