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第四章 ルソーの渦巻く陰謀 その2




「話は変わるけど、何か冒険者に有益な情報とか、面白い話はないですか、討伐やクエスト的なやつでもいいので」


 胸像の話をやめて金になることがないか老人に尋ねる。


「有益な情報はないですが、面白い噂話なら知っておりますぞ」


「流石ジジイ、伊達に年取ってないな」

「ジジイ言うな」


 叱っても意味ないけど反射的にマルコシアスにツッコむ。


「私は若い頃、領主直属の親衛隊をしていたのですが、昔から兵士の間では、ルソーの地下深くには隠しダンジョンがあり、領主の屋敷に繋がっているという噂があります。更にダンジョンのどこかに、歴代の領主が集めた財宝がある、とも言われておりますぞ。まあ、あくまでも噂ですが」


「うほっ、財宝とか俺様のテンション上げてくれんじゃねぇかよ」


 財宝という言葉に俺もテンションが上がる。異世界テンプレの噂話ってバカにできないからな。隠しダンジョンありそう、っていうかあるやろ。いつもこういう直感は特殊能力張りに当たるんよ。


「そのダンジョン、入口とかは分からないのかなぁ。噂とかあるんじゃないですか?」


「勿論ありますぞ。街を出てすぐの西の森に、神殿があったとされる遺跡があります。そのどこかに、地下ダンジョンへの入口があると言われております」


「おいおい、遺跡とかテンプレ臭プンプンするじゃねぇか。絶対そこだろ」


 マルコシアスはこっちに飛んできて俺の頭に帽子のように乗っかり嬉しそうな顔で言う。


「お爺さん、英雄の話や面白い情報、ありがとうございます。凄く役に立ちそうです」


「それはなによりです。ダンジョンを発見できるように祈っておりますぞ」


 偶然にも有益な情報を手に入れてしまった。そんでお爺さんとはここで別れ、更に街の探索を始める。だがごく自然に、怪しい感じの裏通りへと向かっていた。


 すっかり日も暮れ裏通りは様々な夜の店のランプやロウソクの明かりが妖しく光り、華やかな世界になっている。


「おい、あの店、絶対に風俗店やろ」


 テンション上がって鼻息荒く言い放つ。


「おっ、あっちの店も風俗だろ。こりゃまだまだあるぜ。金がいくらあっても足らねぇな、哲斗」


 マルコシアスは言った後、高らかに笑う。


 だが今はなんとか誘惑に打ち勝ち、情報を集めながら街を見回り裏通りにある安い宿をとる。


 因みに新しく得た情報では、領主が床に臥してから親衛隊や長く仕えていた家臣たちが消えたりする事件が起こっていた。


「さてと、これからどうするかジャンケンで決めようや。俺かマルコが勝ったら夜の店で、サマエルが勝ったら遺跡に行くってことで」


「うむ、いいだろう。どうせ勝つのは俺だ」

「俺様が勝つに決まってんだろ」

「そんじゃいくぞ。最初はグー」


 路地裏でジャンケンしてバカみたいに相子を繰り返すこと十数回後にサマエルが勝った。


「クソが、後出しだろが。空気読めよクソパンダ」


 マルコシアスがムカついた顔で吐き捨てる。


「強いのだから仕方がない。やる前から結果は見えていた。所詮お前は負け犬だ、腐れワンコ」


「誰が腐ってんだコノヤロー‼ ケツに変な蛇くっつけてる変態のくせに生意気なんだよ‼」


 マルコシアスが言い放った瞬間、サマエルの尻尾の蛇が反応し、自在に体を伸ばしマルコシアスの腕に噛み付いた。


「いてぇぇぇぇぇっ‼ なにすんだクソ蛇がっ、引き千切って焼酎漬けにしてやんよ」


 恒例の殴り合いの喧嘩が始まるが、いつも通り放置して歩き出す。


 夜になると出入り口の門は閉ざされるため、門衛に外に出る正当な理由を話さなければならないが、冒険者の場合は様々な面で優遇されており、モンスターを狩りに行くと言えば簡単に門を開けてもらえた。


 冒険者は危機的状況になっても自己責任で放置され、国の兵士が助けることはない。故に自由である、ということだ。


 街の外に出ると西の森に向かう。少し歩いた程度で森が開け、神殿跡に辿り着く。


「思ってたより大きな遺跡だな。ちょっとした村より大きいやろ」


 月明りに照らされ神秘的な光景の遺跡を見渡す。


「あの大きいのが神殿跡だろ。どう見ても怪しいぞ」


 サマエルが言ったのは、中央に堂々と立つパルテノン神殿のような建物だ。でも三分の一は崩れている。


「分かってねぇな、サっちんは。レトロゲームマスターの俺様に言わせりゃ、隠しダンジョンの入口はそんなベタなところにはねぇんだよ。もっとベタなところ、ズバリ‼ 井戸の中だ‼」


 マルコシアスは決めポーズをとって自信満々に言い放つ。


「おいおい大丈夫かよ、そのドラクエっぽい情報」


「あったりまえだろ、俺様に任せとけ」


 マルコシアスはそう言って辺りを飛び回り井戸を探す。


「あったぞ井戸‼ ここだここ‼」


 マルコシアスの声がする方に向かうと、大きめの涸れ井戸があった。


「なあ、あると思うか、入口」


 小声でサマエルに言う。


「あるわけないだろ、こんなとこに。あったら他の冒険者がとっくに見つけてるはずだ」


 サマエルは呆れるようにジト目になっている。


「うっせぇんだよ、素人はだーってろ。絶対ここにあんだよ、あったらお前、フルボッコだぞ」


 そう言い放ちマルコシアスは井戸の中へと飛んで行く。


「ふははははっ、返り討ちにしてやろう」


 サマエルも後に続く。って結局ノリノリで楽しんでるやん。






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