バリケード修復
「あれは逆さま水族館では誰も勝てないと言われた穢鬼なの。それをあんなめちゃくちゃな方法で」
スマートフォンをいじくり回していたシハは顔を上げた。
「必死だったから。火事場の馬鹿力かな、まぐれまぐれ!」
「それでも……あのさ、手伝ってくれない? 地図を作るのと外に出る方法を」
月は申し訳なさそうに言う。
「いいよ。私も日本に帰りたいし」
あれから木造校舎の住人たちから反感をくらい、バリケードを作り直す羽目になった。
どこから湧いてきたのか。彼らは過剰なほど隠れて暮らしている。
皆でバリケードを作り直しながら、補強し、少し打ち解けたのは案外悪くない。学園祭みたいだと、的外れな感想を抱きながらも休憩していたのだ。
スマートフォンはバッテリー切れ。どこかに充電器がある? 電気はあるのだから、充電器とケーブルさえあればいいだろう。
「それ、あの穢鬼の?」
「うん。多分、あの人、私みたいに人間で日本から来たんじゃないかな……。化け物になる条件は分からないけど……」
口にして、背筋が凍る。
「私もいつか化け物になっちゃうかも、ね」
(さあな)
「……じゃあ、あの人も化け物になっちゃったのかな。もう私を覚えてないか」
少女がポツリと呟いた。あの人。彼女の言動に見え隠れする人物である。
「あ、あのさ、化け物になったとしても本質は変わらないと思う! 警備員さんは化け物になっても警備員やってたし」
「けいびいん?」
どうやらしらないようだ。シハは冷や汗をかきながらも、自分自身へ言い聞かせた。
「私は化け物になっても皆、覚えていたいな」
「悲しいね。それって」
「そ、そうかな」
微妙な間があいて気まずくなるが、住人たちか学校のチャイムがなり慌てて部屋に帰っていった。
「何?」
「夜になったの。危ないから隠れて生活しなきゃいけないんだ。私たちはね」
「そ、そうなんだ」





