守護神がいない土地、いる土地
「記憶が曖昧なんだが……、丑寅以降は人口が少ない危険地帯だった気がする。穢鬼をせき止められていなかった。血蠱蝸は陽の気に弱かったのか?」
「また血蠱蝸の話ぃ? 四神みたいな神様の間での問題じゃあないですか?」
口を開けばそればかり。シハは呆れつつも、うむと想像する。
2時から3時はお化けの時間、それ以降は夜明けと朝。丑、寅、卯、辰……。
「そこは九尾の狐が収めている事になっているがのう。四ツ目の犬と共に不在なのだ。訳は分からぬが、居るのはワシと白蠕だけじゃっ!」
「じゃあ、そこの土地は」
「穢鬼が発生しても手がつかん。四ツ目の犬の地域、404号室団地と呼ばれまたはその周辺はワシががんばっておるが、白蠕は割り切った性格らしくてな。下々を守る気がとんとない、困ったヤツでのう」
やれやれ、とご近所さんを咎める口ぶりで神様は言う。人はあくまでその程度で、自分自身は庭を管理しているだけという雰囲気である。
俗っぽさはあれどやはり人智を超えた存在なのだろうか。
──ともあれ『四ツ目の犬』。
全ての建物群、冥廊を支配している化け物または守護獣だという。目が四つある犬。それだけだ。
世界を牛耳る狂犬。そのため、四ツ目の犬は畏怖の対象になっていた。
猜疑、監視、幻惑の象徴……そう言われ、人々は恐れ入り毎月かの守護神にお供えをする。
守護神のおわす地域は他と比べ陰の気が高いせいか、鬼門と同じように辟邪の化け物が発生しやすい。なぜならば裏鬼門の場所に位置する。死門または苦死霊門、と恐れられる方角で『極楽』に通じやすいと言われている。
──それが、404号室の団地群。
「なるほど。地理が分かってきた? かも?」
「まあ、方位やらを当てはめた地図を作ったものに倣えば、な。ただそこまで実際の冥廊は簡単じゃないぞう。気をつけぬと、1発でゲームオーバーじゃ」
「は、ははは……」
「四ツ目の犬と九尾の狐はどこに行ってしまったんですか」
急にキヒが素っ頓狂な問いかけをした。すると八髏非女はなんとまあ、と大仰な反応をする。
「ヤツらはな、駆け落ちしたんじゃ。ホホ、キヒもロマンチックな話が好きとは驚きじゃ〜〜」
「な! そういうつもりで聞いたんじゃあ」
(神様が駆け落ち? なんか七夕みたい、いや、七夕は駆け落ちなんてしてなかったか……でもそんな神話もありそうだしなぁ)
存在しない小説(笑)『冥々四ツ目』の結末を匂わせました。





