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出会いの章(7)

この作品には本当の歴史は出てきません。

ここは江戸村…架空の江戸なんです。

武の声が店の中から聞こえてくる。

何やら楽しそうだ。

武の周りには数人の男が座っている。

目付きも悪く、服装も乱れている。

でも…皆若干怪我してませんか?


「…武?居るか?」

俺は声を掛けながら店の中に入って行く。

「おう!光と祥さん!遅いぞ!」

ご機嫌な武はすでに酔っぱらっているようだ。

こっちが心配して探せばこれかよ。


「お前、何やってんの?」

「何って、酒飲んでんだよ!見れば分かんだろ!」

「お前なぁ…。こっちは心配して探してたんだぞ?」

「あぁ?そうか?そりゃスマン。」

「ホントに…もうちょっと考えろよ?とにかく店でるぞ。」

俺は武の二の腕を掴む。


「…おい兄ちゃん。旦那を何処に連れてくんだぁ?」

隣に座っている男が俺を睨む。

「どっ何処って…。少々用事が…。」

「旦那ぁ、こいつは知り合いですか?

睨みを利かせた男は武に話しかける。


「あぁ、こいつは俺の恩人かもしれない奴。丁重に扱えよ?」

「恩人…。すっすいやせん!!旦那の恩人さんに失礼な口を!」

男は慌てて俺に頭を下げる。

あの…一体何があったんですか?


武は吉原に入るなりこの男たちに絡まれたらしい。

金髪の頭にデカイ態度。背も高くて髷も結って無い無法人。

そりゃ絡まれる。

んで、絡まれた武は当然反撃に出て…圧勝したらしい。


この俺に話しかけてきた目付きの悪い男の名は新八といらしい。

武に目を付け喧嘩を売ったのはいいが、武は思いのほか強いらしく負けてしまった。

武の強さに惚れたとかで、今武に酒を奢りながらスカウトしていたらしい。


「旦那ぁ、お願ぇですから私らの所に来やせんか?」

「…やだよ。面倒臭ぇ。」

「そんな事言わねぇーで下さいよ。お手当は弾みやすからぁ。」

「…やだよ。」

武にその気は無いらしい。


「…お手当…ですか?」

誘いに食いついたのは祥さんの方だった。

「へぇ?…へぇへぇ!たんまり弾ませていただきやす。」

「…武君。行きなさい。」

「ちょっ!祥さーん。」

「毎日ブラブラしているよりマシです。」

「さすが恩人さん!分かってらっしゃる!ねぇ旦那、考えて下せーよ!」

「…面倒だなぁ。」

タダ酒を煽る武は本当に面倒そうだ。


祥さんの言葉に、武は嫌々引き受ける事にした。

でも祥さんは何で武にヤクザ業を勧めたんだろう。

それにお手当という言葉…やけに気になりますが?


とにかく俺と祥さんは武を残し、再び花街に身を滑り込ませる。

店先を覗き込み、麻美の姿を探した。

…居ない。どこにも居ない。

悔しい様な、ちょっとホッとした様な…

だって、店先に居るって事は身体売ってますの証拠。

恋人ではない麻美だけど、実際あそこに座ってたらと思うと…


「うーん、やはり店先には居ない様ですね。」

「…祥さん?居ないと思ってるのに来たんですか?」

「えっ?いやぁ…店先には居ないと思ってましたというお話です。

 隠れるなら女郎では無く女中になってるでしょうし。」

「女中?それって…」

「まぁ、下働きですね!掃除したり料理出したり…」

「そっそんな!それじゃ分からないじゃないですか!」

「まぁまぁ。だから売春街では無く吉原に来たんですよ。」

「…意味が解らないんですけど。」

「まぁまぁ。あっ!ここです。この店…。」

祥さんの指差す先には一軒の宿。

随分大きい店構えで、それが老舗なのがハッキリ分かる。

この店は何ですか?


「この店は、私の友人が居るお店です。さぁ…中に入りましょうか。」

「友人ですか?宿に?」

「あははっ!とにかく会ってみれば分かりますから!」

祥さんを先頭に、眩い光の中に入って行く…


「いらっしゃいませ!ようこそ先生!」

「居ますか?」

「いらっしゃってますよ?さぁどうぞ!」

店主らしき男が店の奥に案内する。

初めての吉原…どんな感じなんだろう。

店主とも顔なじみの様子だし、きっと常連なんだろうなぁ。

あっ!もしかして祥さんが武のお手当に拘った理由はこれかもしれない。

祥さんも男だなぁ。


「失礼します。ご友人がお見えでございます。」

店主は部屋の前で正座をして挨拶。そしてゆっくり襖を開けた。

奥から賑やかな声が聞こえる…もしかして使用中なんじゃ?


