示未町へ
エニシ。えん。人や物事と繋がった結果。
縁結び。縁切り。それはシハでも耳にした事があって、自分自身とは程遠いなとあまり気にしていなかった。
(なんでだろう? そこら辺の記憶が曖昧……)
縁など、机上の空論に似たもので実際には触れもしない。──それがこちらには存在していると?
「ああ、呪殺代行人なら初歩的なものだ。エニシを頼りにテレポートする、あるいは尾行する。それができなければ代行人にはなれない」
忌避が先生の如く教えてくれる。
「すごっ! 漫画みたい!」
「はあ……お前がそんな反応すると俄然、腹が立ってくるぜ……まあいいや……。さっきも言ったろ。それを手にして、あの娘を思い浮かべなからゲートをくぐれ。とりあえずそのトゲを手に目をつぶって、糸でも何でもいい、思い浮かべて──掴め」
瞼を瞑り、トゲの質感を指で確かめながら、月を思い浮かべる。彼女の後ろ姿。そうして、Zoomするイメージ。
シハは手を伸ばし、彼女の後ろ髪である三つ編みを掴んだ。
空気感が一気に変わり、ハッとまぶたを開ける。すると周囲は哀愁漂う木造校舎に様変わりしていた。
「わ!」
「あ、あぶねー。同化するの忘れる所だったっ」
脳内でグワングワンとキヒのボヤキがひびき、目眩がする。「音量なんとかしてよ」
「できるかバァァーカ! 慣れろ」
「わざと大声ださないでっ、ううっ……吐き気してきた」
コメカミを押さえ、古めかしく擦り切れた廊下を眺める。人の気配はないが教室を覗こうとしても何かベニヤ板か、布で覆われて伺えない。
「ここは?」
「示未町だ。風棟の真隣、といえばいいか」
羊を意味する未の文字。鬼門に対する畏怖と厄除けの願いが込められているという。裏鬼門は未と申。だから羊。
(鬼門ってここでは、めちゃ怖い何かなんだ…)
八髏非女の話通り、人口は少ないらしい。このように身を隠しヒッソリと暮らす者が多い。
「だ、大丈夫かな? あの子。こんなくらったるい場所にいて」
「暗い? ここはずーっと暗いぞ」
カラカラと彼は笑い、そうして真剣な気色になる。
「ここいらは『山の魍魎』がいるから気をつけろ。アレは強い、でけえし、声もでかい」
「何それ……うるさいのは嫌だな……」
ちょっとした洒落怖の話の要素を盛り込みました。
ほんの少しだけ。ヤマニシさん、という話になります。
ジビ町のジビは「礻未」という『山海経』に出てくる妖怪?精?を拝借しました。
文字は日本の漢字にないです。だから礻未です。





