臭い物に蓋をした
彼女曰く、神虫・白蠕は正式名称は『白夜の神虫・白蠕』というらしい。白夜とは何を意味するか誰も分からない。それくらい昔から名が知れていた。
訪れぬ朝を守護する神獣であり、 白蠕、というが白毛の羽が生えた麒麟──に似ていると地図を作った人が言っていた──で描かれる場合がある。辟邪の象徴ではないが、隔たり、境界を結界を守護するのだ、と。
鬼門は万鬼が出入りすると考えられているためか、穢鬼が発生しやすいのだそうだ。
だから空白地帯として人々は避けて暮らしている──
「鬼門って、幽霊の通り道だとばかり思ってたなぁ。違うんだ」
シハは社殿の中で紙に丸を書いて、鬼門と裏鬼門を直線でつないだ。それをキヒと八髏非女、イタチ人間が見ている。
「鬼門は陽の気が強すぎる。あまりにも極端な気は支障をきたし始めるのじゃ。それにあの場は陰の気から陽の気の流れに変わる地区でな? だから穢鬼が生まれるのじゃろうな、多分!」
「へー。さすがヤルヒメさま! 物知り!」
イタチ人間──申が目を煌めかせ、円に飛びつく。
「しかしよ、裏鬼門はここなんじゃあねーか? ほら、ヨンマルヨン号室っていう地域があるじゃん? そこの位置になるんじゃ……」
「ご名答。じゃないとあんな強固な世界に干渉できぬじゃろうが。ヤルヒメさまはちゃあんと考えて行動しておるのだ」
フン! と胸を張った女児に、キヒは眉をひそめた。
「逆に不安定にさせてるんじゃねえすか? それ」
「なにをう! アチラだって干渉して──あっ、なんでもない! 今のは無かったことにしてくれぬか」
なにか口を滑らせて、アタフタとする様は神さまには見えなかった。
「じゃー、神様は白蠕と知り合いなんですね?」
「シハ。意地悪をしないでくれ。まあ、知り合いと言えば知り合いじゃ。……対岸にいるお家の人と思ってほしい」
(お家の人……可愛い言い方する人だ)
ならばどうにかして、話をつけてもらえないだろうか。だなんて考えがよぎるがそれは厚かましすぎるか。
「八髏非女さまは海があるのを知っているのですか?」
「海か? ワシは穏やかな由比ヶ浜が好きじゃのう、じゃなくて、あの世界に海があるのははっきりとはしておらんな。冥廊は閉じられているのだ。誰にも手が触れられぬよう、蓋がされている」
「蓋……」
彼女曰く、内側は分かっても箱の外は把握できないらしい。もしかしたら人類が絶滅しかけた世界かもしれないし、または普通に孤島なのかもしれない。──地球にないかもしれない。
「へえ、変な話ッスねえ」
甲が呑気な感想を口にする。そうだ。この土地に住む人々は深く考えていないのである。
しかしキヒは険しい目つきで円形の線を見ていた。
鬼門って丁度今頃(2026年2月8日)なんじゃないですか?!?
季節の変わり目なんですねえ。





