人違いでは?
「…いいか?えー、シュライン・ゲートじゃねえや鳥居の外には出るなよ?外はちょっとばかりこことは違うんだ」
キヒがやれやれ、と呆れている。イタチ人間も頷いて、鳥居の外を指さした。
「オレたちはさ、あの世界に住んでるけど。アンタらは違う世界に住んでるんだ」
「もしかしてっ!私が住んでいた場所?」
この違和感は彼らが言っているせいではないだろうか?
あの向こう側でなく、自らは日本で暮らしていた。そうだろう。
「いやいや、血蠱蝸はそんなん関係ねえよ。どんな世界でも這ってでもついてくる、毒蛇みてえなヤツだった。…ヤルヒメ様が作る世界に住んでいるのは過去の住人だけなんだ」
「毒蛇て」
ヤルヒメ。先程の神さまであろう。
「おとろしいぜえ!狙った獲物は逃がさない。どんな手を使ってでも仕留めにくるんだ」
イタチ人間は管を巻く。いったい、血蠱蝸とは…。
完全無欠の殺戮マシーン。そんなイメージで固定されてきている。
「過去の住人?」
「ああ、ここに居るのは一回死んだ者ばかりさ。俺も、コイツもな」
「え」
二人、いや、あの子も。死んだ者だった?
「じゃあ、やっぱり天国…あの世…?世界には三人、そっくりな人がいるって言うし。それで私は間違えられてここに」
「はあ?なんだそれ」
「知らないの?有名じゃん!」
二人はハア?と怪訝そうな様子でこちらを見返してくる。
「そ、そっか、信ぴょう性が増してきた!ここは間違えて連れられてきたあの世なんだ!!」
半ばヤケクソに一人合点するも、賛同する人はいない。(してよ!)
「いや、お前は血蠱蝸だ。じゃないとその首の刺青はない」
「刺青?!ヤンキーじゃない!」
「ハア?」
鏡を渡され──どこからか出したか不明であるが──見やると、首に線が引かれていた。チョーカーかと指で確かめるが確かに刺青だ。
「囚人みたいなモンだ。誰かがつけやしないとソレはつかねえ。それも上位存在、神に近い輩が」
「え、え、その神さまも間違えてんじゃないの?!早く逃げた血蠱蝸を探さないとっ」
「コイツ、本格的にアタマやられてるぜえ…キヒ」
白い目を向けられ、さらに混乱した。本物の血蠱蝸は自分のフリをして逃げた、そうとしか思えない。
「魂に首輪つけられてんだ。アンタは血蠱蝸に他ならないんだ。まあ、記憶喪失はどうかと思うけど」
「体は?私の──」
「血蠱蝸に体はない。アイツは死神みたいな、よく分からない化け物だった」
「いやいや〜ご冗談を」
アワアワと否定するのに、獣の亡霊はさらに疑心な眼差しをよこしてくるだけであった。
久しぶりになりました。




