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血蠱蝸☆血蠱蝸(副題、それは。チャラにする明日)  作者: 犬冠 雲映子
潮風を求めて

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500番地の逆さま水族館

「ここを這いつくばって、くぐると水族館に行けるから」


「水族館? え〜〜っ! 楽しみ」

「はあ? あれのどこが?」

 怪訝そうな言い草に疑問がわくが、椅子と机、ベニア板で作られたバリケードの隙間をみやる。ほふく前進すればなんとかくぐれそうだ。


「狭いから気をつけてね。私が懐中電灯で照らしてくし、なんかあったら言って」

「うん。ありがとう」


 木造校舎の住民たちは何を思ってバリケードを作ったのだろう?

 シハは緊張しつつも隙間に入り込む。閉所恐怖症にはたまらない狭さだが、生憎そうでないらしい。ホコリくささに咳き込みそうになりながらも、懐中電灯の灯りを頼りに前を探す。


 ──道づれ迷い子……連れ、消え……一人き……

 途中、浪曲のような不気味な音がした──気がして、戸惑ったが気の所為だと決めつける。


(水族館、久しぶりだも〜ん)


(お前の世界の水族館はそんなに楽しい場所なのか? )


(そうだよ。一日中遊べちゃう)


 するとキヒは意味深な相槌をうつと、黙り込んだ。(な、何? )





「はあ、明日は筋肉痛かも」

「なかなかやるじゃん。音を上げるかと思ってた」

 月は懐中電灯をしまい込み、軽口を叩いた。感情表現が気薄な子ではあるが……わざと演じているのかもしれない。


「で、ここが水族館?」

「そうだよ。500番地の逆さま水族館、って呼ばれてる」


(逆さま? )

 人感センサーライトか、いきなり施設中の照明が点灯した。彼女が言ったように『500番地』と書かれた痕跡が壁にあった。


『この先、危険。逃げろ』


 スプレー缶で書かれた文字。おかしいのはその文字が上下反対なのだ。


「逆さまって」

「全部逆さまなの。私が初めて到達した時もすでに逆さまだった」


 足元には照明器具があり、イワシの看板も頭上にある。不気味なのは壁に行方知れずを探す張り紙がビッシリ貼られている事。

 ──ここで、何かあった? しかも上下がおかしくなる前に。


「魚もあの通り。悪趣味でしょ」

 死んだ魚が群れをなして水槽で泳いでいるように見えた。

浪曲のような部分は怖い話の『呪言歌』を参考にしました。

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