「おぉ!誰だぁ?」

中から男の声が聞こえる。

「先生がいらっしゃいました。」

頭を下げ店主が言う。

「先生?おぉ!ようこそようこそ!!」

店主は下がり、かわりに祥さんが前に立つ。

「梅さん、今日も楽しそうですね!」

「先生!そんな所に立ってないで早く入りゃー!」


「さぁ、中に入りましょうか。」

先生は俺の方を向く。

「あの…いいんですか?使用中なんじゃ?」

「ふふふっ。大丈夫ですよ?」


「おぉ?連れでも居るのか?」

中から梅さんと呼ばれた男の声が聞こえる。

「えぇ。今日は友人を連れてきました。」

祥さんを先頭に中に入って行く。


「よぉ!先生!」

「梅さんは相変わらずお好きですね!」

「あははは!生きる源ちゅーかな?おや?そん方が友人かい?」

梅さんらしき男が話しかけてくる。

「はっはい。光と言います。」

「光…そりゃ珍しい名前だなぁ。」


ご機嫌な男は才谷 梅ノ介というらしい。どっかで聞いた様な?

この街では珍しい長髪姿。眉毛が凛々しい男前だ。

一見侍の様だが、どこか人懐っこい。不思議な男だった。


「んで、今日はどんな用事だい?」

「えぇ。是非梅さんに聞いて欲しい事がありまして。」

「俺でいいのか?徳さんの方がいいんじゃないか?」

「…吉原通の梅さんがいいんです。」

「ならワシは構わんが…。で、どんな事だ?」

「最近…物珍しい女が売られてきたという話は聞いてませんか?」

「物珍しい女かぁ。いや、知らないなぁ。」

「そうですか。梅さんが知らないなら吉原じゃないんでしょうかね…。」


「あの…祥さん?」

「光君…残念ですがここには居ない様です。」

「えっ?」

「もし彼女が吉原に居るなら、梅さんが知らない筈は無いんですが…。」

「そうなんですか?」

「この梅さんは珍しい物が何より好きなんですよ。彼女の噂を聞いたら黙ってませんよ。」

「…でも、ただ梅さんが知らないと言う事は?」

「…ありえませんね。この男の情報網は天下一品ですからね。」

「そっそんな…。」

「残念ですが他を当たった方が…。」

「そうですか…。」


「何だ?湿っぽい顔しやがって!ほら!お前も飲め!」

少し落ち込んだ俺に梅さんが酒を差し出す。

「…じゃぁ一口だけ。」

折角進めてくれてるんだから…。俺は猪口に入った酒を一気に流し込む。

「…ほぉぉ!良い飲みっぷりだ!さぁさぁ、もう一杯!」

「…頂きます。」

また一気に流し込む。


何故か俺は梅さんに気に入られ、その後暫く酒の相手をさせられた。

久々の酒は、俺に以上なまでの酔いを齎す。


「あぁーあ!出来あがっちゃったよ。」

「梅さんが飲ませるから…。」


頭の上で、祥さんと梅さんの声が聞こえる。でも遠ざかって行くぅー!

気持ち悪い…この街の酒はからりキツイ。



あー、頭がフワフワして気持ちがいい。

頬にプ二プニした感触…これ何だろう。


翌朝、俺は殴られた様な頭痛で目が覚めた。

いやぁ…飲み過ぎました。


そういえば祥さんは?

…居ない。

ってか梅さんが横で寝てるし!

腹を出し、ふんどしも丸出し。股間をボリボリと掻き汚らしい!!

どうやら俺は梅さんの尻付近で寝ていたらしい。


部屋には俺たち二人だけ。

うーん…昨日はどうなったんだけ?

梅さんに酒飲まされて…気持ち悪くて横になって…

プ二プニが気持ち良くて…んで頭痛い。意味分かんねーー!


それに…夢で見たプ二プニした物…もしかして梅さんの×××?

うえぇぇーー!


俺は物凄い吐き気に襲われ、近くにあった水差しを口に宛がう。

そんな時、朝の光と共に襖が開いた。

祥さんかと思って視線を向けると…


そこには美しい女郎が立っていた。


才谷梅ノ介…モデルは勿論、分かりますよね?

でも作者は言葉を知らないので梅さんはほぼ標準語で話します。

もし本物の梅太郎さんがお好きな方は翻訳してお読みください。

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