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奇襲

(大変な賭けをしちゃったかも)


 自分の命を懸けてまで、他人を願うなんて。記憶を失う前の己は嗤うだろうか?


(悪くないかな)


 罪滅ぼしの免罪符。大悪党のできる事がそれしかないのような、気がして。お遍路さんをするように一つづつこなして行きたい。


(私が、今の私のせいじゃないけど。人殺しは犯罪だから)


 ズレた常識の世界で、手持ち無沙汰で過ごす。


「お前が、お前がオレの仇かっ!成敗してやるっ!」

 いきなり草やぶから声がして、リス人間が飛び出してきた。手には凶器が握られている。

「わ!」


 自然に身体が避け、足がリス人間の鳩尾を蹴り上げた。「ぎゃーっ!」

 バタ、と地面に倒れた見ず知らずの人を攻撃してしまったのに理解するのに時差がかかる。ナイフを手に取ると、なるべく遠くに置いて──リスらしき生物へ駆け寄る。


「大丈夫?!」


「うっ…ヒッ!殺さないでくれ!噂はホントだったんだーっ!」

「リスさん、私、反射的に蹴っちゃっただけでっ」

「リスじゃないっイタチだあ!命だけはっ!許してえ!」

 涙目で訴えられ、困惑する。先に攻撃してきたのはイタチ人間の方である。


「あのー、もしかして…私が貴方を昔」

「そうなんだっ。家族を皆殺しされて、今はここで働いてるけどよお!ずっと復讐しようとしてたんだぁーっ」


(ええっ…皆殺しってヤバくない?)


 手のひらに血がついている気持ち悪さに顔をしかめた。それを不機嫌か殺意を受け取ったのか、彼(?)は慌てふためいた。


「奇襲したのは悪かった。じゃないと傷つけられないと思ったんだっ、でも、アンタが本当に血蠱蝸だと確信したよ。あの動きは血蠱蝸だ。だからころさ」


「殺さないよ!私を怖がらないでよ!」

 血蠱蝸とは何なのだ。自分は知らないのに。

 八つ当たりなのか。イライラした──冤罪を押し付けられているみたいだ。

 イタチ人間は呆気にとられた、が、半笑いを浮かべた。


「はは、ガキみてえ」

「…。私は新しい名前をもらったんだ。だから血蠱蝸って呼ばないで」

「クソガキだ」

7月ぶりです。

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