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第三章 メイドのエリーと魔寄せの石 その7




 村の出入口となっている門の辺りには、様子を窺う冒険者たちが何人もおり、相手をするのが面倒なので村人に頼んで別の場所から入った。


 長老の家は少し大きめの普通の一軒家で、応接室に通された。付き添いの村人は報告を済ませると礼だけ言ってすぐに帰っていく。


「まさか上級モンスターをこんなに早く倒して帰ってくるとは……もしやあなたは名の知れた勇者様ですか?」


「ははっ、そんないいものじゃないですよ」


「無職無職、こいつ無職だし寝ぐせだし職質されるクソだし」

「やかましいわっ」


 とりあえずムカついたので、床に叩きつけられるほど強くマルコシアスの頭を殴った。


「サマエル、止め刺しとけ」

「ラジャー」


 サマエルは瞬時に返答し、床に転がっているマルコシアスをガスガスと踏みつける。こういう悪ノリする時は命令に従いやがる。


「お礼とか話はもういいから、報酬貰えるかな。俺たち明日の朝早くには旅立つから、もう宿に帰って寝たいんで」


「わ、分かりました。ちゃんと用意してありますので……」


 長老はテーブルに置いてあった、魔寄せの石が入った拳より少し小さいサイズのリングケースのような箱を手渡す。更にお金が入っている袋も貰った。


「本当に、本当にありがとうございました」


 長老は何度も頭を下げながら礼を言う。


「一応は中身、確認させてもらいますね」


 箱から紫色の宝石である魔寄せの石を出して確認する。大きさは二センチほどありカットもしてあるため、一見は高そうな宝石に見えた。


 鼻に近付け匂いを嗅ぐが無臭であり、悪魔たちにも嗅がせたが、やはり匂いはしなかった。


「話し通り魔人族にしか、匂いは分からないみたいやな。どんな匂いか興味あったんやけど」


「その石、バルサンで自爆できねぇのかよ」

「ってそれバルスやろ‼」


「うひゃひゃひゃっ、ツッコミはえー、流石大阪人。てかやっぱ無職だからツッコミ速いんだな」

「な訳あるか‼ ってもうええわ」


 またツッコむとマルコシアスは一人大笑いした。


「で、金の方はどうなんだ」


 サマエルが言う。


「え〜っと……金貨三枚と銅貨十五枚かな」


「ほう、なかなかの報酬ではないか」

「だな」


 足元に魔法陣を作り出し、箱と袋を魔法書の異空間に収納した。


「長老さん、誰がモンスター倒したかは内緒ということで。じゃあ俺たちはこれで、さよなら」


 早々と切り上げ長老宅を出る。


「いやぁ〜、けっこうおいしかったよな。モンスター一匹倒しただけで、きんの塊とかねと宝石が手に入ったし」


 宿へと向かう途中、星々で埋め尽くされた美しい空を見上げ言った。


「お前は何もしてないけどな」


 マルコシアスは目を細めた顔で嫌味に言う。


「お前らがはしゃいでるから、俺に順番回ってこないだけやろ。まあ面倒だし、無理に戦う気ないけど」


「出たよ出た、「面倒だし」。やる気なしの無職のテンプレ台詞を、よく恥ずかしげもなく言えるな。流石上級無職だぜ」


「職業みたいに言うんじゃねぇよ」


 程なくして宿に辿り着くが、ずっとマルコシアスに悪口を言われていた。ほんま悪魔と居たらストレス溜まるわ。


 まだそれほど遅い時間ではなかったが、部屋に入るとエリーは起きて俺たちを待っていた。


「エリー、ちゃんと晩御飯食べたか?」


「はい。いただきました……あの、先ほど凄い爆発音がしたのですが、何か知っておられますか?」


「あぁ、凄い音してたよな……なんだろな」


 説明するの面倒臭いのでエリーに何も話さなかった。


 冒険者たちとかなり酒を飲んでいたので、ベッドに寝転がるとすぐに眠りに落ち、そのまま朝まで起きなかった。







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